新たな扉
ギャラリーの奥、VIP専用のサロンへと続く豪奢な扉の隙間から、芳醇な香りが漂ってきた。
タキシード姿のギャルソンが、銀色のトレイに超豪華な軽食を乗せて歩いていく。キャビアをあしらったブリニ、金箔の乗ったフォアグラのテリーヌ、そして黒トリュフのカナッペ。
ニコライが仕掛けた
「現代アートの個展」
は、日本の富裕層や権力者の子弟をターゲットにしたものであり、集まった本物のVIPたちにはそのような至れり尽くせりの『おもてなし』が提供されていたのだ。
(……美味しそう……♡)
難解な芸術作品を前に知恵熱を出しかけていた鷺ノ宮満里奈の視線が、その銀色のトレイに完全に釘付けになった。
その瞬間である。彼女の胃袋は、それまでの緊張の糸が切れたことを合図に、飢餓の咆哮を上げたのだ!
グゥゥゥゥウウウオォォォオオォォンッ!!!
それはまるで、空腹に耐えかねた野生の猛獣が腹の底から絞り出したかのような、地鳴りを伴う重低音だった。
張り詰めていたギャラリーの静寂が、文字通り物理的に震える。
「……え?」
ニコライの完璧な笑顔が引きつった。
キュルルルルルルルッ……ギュロロロロォォォオオオォンッ!!!!
あろうことか、第二波が連鎖する。
ただの空腹音ではない。まるで未消化の牛丼と、先ほどまで溜め込んでいたアドレナリンが腸内で格闘しているかのような、腹部の空洞を共鳴箱にした凄まじい轟音だ。
「なっ……何の音ですの!?」
麗華がバサァッと扇子を開き、悲鳴のような声を上げる。一見も、完璧なアルカイック・スマイルを完全に崩し、信じられないものを見るような目で周囲を見回した。
武闘派の澪奈に至っては、
「敵襲か!?」
と架空の刀の柄に手をかけようとする始末である。
ゴゥオゥオゥッ……バゴォォォォンッ!!!
最後の一撃は、まるで古い工場の煙突が爆発するかのような、暴力的なまでの破裂音を伴う空腹の産声だった。
「…………」
音の震源地が満里奈の腹部であることを理解し、ギャラリーの時が完全に停止した………。
……その沈黙を破ったのは、漆黒のポニーテールを揺らし、音もなく満里奈の背後に立った古井座一見だった。
彼女のトレードマークである完璧なアルカイック・スマイルはピシリとひび割れ、見事なまでに引きつった笑顔を浮かべている。
「……ま・り・な・さ・ん?」
「ひっ……一見、先輩……!?」
ズゴゴゴゴ……という幻聴が聞こえそうなほどの威圧感を放ちながら、一見は満里奈のこめかみに両手の拳を当て、容赦なくグリグリと錐揉み回転を加えた。
「ぎゃあああっ!? 痛い痛い痛い! 頭蓋骨がメリメリ言ってる!!」
「神聖なる芸術の空間で、己の生理現象すらコントロールできずにあのような爆音を響かせるなど……我が吹奏楽部の恥ですわ。ええ、間違いなく万死に値しますのよ……!」
「ち、違うんです! お腹へったんです!! た、たこ焼き食わせてください!!」
「……まだ口答えしますのね。少し、おつむの調律が必要のようですわ」
「ぎゃぴいいいいいいっ!! 脳みそが、脳みそがカオスになるぅぅぅッ!!」
一見の制裁からようやく逃れた満里奈は顔を真っ赤にして腹を押さえ、恥ずかしさで溶けそうになりながら、その場で蹲ることしかできなかった。
「ちょっ、満里奈! あんたこんな静かなトコで腹の虫鳴らすなよ! マジでビビったじゃんか!」
どこからか戻ってきた央美が腹を抱えて爆笑しながら、容赦ないツッコミを入れる。
「……信じられませんわ! 神聖な芸術の空間で、他の方が召し上がる軽食を見ただけで己の生理現象すらコントロールできないなんて! やはり貴女のような大食らいは、この高尚なギャラリーには相応しくありませんのよ!」
「ごめんなさーーい!」
麗華が顔を真っ赤にして抗議の声を上げる。
一方、現場指揮官であるニコライは、かつてないほどの混乱状態に陥っていた。
(……な、なんだこの少女は。私の絶対的なコールドリーディングが、まるで機能しない……! これほどまでに場の空気を支配していた私の『芸術的オーラ』と『共感の毒』を、他人の軽食への羨望と腹の音一つで完全に無効化しただと……!?)
