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ルミナリーファンタジーの迷宮  作者: 蒼城双葉
第二章 ソロモン島編
52/187

第二章10  『アマルガムの洞窟』

《アマルガムの洞窟(どうくつ)

 入口にはそんな看板(かんばん)があった。

 洞窟(どうくつ)の入口は、川を(はさ)んで左右にあり、俺たちがいるのは入口の右側(みぎがわ)だ。

「あれは、コウモリだね」

 と、(なぎ)が顔を上げた。

 視線(しせん)の先――入口の天井(てんじょう)には、コウモリ(がた)のモンスターがいた。

 カクバット。

 天井(てんじょう)(たたず)姿(すがた)はこれまで見てきたモンスターの中でも小さいほうで、角張(かくば)ったフォルムと鉱物(こうぶつ)みたいな光沢(こうたく)ある仮面(かめん)をかぶったような頭が特徴的(とくちょうてき)なモンスターだ。


挿絵(By みてみん)


 何匹(なんびき)もいたけど、このゲームのモンスターらしくデフォルメチックだから気味悪さなどなく、俺は手始めに魔法(まほう)(とな)えた。

「《雷火(ゼノスパーク)》」

 手のひらをカクバットに向けると、(かみなり)(ほのお)(ゆう)(ごう)した魔法が(ほう)(しゅつ)された。

 一撃(いちげき)(たお)れたカクバットを見て、(すず)ちゃんが感心したように言った。

(かい)さん、いつの()にそんな魔法(まほう)を? 強そうですね」

「《天空(てんくう)(つるぎ)》を手に入れたら、この魔法も使えるようになってたみたい」

 (ため)してみたかった《雷火(ゼノスパーク)》の威力(いりょく)もそこそこにあるので、これはタンタロスみたいな強い(てき)にも使えそうだ。(けん)(さや)(おさ)めていても、(そう)()するだけでこれほどの魔法が使えるのは便(べん)()だな。

 使ってみた(かん)(しょく)として、この魔法はコントロールが()くようだし、(けん)にまとわせたら()(りょく)も上がりそうだ。



 さっそく洞窟内(どうくつない)に入る。

 なにかないかと注意しながら進んでゆくと、アマルガムが所々(ところどころ)に落ちていた。

逸美(いつみ)ちゃん、アマルガムって合金(ごうきん)だったよね?」

 そうよ、と逸美ちゃんは小石みたいな形のアマルガムを(ひろ)って言った。

「アマルガムは、水銀(すいぎん)(ほか)金属(きんぞく)によってできた合金(ごうきん)総称(そうしょう)。だからこの洞窟(どうくつ)は《アマルガムの洞窟(どうくつ)》だったのね」

