第六話
とりあえず投稿です~。
……海を見に行った日から四日ほど経った。
この家での生活も慣れてきて、昼間は薪を割ったり、サクラさんを手伝って畑仕事や、家の補修をしたりしていた。
二人とも大分慣れてきて、コクヨウさんは元より、サクラさんとも打ち解けてきた気がする。
夜はコクヨウさんとサクラさんに色々質問したりしていた。
特に面白かったのは「魔法」だ。
この世界には大きく分けると3種類の魔法がある。
一つ目は「理術」
理法とも呼ばれる術で、この世界の魔法としては一般的で、一番バリエーションが多い。
世界の理に干渉し、精神力を代償にしてさまざまな効果を発現させる。攻撃だけでは無く、生活や生産、治療などにも使用される。
二つ目は「精霊魔法」
なんでも、この世界には至る所に精霊が居て、様々な精霊と交渉する事で、魔法を発現させる。この魔法は理術と同じように精神力と使うか、精霊の好みの触媒を使う事で精霊の得意な現象を使う事ができる。
三つ目は「竜術」
これは特殊な魔法で、竜が使う魔法らしい。たとえば、まだ俺は見た事は無いが、竜種は空を飛ぶ種類も居る。そういった竜種は、羽で羽ばたいて飛んでいるのでは無く、魔法で飛んでいるらしい。
一部の竜の加護を受けた人意外、人種はほぼ使用出来ない。
あと、魔法では無いが、この世界の人種には「ギフト」と呼ばれる特殊能力を持つ人も居るらしい。コレは俺が居た地球で言うところの超能力みたいなモノで、先天的や後天的に様々な能力が使える人が使えるようになるらしい。
魔法はコクヨウさんが理術、サクラさんが精霊魔術が使えるので、二人ともそれぞれ見せてくれた。
コクヨウさんは、一瞬でカップの中の水をお湯にしたり。凍らせたりしてくれた。
サクラさんは契約している。光の精霊を呼んでくれた。いつも夜に灯りの代わりに光っていたのは光の精霊だったらしい。
コクヨウさんが言うには元々サクラさんの種族のエルフは、精神力が人よりも多く、精霊に対してのチャンネルも開きやすいとの事だ。
二人とも魔法を使う時に、マンガみたいに呪文とか唱えなかった。ただ、魔法に慣れていない人や、大きな威力、精度の魔法を使う時は、精神集中のために呪文を唱える事もあるらしい。
魔法が使えるのは、才能に左右されるらしく、100人に1人ぐらいの割合らしい。ギフトはもっと珍しく、1000人に1人居るか居ないかという確立らしい。
ちなみに、コクヨウさん曰く……。
「……んん?小僧は……理術と精霊魔法は無理じゃなぁ、才能は無い!」
……残念。
ただ、俺にはちょっとした能力があるのが分かった。
魔法の事を聞いた翌日に、いつものように薪割りをしていると……。
「……ほうほう」
「……なるほど」
「……うんうん」
と、コクヨウさんがフラリと来て、薪割りをしている俺の観察をしだした。
俺はコクヨウさんの視線が気になって斧を置いて聞いた。
コクヨウさんは手で「コイコイ」と俺を呼んだ。
俺は布巾で汗を拭きながら、コクヨウさんの方の歩いて行く。
「……えーと、コクヨウさん、なんでしょう?」
「小僧、後ろを向け」
「……はぁ」
アイアンクローの事を一瞬思い出したが、お世話になっているので逆らえ無い。
俺はとりあえず言われたままに後ろを向いた。
……むにゅん
「おわっ!」
いきなりコクヨウさんが抱きついて来て、Tシャツごしに柔らかいモノが押し付けられた。
「ちょ、ちょっと!」
俺は、いきなり抱きつかれて焦った。
む、胸が……。
「えぇい、静かにしとけ!」
「……は、はひ」
コクヨウさんは抱きつきながら耳を俺の背中に付けて、何か確認している。
「……ふむ、小僧、深呼吸じゃ」
……スーハー……スーハー。
押し付けられた胸と体温といい匂いが気になるが、何度か深呼吸をすると、コクヨウさんも俺に合わせて呼吸しだした。
……スーハー……スーハー。
「さぁて……ふんっ!」
「……がっ!」
コクヨウさんが俺に抱きついたまま気合を入れると、脳天から地面まで電気のような衝撃が走った。
衝撃で背筋が伸びると、コクヨウさんが俺から離れる。
「……な、何を?」
「小僧、薪割りをしてみ?」
「……はぁ」
俺はコクヨウさんに何をされたのか訳が分からず斧を掴んだ。
「……んっと……あれ?」
なんだか今さっきより斧が軽い気がする。
コクヨウさんの方を見ると、ニヤニヤ笑っている。
とりあえず、いつもやっているように、土台に使っている切り株に玉木を置くと、斧を振りかぶって……振り下ろした。
ちょっと斧が軽い感じがするけど、いつもどおり薪が割れる。
「???」
別にいつもと変わりが無く、そのまま次の玉木を用意して振りかぶった。
「……通せ!」
コクヨウさんの声に無意識に斧に意識を集中させる……。
……スカッ!