狂気の天才心理操縦士は、額に冷や汗を滲ませながら、顔を真っ赤にして蹲る満里奈を凝視した…。
彼女の精神構造には、芸術に対する虚無感も、社会への絶望も存在しない。あるのはただ、
「あのご飯美味しそう」
という、果てしなく俗物的で生命力に満ち溢れた野性的で強靭な食欲だけである。
完璧だったはずの『洗脳の宴』は、宇宙人とブラックホール胃袋を持つ少女の果てしない食欲によって、開始早々にして盛大にズッコケるのである。
ギャラリーの静寂を木端微塵に粉砕した、戦艦の主砲チャージ音にも等しい満里奈の腹の虫。
その絶望的なまでの「俗物感」を前に、ニコライ・“スタヴローギン”は数秒間だけ完全に思考を停止していた。
だが、彼は腐っても『カラマゾフ・ファミリー』の最高幹部である。数多の修羅場(精神的な意味で)をくぐり抜けてきた天才心理操縦士は、即座にこの崩壊した空気を「利用」する術を計算し、完璧な画商の笑みを貼り付け直した。
(……イレギュラーな事態だが、逆に好機だ。ここで大人の余裕と優しさを見せ、彼女の生理的欲求を満たしてやれば、無意識下の『信頼』を強固に打ち込むことができる)
「皆様、どうかお気になさらず」
ニコライは、顔を真っ赤にして蹲る満里奈の傍らに歩み寄り、優しく、そしてこの上なく紳士的に微笑みかけた。
「若い、瑞々しい感性が、これほどまでに難解な芸術と真剣に向き合ったのです。多大な精神的エネルギーを消費し、肉体が飢餓状態に陥るのは、むしろ貴女が作品の奥底にある『メッセージ』を無意識に受け取ろうと全力で格闘した証拠。……素晴らしい生命力です」
なんと美しく、そして洗練された胡散臭いフォローだろうか。
麗華や一見がポカンとする中、ニコライは優雅に指を鳴らし、ギャラリーの奥からスタッフに銀色のトレイを運ばせた。
「当ギャラリーのVIPサロンにて、特別なお客様にのみお出ししている軽食です。よろしければ、空腹の足しになさってください」
トレイの上に並べられていたのは、宝石のように美しい一口サイズの前菜の数々だった。キャビアを乗せたブリニ、金箔をあしらったフォアグラのテリーヌ、そして――。
「こちらは、最高級の黒トリュフの香りを添えた特製のカナッペです。どうぞ、お召し上がり――」
「ト、トリュフ!?」
その単語を聞いた瞬間、満里奈の瞳のハイライトがカッと復活した。
彼女の脳裏に、以前徹夜で視聴し、見事に遅刻の元凶となった抗い難い禁断の果実、中毒動画『トリュフ大爆発!!89』の映像がフラッシュバックする。
「トリュフ大爆発!! いただきまーす!!」
ニコライが優雅に勧める言葉を最後まで言い終わる前に、満里奈の腕が目にも止まらぬ残像と化した。
――シュバババババッ!!
