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第22話 キラーキラー4

挿絵(By みてみん)



 筋肉の精霊の拳を受けた小龍ワイバーンは大きく距離を取り、そのまま空高く飛び上がる。他の小龍ワイバーンたちもサガオへの攻撃をやめて、遥か上空で旋回を始めた。


「バーガー、やめてくれ!」

「馬鹿野郎! ヒマリを巻き込んでるじゃないか!」

「ぐ! ヒマリ、あのハンバーガーさんについて行くんだ! ここは危ない!」

「やだ! またお兄ちゃんはどこかに行こうとしてる! 私もう1人はいやだよ! 1人にしないで!」


 サガオはたじろいでいる、突破口が開いた!


「さぁサガオ! 勇者パーティメンバーとしての初仕事、小龍ワイバーン退治といこうじゃないか!」

「······」


 一頭の小龍ワイバーン(さっき殴った個体)が、体勢を立て直して急降下してくる。


「お兄ちゃん!!」

「おうッ!!」


 ヒマリを庇うように前に出たサガオは、4本の腕で小龍ワイバーンの体当たりを受け止める、サガオは微動だにしない。


「俺の妹に近づくな!」


 サガオは小龍ワイバーンをがっちりと掴みあげ、一つ目を光らせる、レーザー光線だ!


「ギャア!!」


 サガオの無慈悲なレーザー光線は小龍ワイバーンの胸部を貫通、一撃であの小龍ワイバーンを絶命させた。グッタリとした小龍ワイバーンを怪物の口に放り投げる、落ちる音はしない。


「ああもう!やるんだにゃ!」


 エリノアたちが追いついた。


「エリノア!ヒマリを頼む」


 エリノアが返事をする前に、サガオが割って入った。


「おっと、妹を守る役目は、この俺に任せてもらおうか」

「わかった、サガオのらところが一番安全だな!」

「そうとも、それにあの数だ、バーガーたちも生き残ることに集中するべきなのだ」

「そうだな」

「俺が大半の小龍ワイバーンの相手をしよう、俺のカバーしきれなかった小龍ワイバーンの相手を頼むのだ」

「わかった!」


 サガオを背にして陣形を組む、エリノアと筋肉の精霊が前衛、アイナとジゼルは後衛、ヒマリはサガオの股下にいる。


 サガオは格納されていた4本の武器を4本の腕にそれぞれ装備する。エリノアが思い出したように声を上げた。


「そうだ! バーガーこれ」

「これは!」


 エリノアが小袋から出したのはパンフライ名物『めっちゃ焼いたヤツ』だ、それも何枚もある!


「ギムコ村の村人たちが作ったのをもらってきたんだよ、何の肉が入ってるかは、挟んでからのお楽しみだよ」


 そうか、パンフライから近いギムコ村の名産も、めっちゃ焼いたヤツなのか。とりあえず一枚挟んでみる、この幸福感、やはりパテを挟むと力が出るな、解析開始!『混合肉を確認。悪魔(デビル)カンガルー、ストレートフィッシュ拳箱パンチボックスから鬼のオーガフィストを生成、1回使用可能』


 迫り来る小龍ワイバーン。いっちょやるか!


「エリノア!」

「にゃ?」

「俺を小龍ワイバーンに思いっきり向かって投げてくれ!」

「んにゃ、にゃんだかよくわからにゃいけど、あいよ!」


 エリノアは俺を拾い上げると、思いっきり投げる、筋肉の精霊も俺に引っ張られて飛ぶ。急速接近するハンバーガー(俺)を見て小龍ワイバーンは面食らっている、いまだ!


