12 初稼ぎ
ジルに案内されて暫く通りを走って行ったら両脇に店が並んだ商店街に出た。
チャリを下りて押して歩く事暫し。
一軒の生鮮食品を売っている店の前でジルが止まった。
通路の端にチャリを停めアイテムボックスからクーラーバッグを出して貰って
ジルに続いて店に入った。
店主らしい人が
「おお、ジル久しぶりだな。今日は買い物か?」
と問いかけた。
「ちげーよ、今日は滅多に手に入らない極上品持って来たんだ。まあ見てくれよ」
と言って俺を振り返った。
俺はクーラーバッグを下ろしてふたを開け前に出す。
おっちゃんがどれどれと半信半疑でクーラーバッグを覗き込み
魚に目が釘付けになった。
「こりゃあ岩マスじゃないか!それも綺麗に捌いてご丁寧に氷まで敷いてある!」
「ああ。この兄ちゃんが釣ってすぐ捌いて水魔法で出した氷にいれて
魔道具で保温して持って来たんだ。
これだったらお貴族様でも満足してくれるぜ。」
まあクーラーバッグは魔道具じゃないけど保温機能のあるポットとか
あちらの世界では魔法瓶とか言うから不思議と違和感は無い。
水魔法の使い手は俺じゃないけど。
「ああ、ああそうだな。凄いな、こんな活きの良いのは初めてだぜ。
一匹半鉄貨三枚でどうだ?」
「冗談!ほかの店に持ってくぜ。サムあんちゃんとこなら
半鉄貨四枚は出してくれるな」
「んー、じゃあ二匹で半銅貨一枚!これが妥当ってとこだろ?
あいつんとこでもこれ以上は出せないだろう」
「わかった。それで取引成立といこうぜ!」
「よし決まり!
全部で一、二、・・・15匹だから銅貨三枚と半銅貨一枚と鉄貨五枚だな」
何も口出しすることなく取引を終えたみたいだけど
高く売れたのかどの位の価値があったのか全く分からない。
「兄ちゃん、氷も付けていいか?」
「ああ良いよ。どうせ今日はもう使わないし」
「氷もつけるから後鉄貨五枚出して」
「ああ、氷も良いのか?貴重なのに・・・」
「せっかく活きが良い魚なんだから氷に入れとかないと勿体ないだろ?
その代わりまた持って来た時にはよろしく頼むよ。」
「もちろんだ。こっちこそよろしくな」
流石任せろというだけの事は有ってあっさりと売りさばく事に成功した。
店を出てぶらぶら歩きながら物価の事とか通貨の事とか色々教えて貰う。
この国の貨幣は金属製で、最小単位は”半鉄貨”
価値は日本円で約20円くらい。
四角い硬貨の真ん中に穴が開いている。
半鉄貨が5枚で”鉄貨”(約100円)。こちらは穴が無い。
卵一個が半鉄貨二枚、丸パン二個が鉄貨一枚
鉄貨10枚で穴開きの”半銅貨”(約1,000円)、半銅貨2枚で”銅貨”(2,000円)
銅貨10枚で”銀貨”(20,000円)、銀貨10枚で”金貨”(200,000円)
通貨単位は”ゼニ”だけど計算できない庶民も多く日常の買い物は
半銅貨一枚までの事が多いから貨幣の枚数で数える事が一般的らしい。
今日の稼ぎは日本円で8千円くらい。結構な額だ。
「定食って一人分いくらなんだ?」
「鉄貨五枚から半銅貨一枚ぐらいまで色々」
「じゃあ今日は奮発して好きなの食べようぜ」
「やったぁ!昼飯がたのしみだ」
「じゃあ道案内よろしく」
チャリを押して街中を散策しながら定食屋へと歩いて行った。