「……え?」
ニコライが瞬きをした次の瞬間。銀色のトレイの上に芸術的な配置で並べられていたVIP向けの高級軽食十数個が、文字通り「忽然と姿を消して」いた。
「んぐ、んぐ、んごっ……! ぷはーっ! 美味しい! なにこれ、ちっちゃいけど味が濃い! トリュフ爆発してる! お兄さん、ありがとう! 生き返ったー!」
満里奈は野生のリスのように頬を限界まで膨らませ、わずか数秒でVIP用オードブルの全盛り合わせを、胃袋という名のブラックホールへと葬り去ったのだ。そして、満面の笑みで無邪気にニコライに礼を言う。
「…………」
ニコライは、空っぽになったトレイと、口の周りにキャビアの粒をつけた満里奈の笑顔を交互に見つめ、本日二度目のフリーズを起こした。
(味わう……という概念がないのか? 私が用意した、一口で数千円は下らない最高級の芸術的軽食を、まるで野犬がエサに食らいつくかのように……一瞬で……?)
彼の美学では、この軽食は
「少しずつ口に運び、味覚を通じて心を通わせるための小道具」
であるはずだった。しかし、目の前の少女はそれを単なる
「糖分と脂質のカロリーの塊」
として物理的に処理しただけである。そこには、ニコライが意図した精神的な駆け引きや『共感』が入り込む余地など、1ミリも存在しなかった。
「クスクス……」
その様子を見ていたオルガが、腕を組みながら満足げに深く頷いた。
「さすが満里奈サン。糖分と脂質の摂取速度、また一段と上がりマシタネ。……お兄サン、あの特製カナッペとやら、ワタシのエネルギーコアにも一つお願いできマスカ? 牛丼のタレとどちらが効率的か、分析したいデス」
「……あ、少々お待ちを……」
稀代の天才テロリストであるニコライの彫りの深い額に、冷や汗がツーッと伝い落ちる。
完璧だったはずの『洗脳の宴』は、芸術オンチの剣士のトチ狂った解釈に続き、宇宙人とブラックホール胃袋を持つ少女たちの果てしない食欲によって、ただの「カオスな無料試食会」へと成り下がろうとしていた……。
その後も、ニコライが動揺を隠しながら追加で運ばせたVIP用のオードブルは、見事なまでに彼女たちの胃袋へと吸い込まれていった。
「ん〜っ! このトリュフの風味、最高! これだけ良質なタンパク質と脂質を補給できれば、明日のトランペットの肺活量も間違いなく2割増しになるわ!」
「クスクス……。この黒いキノコ(トリュフ)、地球の菌類にしては複雑な芳香成分を持っていマスネ。ワタシのエネルギーコアの燃焼効率も劇的に上昇してイマス」
一方、吹奏楽部の規律と調和を何よりも重んじる副部長・古井座一見は、目の前で繰り広げられる作法もクソもない二人の暴食劇を前に、完全に言葉を失っていた。
「…………」
彼女のトレードマークである完璧なアルカイック・スマイルにはひび割れが入りまくり、サファイアのような青い瞳には絶望的なまでの『無』が広がっている…。
どれほど難解な音楽理論も瞬時に理解する彼女の明晰な頭脳をもってしても、この神聖な芸術の空間でVIP用のオードブルを野犬のように平らげる満里奈とオルガの姿は、処理能力の限界を超えた「究極の不協和音」だったのだ。
だが、そんな一見の硬直や、オルガと満里奈の無作法な食事に顔を真っ赤にしてワナワナと震える麗華をよそに――ギャラリーの片隅では、全く別の光景が繰り広げられていた。
「ん、このフォアグラのテリーヌ、なかなかイケるね。スーパーの試食とはレベルが違うっしょ」
「ええ、このキャビアの塩味も絶妙ですわ。お姉様も一ついかがですか?」
「……ふむ。斬撃のように鋭いトリュフの香りだ。悪くない」
「とりあえず、もらえるもんは貰っとくか。トランペット吹くには腹筋使うしな」
二年生の弥勒央美、一見の妹である古井座碧海、剣道部のエースである葉風澪奈、そしてトランペットパートの三年生・音戸利井の四人は、ギャラリーの異様な空気など一切意に介さず、ちゃっかりと別のトレイから軽食を確保し、優雅に(あるいはマイペースに)堪能していたのである。
「ちょっ……貴女たち! なに便乗して優雅にティータイムを満喫していますの!?」
あまりにも下品な食べ方に対する怒りを一時中断し、麗華がすかさずツッコミを入れる。
「いやー、だってヴィクトルさん?が『空腹の足しに』って言ってくれたし。遠慮するのも野暮ってもんでしょ」