「『鬼の拳オーガフィスト』」


 筋肉の精霊の血の通っていはい右拳が真っ赤に染まる、まるで燃えているかのようだ。向かってくる小龍ワイバーンの鼻っ柱を鬼の形相で殴る。小龍ワイバーンの頭がスイカ割りの如くバックリと割れる。頭部を失った小龍ワイバーンは紙飛行機のように滑空、怪物の口へと落ちていった。落ちた音はしない。


 それを見たサガオが叫ぶ。


「やるなバーガー! 俺の見たことのない魔法だ!」

「ああ! 俺も初めて見た!」

「え?」


 パンチが強くなる魔法か、あの硬い鱗で覆われた小龍ワイバーンを一撃で屠るとは、正しく一撃必殺の拳だ。それにしても興味深いな、今のはライブ感でやった事だが、筋肉の精霊を出しているときに魔法を使用すると、俺ではなく筋肉の精霊が使うことも出来るのか、念じて使えば使い分けができそうだ。


 と、そんなことは後回しだ。おかわりが来る。


「バーガー! 新しいめっちゃ焼いたヤツだよ!」


 エリノアがめっちゃ焼いたヤツをフリスピー投擲、俺に向かって投げる。俺は魔法を使って干からびためっちゃ焼いたヤツを吐き出して(勿体ないがそうも言ってられない)タイミングを合わせて飛ぶ、新しいめっちゃ焼いたヤツを咥える。


 そして今度の小龍ワイバーンは体当たりではなく、口を大きく開き火炎の吐息ファイヤーブレスの構えを取っている。サガオに使わないのはキラーキラーのボディに対魔装甲が施されているからだ。火炎の吐息ファイヤーブレスが有効な相手になら当然使ってくるか、って、ちょっと待ってくれ、まだめっちゃ焼いたヤツの解析が終わっていない!


重力捕縛グラビティアレスト


 ジゼルの魔法だ、飛んでいた小龍ワイバーンが叩きつけられるように地に落ちた。開いていた口も閉じるほどの重力だが、両の足を地面にめり込ませて踏ん張っている。


「今のうち。重力魔法(グラビティマジック)は疲れる。長くはもたない」


 ジゼルは額に汗を浮かべて両手を小龍ワイバーンに向けている。重力操作までやれるのか、よし、俺もさくっと解析を、


「私に任せてください!」


 アイナが矢に札を巻き付けている、あの札にはジゼルの爆弾ボムの魔法陣が書かれている!


 アイナの放っ爆弾の矢は小龍ワイバーンの頭部にヒットして爆発を起こす、だが小龍ワイバーンは火だけではなく爆発にも強い、首を大きくあげて悲鳴をあげるも、絶命させるには至らない。


「額の鱗が取れれば十分だにゃ」


 エリノアの剣が鱗の剥がれた部分に突き刺さる、あの深さは脳に達したな、脳を破壊された小龍ワイバーンは重力に逆らえずに地面に叩きつけられた。


 勇者パーティ総出でなら、Sクラスの小龍ワイバーンを倒すことができる、というか俺の魔法の出番がないほどだ。背後から激しい戦闘音、サガオの様子を見る。


「こ、これは!?」

「半端ねぇにゃ」


 惨殺された小龍ワイバーンの死骸がいくつもサガオの周りに転がっている、手にはそれぞれ血塗られた武器が握られている。ちょうど目からレーザー光線を放ち、後方の俺たちを狙った火炎の吐息ファイヤーブレス小龍(ワイバン)ごと貫いたところだ。


「どうだ! 俺の強さは!」


自動操縦のキラーキラーとは別次元の強さだ。元となるサガオ自身の戦闘スキルが高いのだろう。


「ああ、強いよ」

「そうだろう! そうだろう! 月の無い夜ムーンロストナイト部隊は、聖騎士で構成された部隊の中でもトップクラスの実力を誇る部隊の一つなのだ! まぁ、この体になるまで4本の腕で戦ったことはなかったのだが、慣れれば戦いやすいものだ」

「バーガー様! 小龍ワイバーンが空から降りてこなくなりました」

「なに!」


 すでに小龍ワイバーンたちの3分の1を倒した、もう諦めて帰ってくれないかな。そんな淡い期待を裏切るように小龍ワイバーンたちは訓練された戦闘機めいて隊列を組み移動を開始した。


