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3 前かごの不思議


は~~~ まあ、無い物強請りしてもしょうがないかぁ~。それよりこの獣、生きてんのか?

いきなり飛び起きて襲ってきたりしないよな? 何はともあれこんな物騒な所は早く退散するに限る。


恐怖に怯えている暇は無いので気を取り直して再びペダルを漕ぎ始めた。

”未知で危険な森” という事は確定だろうけど チャリに乗ってさえいれば 今のところ安全は確保出来そう… しかしあんなのが頻繁に物陰から飛び出して来たら 身の危険は回避できても心臓に悪い。

いや、ゲームの世界と同じなら攻撃食らう度にHP削られて防御出来なくなったりするのか?

そう考えると今は何をおいても一刻も早く安全な場所を見つけるべきだろう… あるよな? 安全な場所・・・


先ずはこの危険な森から出て人が居そうな所を探そう。この世界について何も知識がないまま闇雲に歩き回るのは危険だ。

尤もこの世界、俺以外に人間が居るかは分からないんだけど。


そこまで考えて一つの結論? に辿り着いた。

異世界(ここ)ってそもそも人間が居ないから 人間が魔力を持てないんじゃないのか? 精霊とかいて精霊が宿ったモノが魔力を持つとか・・・


そんな埒も明かない事に思いを巡らせていたら いつの間にか森の終わりが見えてきた。

明るく開けた所に出ると前方に橋の架かった川が見えてきた。


なんだ、橋あるじゃん。おそらく、俺の知る限り、人間以外に木を切り倒して橋を架ける動物はいない。それも丸太では無くちゃんと製材された板で作ってある。人間の存在する世界なんだ─── いや、宇宙人とか未知の知的生物っていう可能性もある・・・


しかし、今はその事は横に置いておく。何故なら、そこに数メートルの長さの橋を架けるほどの川が在るから。

そこそこ広い川が在るっていう事は魚、いるよな? 俺は友達とゲームをするのも好きだけど、一人静かに? 釣りをするのも好きだ。いや、釣りをする方が好き! と言っても過言ではない。


未知の世界の川を見ながら 「ルアーと竿が有ればなぁ」 一人呟き視線を戻して目を見開いた。

さっきまで何も入っていなかった前かごに いつの間にか見慣れたルアーケースと愛用のルアー竿が入っている。

なんで?


俺一人で考えても答えが出る訳もない… そんな事より川原に下りて釣りをする事にした。チャリを押してずるずると土手を下る。平らな場所を探してチャリを停めた。近くに置いておかないと何時危険な事が起こるか分からない。


ルアー竿にはリールも付いて糸もある。何が釣れるか分からないので ワームを付け糸を切ろうとして気付いた。あえて声に出して言ってみる。

「鋏の入った小物ケースが欲しい。」


すると思った通り前かごに これも俺愛用のいつもと同じ小物ケースが現れた。

これは俺の望んだものが出て来る魔法なのか?

異世界、凄い! そこで試しに言ってみる。


「新発売の〇×△ゲーム機が欲しい」


   ・・・


ゲーム機は現れなかった。自分の持ち物でないとだめなのか? そこで家にセットしてあるゲーム機の名前を言ってみたがやはり現れない。

まあこれも深く考えても分からない事だろう… 今は取りあえず他にする事が有る!

検証はひとまず置いておいて釣りを始めた。ワームを投げ込むとすぐに何かがヒットした。


「おっしゃあー」

バレない様に慎重に糸を巻き取る。水面に現れた獲物はちゃんと魚の形をしていてマスの一種の様に見える。大きさも尺近くあって良型だ。

何とか釣り上げたが入れ物が無い。


「愛用のバケツが欲しい・・・」

するといつもチャリのハンドルにかけて持ち運んでいるプラバケツが現れた。バケツに水をすくい入れ魚を放す。二投目投入! 

そうやって夢中になって何匹か釣り上げた頃、気付くと何人かの子供がわらわらと遠巻きに集まってきていた。



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