央美がブリニを放り込みながらあっけらかんと答える。
「その通りですわ。提供された『おもてなし』を無駄にするのは、かえって非礼にあたりますもの」
碧海もまた、姉の一見がフリーズしているのをいいことに、ニコライの言葉を都合よく解釈して上品に微笑んでいる。
「……咀嚼時の隙を極限まで減らした、理にかなった一口サイズだ。戦場での携行食料としては完璧な仕事だな」
内心オッサンの澪奈に至っては、キャビアの乗ったカナッペを謎の兵站理論で高く評価し、静かに口へと運んでいた。
ニコライが仕掛けた『精神を絡め取るための甘美な毒』は、満里奈とオルガのブラックホール胃袋によって物理的に消滅させられただけでなく、他のマイペースなひのきヶ丘の生徒たちによって、完全にただの「美味しい無料のケータリングサービス」として消費され尽くそうとしていた…。
そして、食べ放題のビュッフェ会場と勘違いしているかのような二人の暴食ぶりに、ついに学園の女帝の堪忍袋の緒が切れる…。
「ちょっ……オルガさん、鷺ノ宮さん! 貴女という人は……っ!」
紫鳳院麗華は扇子をワナワナと震わせ、顔を真っ赤にして…一度止まって二人を見て…満里奈に詰め寄った。
「神聖なる芸術の空間で、作法もクソもあったものではないその野犬のような食べ方! みっともないにも程がありますわ! だいたい、芸術というものは魂で味わうものであって、胃袋を満たすための……」
麗華の怒りが沸点に達し、容赦ない罵倒の言葉を浴びせようとした、まさにその刹那だった。
テュリィイイイイインッ!!
口に運ぼうとしていた最後のカナッペを持ったまま、満里奈の眉間に強烈な電撃が走った。
「……え?」
彼女の視線が、ギャラリーの最奥――特別にライトアップされた、一枚の大きな絵画に完全に釘付けになったのだ。
それは、深い群青色をベースに、ひび割れたような鋭い金色のラインが無数に走っている抽象画だった。他の赤と黒を基調とした暴力的な作品群とは異なり、静謐でありながらも圧倒的な冷たさを放つその作品は、ニコライが個人的に最も愛し、麗華もまた「この個展における最高傑作」と絶対の太鼓判を押していたものだった。
満里奈は手にしていたカナッペをそっと銀色のトレイに戻すと、まるで何かに引き寄せられるように、無言でその絵の正面へと歩み寄った。
「……鷺ノ宮さん? 何を……」
麗華が訝しげに声をかけるが、満里奈の耳には届いていないようだった。
満里奈のエメラルドグリーンの瞳が、群青と黄金の交錯するカンヴァスの奥底をじっと見つめている。普段の明るくコミカルな彼女からは想像もつかない、研ぎ澄まされた真剣な横顔。
やがて、彼女はぽつりと、静かな声で口を開いた。
「……ただの、暗くて冷たい絵じゃない」
その声には、不思議なほどの重みがあった。
「この深い群青色は、絶対的な『孤独』。光さえも届かない、海の底みたいな絶望……。でも、このひび割れたような金色の線は、それを壊そうとしているんじゃない。暗闇の中で、必死に誰かに手を伸ばしている……『生きたい』っていう、切実な命の叫びだわ」
ニコライの肩が、微かに、しかし確かにビクッと跳ねた。
満里奈は、かつて理不尽な事故で生死の境を彷徨い、文字通り「暗闇の中で光にすがりついた」経験を持つ。だからこそ、彼女の魂は、この絵の表面的な構成主義のテクニックや洗脳の暗号などを飛び越え、作者がカンヴァスに叩きつけた根源的な「孤独」と「救済への渇望」に直接リンクしてしまったのだ。
「……音楽と同じだわ。不協和音ばかりで構成されているように見えて、その音の裏側には、隠しきれない『本当の気持ち』がある。……この絵を描いた人は、すごく孤独だったんだ。でも、誰かに自分を見つけてほしかった。相手の痛みに寄り添うように見つめないと、この絵の本当の美しさは見えてこない……」
満里奈が語り終えた後、ギャラリーには言葉を失ったような深い静寂が降りていた。
「…………」
ニコライは、息を呑んだまま満里奈を見つめていた。
(……なんという直観力だ。この私が、カオスの罠としてではなく、純粋な魂の叫びとして描いたこの絵の『本質』を、これほどまでに見事に……、いや、私以上に深く言語化してみせるとは……!)
