3 前かごの不思議
は~、まあ無い物強請りしてもしょうがないかぁ。
それよりこの獣、生きてんのか?
いきなり飛び起きて襲ってきたりしないだろうな。
こんな所は早く退散するに限る。
気を取り直して再びペダルを漕ぎ始めた。
危険な森とは思ったがチャリに乗ってさえいれば安全は確保出来そうだ。
しかしあんなのが頻繁に物陰から飛び出して来たら心臓に悪い。
取りあえず人の居そうな所を探そう。
尤もこの世界、俺以外に人間が居るかは分からない。
そこまで考えて一つの結論?にたどり着いた。
異世界ってそもそも人間が居ないから
人間が魔力を持てないんじゃないのか?
精霊とかいて精霊が宿ったモノが魔力を持つとか・・・
そんな事を考えていたらいつの間にか森の終わりが見えてきた。
明るく開けた所に出ると前方に橋の架かった川が見えてきた。
なんだ、橋あるじゃん。
おそらく俺の知る限り、人間以外に木を切り倒して橋を架ける動物はいない。
それも丸太では無くちゃんと製材された板で作ってある。
川が有るなら魚、いるかな?
俺は友達とゲームをするのも好きだが、一人静かに?釣りをするのも好きだ。
いや、釣りをする方が好きと言っても良い。
「ルアーと竿が有ればなぁ」一人呟き前に視線を戻して目を見開いた。
さっきまで何も入っていなかった前かごに
いつの間にか見慣れたルアーケースと愛用のルアー竿が入っている。
なんで?
深く考えても分からなさそうなのでとりあえず川岸に下りて釣りをする事にした。
ルアー竿にはリールも付いて糸もある。何が釣れるか分からないので
ワームを付け糸を切ろうとして気付いた。
あえて声に出して言ってみる。
「鋏の入った小物ケースが欲しい。」
すると思った通り前かごにこれも愛用の小物ケースが現れた。
そこで試しに言ってみる。
「新発売の〇×△ゲーム機が欲しい。」
・・・
ゲーム機は現れなかった。
自分の持ち物でないとだめなのか?
家にセットしてあるゲーム機の名前を言ってみたがやはり現れない。
検証はひとまず置いておいて釣りを始めた。
すぐに何かがヒットした。
「おっしゃあー」
バレない様に慎重に糸を巻き取る。
水面に現れたのはマスの一種のように見える。
何とか釣り上げたが入れ物が無い。
「愛用のバケツが欲しい。」
するといつもチャリのハンドルにかけて持ち運ぶバケツが現れた。
バケツに水をすくい入れ魚を放す。
二投目投入!
そうやって夢中になって何匹か釣り上げた頃
気付くと何人かの子供がわらわらと集まってきていた。