 その陣形を見たサガオが慌てた口調で言った。


「あれはまずいぞ!」

「あの陣形がどうしたんだ」

「間に合わない! 俺に掴まれ!」


 小龍ワイバーンたちが真下を向いて口を大きく開く、そして口から溢れるほどの大きい真っ赤な火の玉を吐き落とした。あれはーー


爆裂吐息エクスプロージョンブレスだ」


 真っ赤な火の玉は線香花火のように落ちて地面に触れた途端に大爆発を起こす、空爆だ。


 俺たちはサガオの真下に移動する。ヒマリを囲んで守るような陣形だ。サガオも4本の腕を使い爆風を防いでくれている。


 ジゼルが床に手を当てて呪文を唱える。


落し穴ピトフォール


 サガオを落とさない程度の穴が作られた、即席の防空壕だ。


「よし、ヒマリを中に······!?」


地面が大きく揺れる、どんどん傾いていく、サガオが叫んだ。


「バーガー! 爆発で崖が崩れてしまった! 落ちる!」

「なんだと!?」


 俺たちは崖際にいるんだった、まさか小龍ワイバーンたちは最初からこれを狙っていたのか!


 俺たちは重力に逆らえず、怪物の口の中に落ちていく。



 現在、絶賛落下中。


 と、そんな悠長にしている場合じゃないな、アイナに抱きしめられていても落下は止まらない。


 俺は解析を開始する『混合肉を確認。飛行フライングペンギン、飛翔スカイワードドードー、跳躍ハイジャンプオストリッチから天使の翼エンジェルウイングを生成、1回使用可能』


 お、なんかいいのを引いたな! 早速発動!


「『天使の翼エンジェルウイング』」


 筋肉の精霊の肩甲骨から白い天使の翼が生える、おお、筋肉の天使だ、めっちゃカッコいいな!


「アイナ、俺に捕まっていろ!」

「はい!」


 俺はアイナの胸に潰されそうになりながらも、生えたばかりの翼をはためかせる。む?どうやら力ずくで飛ぼうとしなくても浮くみたいだな、天使の翼ってそんなに羽ばたいてないもんな、魔法の力で浮いているんだ。


「バーガー様! 皆を助けないと!」

「おっと!」


 俺が助けに行こうと下を見る、エリノアがジゼルに手を伸ばしているところだ。


「ジゼル! ミーの腕に捕まれ!」


 エリノアの差し伸べた手をジゼルは両手でしっかりと掴む、エリノアは絶壁に折れずの剣を突き刺した。


「んにゃあああああ!!」


 ダメだ、止まらない。


 エリノア一人なら何とかなったのかもしれないが、今は二人分の体重が掛かってしまっている。だが僅かな減速をジゼルは見逃さない。


岩壁ロックウォール!」


 絶壁から岩の板が飛びだす、足場にするつもりだ。しかし強度が足りず、踏んだ衝撃で崩れ落ちてしまう。


岩壁ロックウォール! 岩壁(ロックウォール)!」


 なるほど、ああやって減速させているのか、数枚壊したあと、最後は大きめの岩壁(ロックウォール)を作り止まることに成功した。だがかなり下に落ちてしまった、岩壁ロックウォールで足場を作り登ってきているがすぐには戦いに参加できない。


 そしてサガオはというと。


「おお! さすがは勇者パーティ! 落ちても動じないのだな!」


 サガオの姿が変わっていた。


「サガオ、その姿は?」

「ふふ、俺が海を渡ってここまで逃げて来れたのはこの力のお陰なのだ」


 サガオが飛んでいた。


 4本の足が変形してジェットエンジンのように青い魔法の炎を吹き出している。その他の姿(デザイン)も変わっており、まるで太いロケットだ。


 ヒマリはというと、気を失ってしまっているようだ、サガオの腕に抱かれている。


「バーガー様! 小龍ワイバーンたちが来ます!」


 真上から小龍ワイバーンたちが襲いかかってくる。


「この好機をみすみす逃すわけがないか。さぁ、第2ラウンドだ!」



「バーガー、空中戦は私に任せてもらおうか!」

「おい無茶するな、ヒマリを抱えているんだぞ!」

「俺の腕の中がヒマリにとって世界で1番安全な場所なのだ!」


 ぐぬぬ、カッコいいな。


「バーガー様、私にとって世界で一番安全な場所はバーガー様のお側ですよ!」


 そう言うとアイナはより一層、俺にしがみついてくる。キュン!! はぅっ!? 俺の気持ちの昂りを感じ取り、筋肉の精霊が吠える、パンプアップする、小龍ワイバーンたちがそれを見て激しく警戒している。


「おお! バーガーもやるな!」

「そうですよ! バーガー様は世界最強の勇者様なんですからね!」


 そうだ! 俺も負けてないぞ! 俺だって元は世界最強だ!