そして、誰よりも衝撃を受けていたのは、真横でその言葉を聞いていた紫鳳院麗華であった。
彼女の扇子を持つ手が、震えていた…。
満里奈の解釈は、単なる美術理論をひけらかすものではない。対象の細胞一つ一つまでしゃぶり尽くすような観察眼と、痛みを伴うほどの深い共感。それはまさに、麗華が常に後輩たちに求め、そして誰一人として到達できなかった「真の芸術理解」そのものであった。
(この、ただ食い意地が張っているだけの凡庸な小娘が……。私が最高傑作と認めたこの絵画の、さらにその奥底にある『魂の涙』にまで共鳴したというの……!?)
麗華の脳内で、鷺ノ宮満里奈という少女に対する評価のパラダイムシフトが起きていた。
(……ただのモブではありませんでしたのね。この鷺ノ宮満里奈……私の、この紫鳳院麗華の美学に並び立つほどの、恐るべき感性を秘めた『真の芸術の理解者』……!!)
麗華の瞳に宿っていた侮蔑の光は完全に消え去り、代わりに、自分と同等の次元に立つ「ライバル」、あるいは「至高の被写体」を見つけた時のような、熱を帯びた強烈な執着の炎が静かに、しかし確実に燃え上がり始めていた…。
満里奈は、ふっと憑き物が落ちたように小さく息を吐き、ゆっくりと振り返った。
ギャラリーのダウンライトに照らされた彼女のシルバーグレーの髪が、ふわりと揺れる。そのエメラルドグリーンの瞳には、まだ絵画と共鳴した切実な感情の残滓が揺らめいており、普段の食い意地が張ったコミカルな姿からは到底想像もつかないほど、凛とした透明な美しさを湛えていた。
それを真正面から見てしまった紫鳳院麗華の心臓に、文字通り雷が直撃した。
ズギューーーンッ!!!
麗華の全身を、かつて経験したことのない致死量の熱波が駆け巡る。
天才的な審美眼を持つ学園の女帝の、気高くも強固だった「美への執着」のストッパーが……満里奈のその完璧な表情と、深淵を覗き込むような圧倒的な理解力によって、音を立てて木っ端微塵に粉砕されたのだ。
麗華の顔が、みるみるうちに沸騰したように赤く染め上げられていく。
普段の冷徹で高慢なアルカイック・スマイルは完全に崩壊し、代わりに浮かんだのは、極上の芸術品を見つけ出した狂気と歓喜に濡れた、妖しくもだらしない表情だった…。
荒い息遣いと共に、手にした扇子をガクガクと震わせる…。
(ふふっ… ああ、この子、この子ぉ〜〜ッ! 良いですわ… 貴女は、すごく良いですのよ。そのお瞳、そのお表情、そしてそのご理解力…。あぁあ〜〜〜〜んうう… ああ〜〜んうう… 。ああ… 今すぐにでも、貴女を… 抱きしめたい♡)
彼女の背後で、文字通りゴォォォォッと燃え盛る執着の炎が実体化して見えそうなほどの狂態。
柊光への一方的な片思いから始まった「オルガ強奪計画」は、ここに来て全くの予想外の方向へとかじを切り……学園の女帝・紫鳳院麗華の、鷺ノ宮満里奈に対する
「底なしの愛憎と芸術的執着」
という、新たな地獄の扉が開かれた瞬間であった……。
作者「……よくわかんないけど、なんかヤバいって分かったーーーッ!!」




