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ロストテイカー  作者: しータロ(豆坂田)
第二章――第二次典痘災害『下』

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第271話 前哨基地

 部屋から出たミケとレイは幾つかの施設が並ぶ敷地内を並んで歩く。小規模遺跡の間に建設された前哨基地。場所が来にくく、また危険であるため物資の運搬が困難だ。そのため前哨基地に使われている資材は近くにある遺跡の建物から拝借した旧時代産の建築資材が使われていたり、資材を多く必要としない建築様式になっている。本来、資材をあまり使用しない建築様式では耐久力に問題があるが、旧時代産の建築資材が使われているということもあり、完全ではないが補えている。また、それ以上に、施設面での不備を補うためにこの前哨基地には様々な防衛設備が用意されている。

 中継都市にあったのとは違い非常に高性能な自動ターレットや迎撃用弾頭、対空装置などの強力な迎撃能力を持った設備。探知妨害や光学迷彩などの隠密・妨害装置。その他にも前哨基地は存在する場所に適した設備を有している。今もこうしてレイが施設内を歩けているのはそれらの装備によるものだ。


「そしてあれが前哨基地で依頼を受けているテイカーが泊っている場所ですね」


 ミケが幾つかの小規模なコンテナのような物が立ち並ぶ一帯を指し示す。あそこはレイの他に、そしてレイとは違う正規の窓口から前哨基地での依頼を受けたテイカーが寝泊まりしている場所だ。

 『ケアトヤマ遺跡群』がある場所は一番に近いクルガオカ都市からでも一日近くかかる。わざわざ一日だけ来て依頼をして次の日に帰る、というのは非常に非効率的だ。そのため基本的に正規の窓口でこの依頼を受ければ二週間ほど、連日で遺跡探索をしなければいけなくなる。

 ただ二週間すべてを遺跡探索に当てるというわけでは無い。テイカーという職業は得られる成果の代償として多大な危険と犠牲を伴う。その中で何年とテイカーを続けている者達はある種の儀式的な習慣を持つ者や優れた直感を有している者がいる。例えば遺跡探索へと出向く一日前は食を飲み物のみに限定したり、寝る前に決まった曲を歌う・聞くなど、その習慣は様々だ。中には朝7時に起きてそれから行きつけの店でいつものよりも高い朝食を食べて次は……、のように決められたルーティーンを遂行する者もいる。後者の者ならば前哨基地に来た時点でその習慣が崩れてしまうのは確定だが、前者の者ならば前哨基地に来てもその習慣は継続できる。

 故に、この依頼期間である14日の内の9日を遺跡探索に充てればよいことになっている。当然、9日以上探索に費やしても良い。その場合は遺跡探索の成果に従って報酬が加算される仕組みだ。逆に怪我や体調不良などで規定である9日を下回れば、非常に高い成果を残した場合に限り、報酬は削減される。


「じゃあ休日の日、テイカーは何してるんだ」

「それは人それぞれですね。次の日に備える方もいますし……というより、この前哨基地に娯楽施設を立てるところが無いですから暴飲暴食するか部屋で瞑想でもするか、武器を選ぶぐらいしかすることが無いんですよね。そんなこともあって規定である9日よりも多く、暇だから、っていう理由で遺跡探索に行く人が多いですね」

「そうか。じゃあ遺跡探索に行けて良かったな、俺は」


 レイの場合、イナバが地下都市の件を片付けるまでこの前哨基地にいることになる。その間、ずっと与えられた部屋で軟禁というのは退屈で死んでしまう。強いて言えば勉強するぐらいのものだろう。

 いや、まとまった時間を勉強に費やすことができるのは案外貴重なのではないだろうか、とレイが考えたところでミケが話しかける。


「どうしますか、今日は一旦休憩してから遺跡に行きますか」

「あ……ああ」


 レイが自分の体を見る。


「一旦休んでからでもいいか」

「どうぞ、お構いなく。……あ、あとあの外套どうしますか」


 レイがモンスターの返り血で重くなった外套を思い浮かべる。


「捨てることはできるのか」

「大丈夫ですよ」

「じゃあお願いできるか」

「了解です。じゃあレイさんが泊る場所まで案内しますね」


 ミケが踵を返して進行方向を変える。レイもそれについて行きながら気になったことについて質問していく。

 

「武器とか売ってたりするのか?」


 レイの装備はアセンチデータのみ。対人ならば良いが遺跡探索には不向きな武器だ。さすがに違う武器が欲しい。今の装備で挑むのはあまりにも無謀すぎる。だがそんなレイの危惧はミケの言葉によって霧散する。


「ありますよ。本当なら売ってるんですけど、レイさんは立場が立場なのでお貸ししますよ。あ、許可が取れたらですけどね」

「そうか。ありがとう」

「いえいえ……あ、でも貸し出してる武器って企業の作ってるやつじゃなくてテイカーフロント製なので全く新しいものになると思うので、そこは気をつけてくださいね」

「分かった」


 レイが答えると、一瞬だけ後ろを振り向いてテイカーの宿泊するコンテナのような場所を見た。


「俺はあそこじゃないのか」

「はい。まあ万が一ですけど、あなたがここにいるのがバレたくないので。だから他のテイカーとあまり交流しないでくださいね」

「気をつける」

「ありがとうございますね」

「それともう一ついいか」

「はい。なんでしょう?」

「その遺跡探索で遺物は拾ってきてもいいのか?」

「あ、大丈夫ですよ。ただ最優先はモンスターの除去による安全区域の拡大なので、そこだけ留意して貰えれば、前哨基地内にある施設で遺物の買い取りができます」

「そうか」

「ただですね。まあ依頼内容を見ればわかると思うんですけど、すごい高価な遺物だったり特殊な遺物だったりはこちらは『買い取る』のではなく『受け取る』となるので気おつけてくださいね」

「未探索領域が多いから仕方ないか」

「はい。こうして彼らが活動しやすい場所を整えて遺跡探索をしやすいようにしているわけでして、普通の遺物なら買い取るんですけどそれ以外はダメですね。『ケアトヤマ遺跡群』の探索による《《アーティファクト》》の発見も私達の目的の一つなので」

「アーティファクトか」

「はい。あればいいですねアーティファクト。まあ、そう見つかるとは思いませんけど。あ、それと当然ですけど、もし見つけた時にテイカーフロントに報告しなかったり、勝手に持ち帰ったりしたら殺します」

「物騒だな」

「まあ似たようなことになるだけです」


 前哨基地はあまり広くないので、話している内に目的の目的の建物にたどりついたのかミケが立ち止まる。


「ここです」

「ここは……」

「はい。テイカーフロントの職員が泊っている場所です」

「え、いいのか、俺がいても」

「まあ何となく何を心配してるのかは分かりますけど、安心してください。前哨基地に派遣されるような職員ですよ、怖い人だってテイカーだってモンスターにだって怖がりません。何なら職員の中にはテイカー上がりの人もいますから、その辺は気にしないでも大丈夫です。何なら、テイカー上がりの人とは話が合うかもしれませんよ、それと昔の遺跡事情だったり武器だったり、聞いてみると色々と面白いですよ」

「……そうか。まあ……そっちがそう言うんだったらいいが」

「はい。大丈夫です。じゃあ部屋に案内するのでついてきてくださいね」

「ああ」


 そうして、レイはミケの後についてテイカーフロントの職員が泊っている施設の中へと入って行った。

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