第二章11 『機械仕掛けのマグナマキナ城下町』
情報収集がてら《ミストフィード》の街を回っているとき。
おばあさんから話を聞いた。
「外れにある洞窟の中には、かつて大海賊と呼ばれたキャプテン・グスタフの船がある。度重なる航海の末、彼が最後に辿り着いたのがこの街なのじゃ」
また。
港の船の中にいた別のおじさんは、忙しそうに動き回りながら、
「漁で摂れた魚を早く《マグナマキナ城》とその城下町に売りに行かないと。ん? その《マグナマキナ城》は近いか? すぐそこだよ」
聞いてもいないのに近くにあることまで教えてくれたおじさんに感謝して、俺たちは漁船を出た。
俺は凪に聞いてみる。
「どうする? 近いんだったら城下町に行っちゃう?」
「うん。城下町といったら規模が大きい街ってのが相場だ。きっといろんな有益な情報が手に入るよ」
「そうですね。《マグナマキナ城》に行ってみましょう」
鈴ちゃんも同意する。
「ふふ。決まりね。城下町かぁ~」
逸美ちゃんが楽しげにつぶやいた。
ということで。
《マグナマキナ城》に向かおう。
街の外に出てちょっと歩くと、北西にお城が見えた。本当に近いらしい。歩くことしばし、俺たちは《マグナマキナ城下町》に着いた。
街の入り口には、ちゃんと看板も下がっている。
《マグナマキナ城下町》
どこか機械仕掛けの雰囲気がある街で、スチームパンクを連想させる。最先端の機械やロボットというより、からくりや蒸気機関なのがこのファンタジー世界にマッチしていた。SFも絡めたファンタジー世界ってわくわくする。
城下町は《ドレスフィア》より大きい。
この街にはなんと鉄道も走っており、家々の上を通るレールもある。俺の目線の先では、SLがもくもくと煙を立てて空を駆け回っていた。
「SLだ」
「おぉ」
凪と鈴ちゃんが驚いている。
SLはこの城下町の中だけのものであるらしく、外に伸びたレールはない。それでも、この広い城下町を考えると、移動手段として大変便利だろうと思う。
また、街を見下ろすようにそびえ立つ《マグナマキナ城》は、ドイツのお城みたいにシックで美しいシルエットかつ、やや霞がかったことによる神秘的な荘厳さが漂い、思わず俺は息をついた。
「こんなお城や街が見られるなんて感動だよ。やっぱりこういう街並みはいいな」
お城の外観に見とれる俺に、逸美ちゃんはうふふと笑みを浮かべて、
「開くんはこの世界をホントに楽しんでるね」
「だって見たことない景色ばっかりなんだもん! もっといろんな物も見たいね」
「そうだね。この城下町にはからくりとかもあるし楽しみだわ」
「街の名前もカッコイイしテンション上がるよ」
そう言うと、逸美ちゃんが解説をしてくれた。
「古典ラテン語で、『マグナ』は『偉大』な、『マキナ』は『機械』。だからここはきっと、機械の恩恵にあずかる街なのね」
「そっか。いろんな街があって、世界が広がっていく感じがするね」
「ね」
と、逸美ちゃんが俺に微笑み返す。
「おーい、開。早く情報収集に行くよ~」
「こっちですよー」
凪と鈴ちゃんはすっかり先まで進んでいた。凪が呼びかけ、鈴ちゃんが手を振る。
俺と逸美ちゃんも、《マグナマキナ城下町》に足を踏み入れた。
城下町だけでもたくさん家や建物がある。
からくりと蒸気機関が街の動力をうまく機能させている様はおもしろく、見ていて飽きない。中にはからくりロボットが食べ物を出してくれるレストランなんかもあり、ふと、最近秋葉原の街でお掃除ロボットを見たのを思い出した。
すると、パラパラと雨が降ってきた。
「雨ですね」
鈴ちゃんがつぶやく。
空を見上げると。
さっきまで曇り空だったけど、一部に雨雲がかかっていた。
「また降ってきたか」
「洗濯物取り込まなきゃ」
近くにいたおじさんとおばさんが家の中に入ってゆく。
「この街は天気が変わりやすくて困る」
などと言って通り過ぎる人もいた。
凪はそんな人たちを見て、
「スチームパンクっぽい世界観だと灰色の空が似合うが、この街もこんな天気が似合うよ」
逸美ちゃんは人差し指を立てて言った。
「むしろ、この天気はそのせいよ。この《マグナマキナ城下町》は、からくりだけじゃなく、スチームパンクのように蒸気機関もあるのでしょ。だから天気が不安定なのよ」
「ロンドンがそうだね。霧の都ロンドン。霧、つまりスモッグは、産業革命時に石炭などの資源を使った影響だと言われているし、この街も産業が進んでいるからね」
俺が補足的に言うと、鈴ちゃんがふむふむとうなずく。
「なるほど。あれ? しゃべっているうちに、雨が止みましたね」
「またすぐに降るよ」
と凪が言った通り、情報収集を始めてからちょっとして、また雨が降ってきた。
俺たちは一度、カフェで雨宿り。
それからまた、情報収集を再開した。
しかし、この《マグナマキナ城下町》、見ていて飽きない街だけど、それらすべてを見て回るのはひと手間だった。情報収集って大変だ。
で。
聞いたところによると。
ここから北と東に行くと、またそれぞれ別の街もあるそうだ。それより、いまの俺の関心は《ミストフィード》からの航海にある。
そんな折――
ようやく俺たちは、《マグナマキナ城》の前まで来た。
「ちょっと寄ってみようか」
「いいぜ。こういうのは王様から頼み事をされるのが鉄板だしね。そのあといただけるお礼がなにか楽しみだ」
まったく気が早いやつだな。
王様はどんな人なんだろう。
俺はそのほうが気になる。




