↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放課後の竜機士  作者: 榊出
第二章:それぞれの初陣
27/28

第二十五話

 戦闘初日から三日経った。


「これは酷いですね、肩から指先までの筋肉筒の内部がズタズタになっていますので、交換するしか無いですね」


 各所の筋肉筒はすぐ手に入ったので、黒狼の修理は一日ほどで終わり、次の日から防衛のローテーションに入った。

 修理した腕の方は最初こそ違和感があったが、慣れてきて今は修理前を変わらない感覚だ。


「トルクレンチが無いからさー、締め付けトルクがわかんないよ」


 忍も筋肉筒の交換には手伝ってくれたらしい。

 竜機兵を修理する工具は、あんまり種類が無く、あれこれ欲しい工具もあるらしい。


「シノブさんは良いですね、うん良いです」


 レリムさんは忍の事を凄く褒めていた。何でも「機械」が分かっているので、手伝いにしても作業にしても早いらしい。

 ローテーションは、現状で動ける竜機兵が18機なので6機ずつ外壁近くで待機する。

 そして交代で、外壁の中に門を開け閉めして敵を誘導し、殲滅していく。

 次々と甲蟲は街にやってくるが、ヴォルトさんが言うにはある程度倒すと、巣に逆に進攻するらしい。







 初日、黒狼を修理中に、交代で帰ってきたアリアンロッドからアリスさんが飛び降りるように降りてくると、いきなり俺とサクラの前で土下座した。


「ま、真に、も、申し訳ございませんわ……」


 目の前でアリスさんとルーリさんが土下座をしている。

 俺の顔を見れないのか、土下座しながら頭を下げたままだ。

 ルーリさんの三毛の耳はペタンと折れている。

 あー……この世界でも土下座ってあるのかぁ……。


「いや、折れてしまったのは仕方が無いですから」


「い、いやしかし……」


 アリアンロッドは黒狼を修理している時に、黒狼から預かった槍を見事に真っ二つに折ってしまった。

 どうも、俺達の槍の一撃を見て、試してみたらしいが、大型甲蟲の足に折られてしまったらしい。


「とりあえず、アリスさん顔を上げてください。で……どうですか?」


 側に居たレリムさんに槍の様子を聞いた。

 レリムさんがアリアンロッドが持って帰ってきた黒狼の槍を一目見ると。


「……ダメですね、これは元に戻りません」


「ひぃ」


 レリムさんの一言でアリスさんが短く悲鳴を上げる。


「穂先は無事ですが……柄が手に入りません」


「……あぁ」


「多分、東方の木材だと思いますが、これほどの硬さで軽い木材は見た事が無いですね」


「あうあう」


「それに槍は穂先よりも柄の方が重要なので、多分、この辺りの木材で柄を作ったとしても、今までどおり気を通せないかもしれませんね」


「…………」


 そして、とうとうアリスさんは悲鳴さえ上げなくなってしまった。


「えーと、どうしよう?」


 サクラの方を見て聞いてみても困った顔をする。


「そ、そんな貴重な槍をわたくしは……」


 どうすれば……。

 槍が無くなるのは惜しいけど、弁償とかは考えていないし、武器や道具は壊れるのは当たり前だ。

 アリスさんもこのまま放って置けないしなぁ。


「わ、わたくし……わたくしの一生をかけてトール様のお世話をさせていただきますわっ!」