「サガオ、共同戦線だ!」

「了解した!」


 俺は翼に意識を向ける、思うままに空中を移動できる、機動力もある。俺が意識を進むことに向けると、体が高速で動く、いきなりトップスピードを出せる。俺の荒い運転にアイナが顔色を青くして消え入るような声で呟いた。


「バーガー様······」

「す、すまん、速くしすぎたな」

「いえ、大丈夫、です、うぷっ」

「気持ち悪いんだったらエリノアたちのところに」

「いえ! 大丈夫です! 私しがみつくの得意ですから!」


 むぅ、徐々に加速したほうがいいな、俺は平気だが、アイナをゲロインにしてしまう。


「そ、それにジゼルからもらった札がまだあります、これを矢に巻けば小龍ワイバーンにも対抗できます!」


 あの爆発する矢か、確かにあれなら小龍ワイバーンたちとも渡り合える、それにこの機動力と筋肉の精霊、十分に勝算はある。


「わかった、やるぞ!」

「はい!」

「バーガー、それにアイナ!このサガオが君たちをエスコートしよう!」


 そう言うとサガオは飛んでいく、その腕にはヒマリがしっかりと抱き抱えられている。やはり最前線で妹を抱えながら戦うのは危険だと思うが、


「この手で確かに触れているはずなのに、妹の温もりすら感じない!」


 サガオの叫びに、俺は黙って飛び立上がる。小龍ワイバーンたちは一頭だけを除いて、俺たちのいる『怪物の口』の中に入ってくる、あの空に留まっているのがリーダー格だな、なら!


「サガオ、ここを頼めるか!?」

「ああ、問題ない、バーガーは何を」

「あの空で見下ろしている奴に会いに行く」

「見下ろしている奴······あれか、わかった、ここは聖騎士の誇りにかけて死守しよう」


 俺は徐々に加速していく、小龍ワイバーンたちも何もせずに通すわけがない、通りすぎようとする俺たちを仕留めようと詰め寄ってくる。


「させるか!」


 サガオが猛スピードで、真横から小龍ワイバーンに体当たりする、そのまま絶壁に激突、至近距離からレーザー光線を放つ。


「バーガー、行け!」

「おう!」


 俺たちは雲を突き破る。



 そこにいるのは1頭の小龍ワイバーン、ただ他の個体と違うところがある、背から脇腹にかけて深くえぐれているのだ。あの傷には見覚えがある。


「あの傷は、こいつ屋台を襲っていた個体か」


 傷口はすでに塞がっていて血が止まっている、この短時間でここまでの自然治癒が可能なのか、驚異的な回復力と言わざるを得ない。すると予想外のことが起きた。


「そうだ! 貴様の魔法で受けた傷だ!」

「わ、小龍ワイバーンが喋った!」


 俺の記憶が正しければ小龍ワイバーンは知能は高いが、話すことはできないはずだ。それなのにどうして。


「ふん! 不思議か? 小龍ワイバーンが喋るのがそんなに不思議か?」

「ああ、不思議だね。特殊個体か?」

「ふっ! ならば教えてやろう!」


 教えるのかよ!小龍ワイバーンの体が光を放つ、体がどんどん小さくなっていく、最後は人型に落ち着く。光が消えると、朱色の鎧を身に纏った精悍な顔つきの美しい女性が佇んでいた、背中に生えた龍の翼以外は人と遜色がない。その美貌から放たれる殺気の眼光は、この俺に向けられている。


