--- おわり ---
そのあとも宴が終わる気配はなくて。
結局喧嘩を始めたシドとフェリスを、アレイさんと並んで見物している間に、空が少しずつ白み始めた。
「結局、朝になっちゃったね」
「眠くないか?」
「意外と平気だよ」
「そうか」
ミリアとポピーは並んで眠ってしまったようだ。エレーミアがお姉さんらしく二人に上着を駆けてやったりしていた。
アウラはアーディンを摑まえて説教しているようだし、ヤコブはそれをにやにやしながら見ている。
「アーディンはおれたちと一緒に来てくれるの?」
「そうらしいな」
「フェリスも来るってさ」
「……」
そう言うと、アレイさんはひどく嫌そうな顔をした。
「きっとフェリスは置いてくって言ってもついてくるよ」
「あの騎士団員は?」
「シドのこと? うーん、どうだろ」
じゃれるように拳を交える二人を見ながら首を傾げると、喧嘩していたフェリスがふいに手を止めた。
小さな声でシドに何か言っていたみたいだけど、それを聞いたシドは血相変えてこちらにやってきた。
「貴方はまた懲りもせずあの男を連れて行く気なのですか?」
「えっ?」
あれ、なんで突然、お説教モードなんだろう?
後ろでフェリスがにやにや笑っている。アレイさんも、自業自得だ、と助けてくれる気がなさそうだ。
「あの男の危険性を幾度説けば聞き入れてくださるのですか? 私がどれだけ申し上げても貴方はこの通り、あの男を身傍に置き、警戒もなさらず……」
ああ、はじまっちゃった。
相変わらずよく動く口だなあ。
でもきっと聞いてないと怒られるんだよなあ。
「聞いてらっしゃいますか?!」
ほら、やっぱり。
「ごめん、聞いてなかった」
シドはがっくりと項垂れた。
「ごめんね。でも、シドがおれの事をすごく心配してくれてるっていうのはすごくよく分かってるんだ」
「分かっていらっしゃるのならっ……!」
「だからさ、一緒に来る?」
一度は突き放そうとした。
おれと一緒に居たら、またシドが大怪我するかもしれない。また周囲を巻き込んでしまうかもしれないって。
でも、それは違うんだね。
おれの力は、ヒトと一緒に居て、そのヒトの力を借りることでようやく真価を見せる。
ヒトを巻き込むことを恐れて、ヒトを遠ざけようとしたおれに気づかせてくれたのはウリエルだった。
孤高の伝道師。
彼がいったい何を考えているのかはやっぱり最後まで分からなかったけれど、おれにとって彼は導き手の一人だった。
おれの言葉を聞いたシドは、ものすごく驚いた顔をして、でも次の瞬間には見たことないくらいに嬉しそうに笑った。
「私の剣は貴方の身を守る為にのみ存在します。御心のまま、すべては、貴方の為に――我が主」
4年前の戦争で、グリモワール王国はディアブル大陸から姿を消した。
でも、悪魔を信じる人々滅びたわけじゃない。崇拝する心が滅びたわけじゃない。悪魔たちが滅びたわけでも、魔界が滅びたわけでもない。
それはおれの身内に巣くう多くの悪魔が証明している。
あの戦場にいながら、何もできなかったおれだけど。いつか悪魔の王国を再建するために、必ず力をつけて帰る事を約束するよ。
だから、こうして先へ行く。
その旅路は一人じゃなくて、アレイさんと二人きりでもなくて。
助けてくれるたくさんのヒトたちに囲まれて、続くんだ。
だから、だいじょうぶ。
これから向かうのは海の向こう、はるかなる光の王国ソルア。
たくさん助けてもらった仲間に別れを告げて、新しい仲間と手を取って。
向かった先でおれとアレイさんが知るのは、リュシフェルがおれたちに『柱』の事を告げられぬ理由だった。
でも、本当に知りたかったことを知った時、おれもアレイさんも、とうに自分の心を決めていたことを知ったんだ――
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
これで第二幕第二部の-head-は完結です。
放浪編なのに、結局二章もかけて国境付近をうろうろしただけでしたが……orz
次回は、もっと冒険ぽいことしたいなと思ってます。
いろんなモンスターが出てきたり、龍を探して洞窟探検したり!
はやく書きたい°・(ノД`)・°
-tail-の方を完結させてから取り掛かるので、いつになるのかわかりませんが^^;
まだまだ終わりそうにありませんが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです^^
ではでは、次章で!