 アリスさんは、がばっと顔を上げると宣言した。


「は?」


「お嬢様っ!?」


 珍しくルーリさんが大きな声を出す。


「いや、そこまでしてもらわなくても……」


「いいえ!わたくしにトール様は信頼して貴重な槍を預けて頂いたのに、それを仇にしていしまいましたわ。もう一生かけて返させていただくしかありませんわ」


 横のサクラの方からなにやら圧を感じたので、サクラの方を見ると、凄い目でアリスさんを見ていた。……怖い。

 アリスさんはそう言うとサクラの方を見た。

 いや、見てしまった。


「……ひっ!」


「で、では、俺達はヒュリオンに行かなくてはなりませんので、それまでは協力お願いします」


 とりあえず、時間が経てば普通に接してくれるだろ。


「あ、ありがとうございます、誠心誠意ご奉仕させていただきますわ!」


 い、いやちょっと違う……。

 サクラの方はこれ以上見れなかった……。







『開くぞ!』


「どうぞ!」


 門の前で控えている機士団の竜機兵に返答すると、門がゆっくりと開く。

 昨日までで、大型の甲蟲は駆逐し、今は中型小型の甲蟲ばかりだ。

 門の外にはまだかなりの数が居るが、この三日間で最初の黒狼と数機の機士団の竜機兵が修理が終わってから、竜機兵も脱落は無く、そろそろ反抗作戦をしかけるらしい。


「中型6、小型15です!」


 門が開くと入ってきた、3メートルほどの中型の甲蟲に、大刀を振り下ろす。

 鎌状の前足を切り落とすと、甲蟲はバッタのような後ろ足で飛びかかってきた。


「よっと」


 俺は黒狼に回避させると、すれ違いざまにもう一撃を入れる。

 甲蟲は生命力が凄まじく、完全に動きを止めるまで油断は出来ない。

 門の開閉をする竜機兵以外の4機の竜機兵がそれぞれの武器で、甲蟲を倒していく。

 打ちもらした小型の甲蟲は、内門の近くに居る地竜達が攻撃していた。


「サクラ、外の敵の数は?」


 今回門を開けた分の甲蟲を片付けると、俺はサクラに聞いた。


「中型10、小型35です。今のところ増援は無さそうです」


『了解、休憩後、次は全部入れるぞ』


『どうぞ!』


「はい」


『了解』


『わかりました』


 部隊魔法でリンクした6機は即席の編成ながら各々の役目をこなしていく。


『黒いの、大分動きが良くなってきたわね』


「そうですか?」


『初日はアレだったが、その東方の刀でも結構やるじゃないか』


 俺達はチュールの竜機兵の中でも一番年下らしく、初日の事も好印象で他の竜機兵の人達が声をかけてくれる。


『その、黒狼だっけ?どうやって手に入れたんだ?』


「これは、恩のある方に譲っていただきました」


『ほう、羨ましい事だ。俺のヴィールドなんて手に入れるまでに10年かかったぞ』


 横のどこかの商隊の護衛の竜機兵が羨ましそうに言うが、口調はカラッとしていた。

 ちょっとした休憩でも気さくに話をしてくれる。


『そういや、黒いのってあの赤鬼の弟子なんだって?』


『なるほどねぇ』


「弟子と言うか……色々教えてもらっています。赤鬼ってよく聞きますけど、有名なんですか?」


『あぁ、ヴォルト卿は冒険者上がりで近衛の竜機士までなった人でね』


 近衛って事は王様とかを護衛する役だっけ?