「……おわっ!あぶね!?」
斧を振り下ろすと、音も、抵抗も無く玉木と切り株を切断して地面に斧が突き刺さった!? 抵抗無く地面を切り進む斧が自分の足に向かう!俺は急いで意識して斧を止めた!
「ククク……成功じゃな」
「何です?コレ……」
俺は地面に突き刺さった斧から手を離して、コクヨウさんに聞いた。
「気功術じゃ」
なんだそりゃ?ドラゴン○ール?
「この大陸ではほとんど伝わってない術でな。小僧は自分の中にある精神力を直接、斧に流し込んだんじゃ」
俺はコクヨウさんの話を聞きながら手をにぎにぎする。
なんとなく自分の中に力みたいなモノがあるのが感覚で分かる。
ただ、だるいし疲れる。
「まぁ東方では「気」とか言われる術で、この場合は「切る」と言う、小僧の意識で斧に「気力」が通って、斧の切れ味が増したんじゃな」
「……へぇ」
「小僧には魔法が使えんが、気功術の才能はあったみたいなんでな、ちょっとだけ手助けさせてもろた」
とりあえず地面に突き刺さっている斧に気力を通して抜いてみる。
……斧は抵抗無く抜けた。
「まぁ、鍛錬次第では色々出来るようになる。基本的には自分が触れているモノにしか作用しないがな」
「……結構疲れますね」
「その辺りも含めて鍛錬じゃ。……ほれ、暇な時はコレでも振っとけ」
「……重っ!」
コクヨウさんは、どこから出したのか木刀ぽいのを俺に渡した。普通に渡してきたので、以外な重さにびっくりする。
長さは50センチぐらいで、材質は木とか金属じゃなく、全体的に白く、樹脂とか骨ぽいのから作られている。
日本刀とかカタナとか詳しく無いけど、短くてちょっと反っている、鍔の無い日本刀のようだ。
「……抜いてみても良いですか?」
「抜けるならな」
コクヨウさんに聞いてから、鞘から抜こうとしても抜けなかった。
もし、中に刃があったなら錆びてるかもしれない。
二、三回振ってみても鞘は抜けそうに無いので。「まぁ素振り用なら良いか」と思った。
「一応、その脇差にはビャクダンと名がある」
また和風だなぁ、東方っていったいどんな所だろ?
俺はビャクダンのお礼をコクヨウさんに言った。
「この世界は、小僧が居た世界よりも、かなり過酷じゃ。争いもあるし、危険な獣も多い。この先、小僧がどう生きていくか分からんが、自分と大事なモノぐらいは守れるようにならんとのう」
俺は、小学校から野球一筋で、武道とかも学校の授業以外でやった事も無いし、武器とか持った事も、使った事も無い。
ただ、ココは異世界で、この先どうなるかまだ分からないけど、コクヨウさんの言いたい事は良く分かった……。
「ほれ、ちょっと型を教えてやろう」
俺はサクラさんが呼びに来るまで、コクヨウさんに教えてもらいカタナの扱い方の練習をした……。
今日は、起きてから家の周りを走って。ビャクダンを素振りして、汗をかいてから朝食を取った。
朝食後、「小僧、今日はサクラと村まで行って来い」と、コクヨウさんの一言で今日の予定が決まった。
食後のお茶を持ってきてくれたサクラさんの方を見る。
「……今日は村の子供たちに勉強を教える日ですから」
そういや、勉強教えてるって言ってたなぁ。考えてみると、まだ村に行った事無いし、サクラさんが先生をしているのを見るのも面白そうだ。
「小僧、買い物もあるから荷物持ちも頼むぞ」
俺はコクヨウさんからお使いを頼まれて、村に行く準備を始めた……。
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