「どうだ? 驚いたか人間よ! 私は龍と人のハーフ、龍人ドラゴニュートだ!」


 な、なんだこいつ······こいつは······。


「アホか?」

「なに!? 私がアホだとぉ!」

「ああ、アホだろお前、情報をベラベラ喋っちゃって、俺の敵として恥ずかしくないの?」

「ぐッ! 確かに!」

「バーガー様、この子素直ですね!」

「うるさい! 確かにギアからも、そう言われている!でも直そうとしても直せんのだ!」

「ギア? 誰だそれ?」

「なに!? ギアを知らないのか! そいつはとんだ無知さんだな!」

「なんだと!?」

「ふっ! ギアは勇者を殺し魔王軍に勝利をもたらす者、人呼んで絶者だ!」

「なに!? 絶者だと!?」

「ふふん、驚いているな! 驚愕しているな! そして私はギアに使える者。セギュラ・バーミリオン!」


 こいつ、サガオが言ってた絶者のことを詳しく知っているようだな、もっと情報を引き出せないか。


「お喋りはおしまいだ、パンとエルフ、貴様たちを葬ったあと、下のキラーキラーをスクラップにしてやる!」


 勇者だとは気づいていないようだ、それは好都合だ、舐められているうちにとっ捕まえてやる!


「アイナ、この人は殺すな、生け捕りにして魔王軍の情報を聞き出す!」

「わかりました! 四肢をもぎます!」

「もぎすぎ! 魔力を枯渇させるとか、何かで拘束するとか、他にもやり方はあるだろ!」

「は、はい!さすがはバーガー様です!」


いや、こんな事で『さすバー(さすがバーガー様の略)』されてもな。その様子を見ていたセギュラが怒号を上げた。


「話は終わったか! ギアは時間にとても厳しい男だ!帰還が遅れると······私が怒られてしまう!」


 話し終わるのを待っていたのか······。警戒しつつ話していたのだが、変に律儀な人だな。


 そろそろ戦い始めようかと俺が思ったとき、セギュラが変な声を出した。


「むお! いまさらだがパンが喋っているぞ!」


 本当にいまさらだよ!


「パンはパンでも、バーガー様は勇者様なんですよ!」

「あ、アイナ!」

「へ? あ!」


 アイナは慌てて片手で口元を塞ぐ、勇者って言っちゃった。


「なんだと!? 貴様が勇者なのかッ!?」

「バーガー様······すいません······つい」

「いいんだ、そもそも勇者が隠れて戦うこと自体がおかしな話なんだ、俺はお菓子じゃなく主食だ」

「バーガー様······」


 俺はアイナを励まし、セギュラに視線を戻す。セギュラの様子がおかしい、全身が小刻みに震えている、そして顔を上げて高らかに笑い出す。


「ハハハハハッ!! こいつはついている!エルフが勇者を抱えてやって来たぞ!」


 朱色の魔力が溢れているのが肉眼でも見える、なんて魔力量だ!


「ここで勇者を殺せば、私が絶者になれる! ······そしてギアを私の婿にして······ククク、クハッハッハッハーッ!!」


 なんて邪な動機! こいつにだけは負けたくない!


「やるぞ、アイナ、手加減はするな、それくらいが丁度いい」

「はい!」

「ふん! 貴様らに一ついいことを教えてやろう!」

「なんだ!」

「私は小龍ワイバーンの姿のときよりも」


 セギュラは凶暴な笑みを浮かべる。


「今の方が5倍強い!」


 セギュラは急加速して俺たちに詰め寄る。この加速は物理法則を無視している、つまり魔法での飛行、俺と同じというわけだ!


「5倍速いのか! 3倍の人なら知っているぞ!」

「ほう! そいつは博識さんだな!」


 朱色の彗星が繰り出す手刀を、筋肉の精霊が防御する。黄金の肉体ではないが、さすがは俺の魂だ、傷一つつかない。


「む! 硬いな! だが、これならどうかな! 火属性付加エンチャントファイヤー!」


 セギュラの両手から炎が溢れ出る、熱で焼き切るつもりか、ここはアイナの力を借りよう。


「アイナ、そろそろ矢を頼む!」

「バーガー様!」

「どうしたアイナ!」


 アイナは深刻そうな顔で呟いた。


「バーガー様に抱きついたままでは矢を射れません」

「あっ!」


 見落としていた!


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