『武勲や実績はそりゃあ凄い人なんだよ』


 近くに居る竜機兵の戦術機関士が噂好きなのか、ヴォルトさんの色々逸話を教えてくれる。

 過去の大規模な甲蟲との戦で、王太子を護衛しながら戦功をあげてから赤鬼と呼ばれるようになったらしい。


『で、5年ほど前に引退して、今は悠々自適に商隊の護衛してるんだっけ』


 なるほどねぇ。ヴォルトさんはなんとなく、国の機士団に居た雰囲気はあるけど、リーアさんは想像できない。


『よし、次開けるぞ。敵の増援は?』


『ありません』


 隊長格の機士団の竜機士が言うと、他のメンバーの竜機兵は各々の武器を構えた。







 最後の分を6機の竜機兵で殲滅すると、チュールの街の方から、伝令役の機士団の竜機兵が走ってきた。


『今回の分は殲滅出来た見たいですね。では、二機残ってもらい、後は内門へお願いします』


『俺と、黒いのお前は残れ』


「了解です」


 隊長格の機士団と俺達は残って、後の竜機兵はチュールの街に戻る。


「何でしょうね?」


『あぁ、そろそろ巣に進行するのさ。まだ防衛は出来るだろうが、そろそろ商隊や流通がな。多分商人ギルドから急かされているんじゃないか』


 何日も商隊が足止めは出来ない。商隊の人達は一応店を開けているけど、レギスさん曰く「街々に行商しないと儲けが出ない」らしい。

 流通の方も近隣の街や村に伝令が走っていて、街が閉鎖されているので、周りの街から入ってこれない。

 商人の人達が集まる商人ギルドから、横槍が入ってるのか。


「なるほど」


『そっちの索敵範囲の方が広い。二機しか居ないからな、お穣ちゃんしっかり頼むぞ』


「わかりました」


 サクラは答えると、街の外に注意する。

 ここ三日ぐらいで、何度も甲蟲と戦ったけれど、甲蟲はあまり頭が良くないが数が多く力は強い。

 基本的に、戦闘中は立ち位置を気にしながら、複数の甲蟲に囲まれないように戦う。

 ヴォルトさんが言うには「獣ほど意表を付いた動きをしない」らしいが、数が多いと竜機兵でも簡単に負けるらしい。

 外殻と筋肉などは資源としても有用なので、タイミングを見て街の人達が馬車で甲蟲の死骸を取りに来る。

 実際筋肉は竜機兵の筋肉筒に使用される以外にも食用になり、部位にもよるが、思ったよりも癖が無く、繊維質で蟹や海老に近くて結構美味しかった。

 一緒に食べた忍は最初、嫌がっていたけど一口食べると「こりゃぁマヨだね」と言って、マヨネーズを今度作るって言っていた。


「巣にはどれぐらいの甲蟲が居ると思います?」


『そうだな、甲蟲は獲物に集中するから、獲物って言うのは今回はチュールなんだが……大型10以下中型30以下小型50以下ぐらいじゃないかな』


「全力で攻めればなんとかなりますか?」


『街の護衛に何機か割くとして……本当はもっと規模の大きい部隊で当たる方が被害が少ないが……』


 普通、巣の攻略にはもっと人が要るらしい。

 大型、中型は竜機兵にまかせて、小型は人海戦術で対応したほうが、早く駆逐出来る。

 ただ、チュールの街には機士団は居ても騎士団は居ないし、場所的にも兵士はほとんど常駐していないらしい。

 それに、普通はもっと前から巣を発見し、準備をして攻略するが、今回は巣の規模が思ったより大きくて、準備をする前にチュールの街に甲蟲が進行してきた。

 現状では、巣に居る甲蟲さえなんとか出来れば、巣の攻略も出来るらしい。

 ただ、あまり時間を置くと、甲蟲はまた増えるし、街の方も食料や資材の備蓄、それを支える流通にダメージが増える。

 そういった話を聞いていると、内門が開いて、竜機兵が出てきた。

 先頭はチュール駐留機士団隊長のエフラムさんの竜機兵で、ヴェルデンやアリアンロッドも見える。


『今から、甲蟲の巣にこちらから攻撃を仕掛ける。チュールの街には機士団から2機、そして応援の方々から2機の四機で後詰をお願いしたい。それ以外の竜機兵は敵の巣の殲滅に当たる』


 と、言う事は4機が街の防衛で14機で攻めるのか。

 団長のエフラムさんはそう言うと、機士団の2機と黒狼とアリアンロッドを後詰に指名した。

 ちょっと、巣を見て見たかったな。

 2チームに分かれた竜機兵は各々のチームで部隊魔法をかけると、門を開く。


『じゃあ行って来るわね~』


「お気をつけて」


 リーアさんがいつもの調子で言うと、ヴェルデンが手を振った。

 後詰の4機は攻撃部隊が出撃すると、門を閉めた。



 ふー、やっと10万文字超えました~


 よろしければ感想、評価、お気に入り登録をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。