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14章

三日。制御訓練と並行して、彩葉は生徒会の全回線ログを洗っていた。演習室。薄暗い空間にモニターの光だけが浮かぶ。

「見つからないはずがないのよ」

静かな声。

「鳳凰寺が“内部状況”を正確に把握している。偶然ではない」

俺は壁にもたれ、演算を抑え込む。未来は、まだ多い。だが今は集中を一点に。漏洩経路。

生徒会サーバー。

演習記録。

異常同期率のデータ。

それらが外へ流れている。

「白斗」

彩葉がこちらを見ずに言う。

「あなたの演算で、通信ログの“違和感”を削れる?」

「確率の歪みを探せばいいんだな」

「ええ。人為的改竄の痕跡は、必ず不自然な選択をしている」

ヘッドセットを装着。今回は仮想戦ではない。情報空間。ログの海。


数字が、流星群のように流れる。通常通信は滑らかだ。だが一箇所。わずかに“重い”。未来を分岐させる。

改竄なしの未来。改竄ありの未来。後者だけ、演算が引っかかる。

(ここだ)

削る。余計な分岐を消す。残る一本。送信元。学園内部。生徒会権限保持者。名前が、浮かぶ。

――副会長・高槻 玲司。

ヘッドセットを外す。息が荒い。

「副会長だ」

室内の空気が凍る。夏芽が首を振る。

「嘘でしょ……?」

彩葉は、目を閉じる。

「証拠は?」

「通信ログの改竄経路。外部IPは鳳凰寺」

静寂。

「……直接、聞く」

彩葉は立ち上がる。


生徒会室。高槻はいつも通り、穏やかな顔で書類を整理していた。

「会長? どうしました」

「質問よ」

彩葉の声は平坦。

「あなた、鳳凰寺と接触しているわね」

一瞬。ほんの一瞬だけ。高槻の指が止まった。

「何の話ですか」

俺は未来を見る。否定を続ける未来。逃走する未来。そして。開き直る未来。最も確率が高い枝を、残す。「ログは押さえた」

俺が告げる。高槻の視線が変わる。穏やかさが消える。

「……さすがですね」

肯定。夏芽が息を呑む。

「どうして」

問いは彩葉から。声は揺れていない。

「どうして裏切ったの」

高槻は苦笑する。

「裏切りではありませんよ」

「では何」

「合理です」

一歩、前に出る。

「会長。あなたは優秀だ。だが学園という檻の中で完結している」

「言いたいことを」

「鳳凰寺は、世界を動かす側だ」

視線が俺に向く。

「彼の力は、ここで腐らせるべきではない」

「兵器にする気か」

「管理ですよ」

同じ言葉。 橘と同じ。

「暴走すれば都市一つ消えかねない」

正論。だが。

「だから差し出したのか」

「“保険”です」

高槻は淡々と言う。

「あなたが壊れた場合、即時回収できるように」

彩葉の拳が、わずかに震える。

「私を信用していなかったのね」

「感情論ではありません」

「答えになっていない」

沈黙。俺は未来を見る。このまま対立すれば、学園は分裂する。高槻は単独ではない。支持者がいる未来が見える。

(……面倒だ)

なら。削る。対立の未来を。

「条件付きで協力させる」

俺が言う。全員がこちらを見る。

「高槻。鳳凰寺との連絡は続けろ」

「白斗?」

夏芽の声。

「ただし、俺の指定情報だけを流す」

彩葉が理解する。

「偽装情報で財閥を誘導する」

「そう」

未来が整理される。

分裂回避。

内部監視強化。

時間稼ぎ。

高槻は目を細める。

「危険な賭けですね」

「合理だろ?」

一瞬。笑みが交差する。

「……会長の判断に従います」

彩葉は数秒沈黙し、頷いた。

「監視下での職務継続を認める」

処分はしない。

利用する。


夜。屋上。夏芽が小さく言う。

「怒らないの?」

「怒ってる」

「でも利用した」

「必要だから」

空は黒い。未来はまだ多い。だが一つ、確定している。鳳凰寺は罠にかかる。その代わり。俺の演算負荷は増す。現実干渉も、強くなる。

「白斗」

彩葉が隣に立つ。

「あなたは冷たい」

「知ってる」

「でも」

わずかに、柔らかい声。

「正しい」

その言葉は重い。俺は夜空を見る。未来を削り続ければ。最後に残るのは、何だ。

勝利か。

孤独か。

それとも、、、、、


まだ見えない座標_

裏切り者の回ですね

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