 鈴ちゃんも落ちているアマルガムを(ひろ)って、

「これ、売れますかね?」

「売れると思うぜ。各自(かくじ)アイテム(らん)に追加しておこう」

 そう言って先を進む凪だったが、そのあとすぐに行き止まりになった。

 凪は頭の後ろに手をやってつまらなそうにつぶやく。

「なーんだ。古い(ふね)以外にはなんにもないじゃない」

 古びた船はどこか海賊船(かいぞくせん)のようにも見える。近づいて、(さわ)ってみると、アイテム追加画面が(あらわ)れた。

「あ。この船はもらえるみたい」

「へえ。よかったじゃん。ぼくも乗せてよ」

「いまは乗らないぞ。とりあえず船もアイテム一覧(いちらん)に追加したから」

(ふる)びた(ふね)》をゲットした。

 こうやってメニューの中のアイテムとして所持(しょじ)できるっていうのは、ゲームならでは便利(べんり)さだとつくづく思う。

 鈴ちゃんはこの古い船を見上げて、

「しかしそうなると、海の外にも冒険(ぼうけん)舞台(ぶたい)があるってことですよね?」

「だろうね。けどぼくらがそこまで冒険(ぼうけん)する時間はないかもしれない。順当(じゅんとう)にこの大陸の制覇(せいは)から行こうぜ」

「はい」

 と、鈴ちゃんは首を(たて)に振る。

「さあ、もう行こうぜ」

 待って、と俺は凪を呼び止める。

「なんか石碑(せきひ)があるよ」

「開くんよく見てるね。さすが《探偵王子(たんていおうじ)》だね」

 逸美ちゃんは俺の横まで(もど)ってくるが、凪は首だけこちらに向けて、

「ん? なんて書いてあるんだい?」

 石碑(せきひ)は、高さは一メートルくらいだろうか、横幅(よこはば)も一メートル弱で、縦書(たてが)きに文章(ぶんしょう)が書いてある。

「ええと――」


『今こそ旅立(たびだ)ちの時がきた。大海賊(だいかいぞく)()ばれたこのキャプテン・グスタフ様が(かく)した賢者(けんじや)(たから)を、おまえは見つけられるかな? 宝は神殿(しんでん)に守られている。石像(せきぞう)を動かすことで、(とびら)(ひら)かれん』


「だってさ」

 鈴ちゃんが(うれ)しそうな笑顔で、

「宝ってことは、お宝的なアイテムをゲットできるってことですよね」

「ぼくは(しぶ)~いお茶とヨウカンがいいな」

 逸美ちゃんは手をあげて、「はいは~い! わたしは開くんの小さい(ころ)のお写真がいい」とか言い出す。

「そういうのはお宝って言わないの。《ソロモンの宝玉(ほうぎょく)》か《黄金(おうごん)聖杯(せいはい)(あた)りがお宝系アイテムとしては妥当(だとう)なんじゃないかな。それが神殿(しんでん)にあるんだよ、きっと」

 俺が(あご)に手をやってそう言うと、

「ぼくとしても、それなら(あま)~い和菓子(わがし)をいただけなくても許せるかな」

 と、凪は(うで)()んだ。

「むしろアイテムが目的(もくてき)だよ」

 凪は解説調(かいせつちよう)に言う。

「おそらく、この船を使って海に出ると、それがゲットできるイベントが発生(はつせい)するのさ。もしくは、船がどこかの島か大陸に着いたときにね。だからそのアイテムを入手するだけで膨大(ぼうだい)な時間はかからないと思うぜ」

「なるほど。そのイベントのためだけに船を使うって考えると、ゲットできるまで時間もかからないんじゃない? いますぐ行こうよ!」

「そうよ、行きましょう」

「第一のお宝ゲットですね」

 しかし、凪は首を横に振った。

「ダメだよ」

 俺は一瞬(いつしゆん)でその意図(いと)理解(りかい)する。

「そっか!」

 情報収集じようほうしゆうしゆうしてからじゃなきゃね。さすが情報屋(じようほうや)だ、と感心していると、

「まずは(はら)ごしらえしないと」

 ズコーと俺と逸美ちゃんと鈴ちゃんがこける。

「さっきリアルで食べただろっ! 先にするのは情報収集っ!」

 鈴ちゃんは俺の言葉にうなずいて、

「確かに、情報収集を先にしたほうがいいですね。さっきの《(まよ)いの(もり)》のときみたいに、危険性(きけんせい)やイベント発生条件(はつせいじようけん)とかの確認もできるし、アイテムだってもらえるかもです」

「そうだね。そうと決まれば《ミストフィード》を散策(さんさく)しよう!」

 凪はくるりと身をひるがえして歩き出す。

「まったく、マイペースなやつだ」

 (あき)気味(ぎみ)の俺に、逸美ちゃんが言った。

「でも、海の冒険(ぼうけん)って海賊(かいぞく)になるみたいで楽しみね」

「だね」

 確かに。

 お宝探しなんて、なんだか本物の冒険(ぼうけん)みたいでわくわくする。

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