ミドルフェイズ3(情報収集フェイズ1)
情報収集フェイズにおける会話のねつ造が甚だしい……(笑)
もう少しキャラ同士で会話して貰えば良かったなぁ、と。
放課後。八部江はジバシによって半ば無理矢理、ナツキの経営する喫茶店まで連れてこられた。
「ここは?」
「UGN・N市支部だ。喫茶店は表の顔だ」
短く言い切ると、ジバシは「closed」の看板が掛かったままの入り口を躊躇いなく開けて店内へ入る。
「ああ、いらっしゃい」
二人を出迎えたのは店主であるナツキだ。
「ナツキさん、こんにちは」
「二人ともご苦労。ひとまず適当に座ってくれ」
ナツキに促されるまま、八部江とジバシの二人は近くの椅子に座る。厨房から出てきたナツキも席に着いた。
「ここに来て貰ったのは他でもない、お仕事の話さ。ジバシはもう知っているけれどね、八部江くんはまだ詳しい話は何も知らないだろう。だからお仕事の話をしっかりしておこうと思ってね」
ナツキは八部江に、今この街で起きていることを伝えた。
FHエージェント、ディアボロスとシューラヴァラの暗躍について。
「……それって、俺、関係ないんじゃ……」
「ははは、確かに関係ないかもしれない。でもね、八部江くん。これはあくまで私の勘でしかないのだけれど――君が巻き込まれたバスの事故、これと彼らFHが関連しているように思えてならない。そしてもし私の勘が当たっているとすれば、君は決して安全ではないんだ。そしてそれは君だけの問題じゃない。言いたいことが分かるね?」
それはつまり、綾瀬真花もまた危険にさらされるかもしれないということ。
「……脅しですか?」
「まさか。協力をお願いしているんだ。危険には間違いないが、君は間違いなく当事者だ。そして、私たちUGN・N市支部はちょっと今、人手が足りていなくてね。決して強制はしないが、君は戦える力を持っている。守るための力を持っている」
それは、八部江が断れない言い回しだった。
「……分かりました」
「うん、良かったよ。ありがとう、八部江くん」
にこやかなナツキに対して、相変わらずジバシは不服そうだ。
「ところで、その綾瀬さんについて。彼女が現在どういう状況なのか知りたいんですが」
「綾瀬真花について、か。――ジバシ」
「はい、支部長」
ジバシはナツキに代わって、UGNが現在把握している綾瀬真花の様子を伝える。
「綾瀬真花は八部江のクラスメイトで、バスの事故に遭った。が、奇跡的に無傷で生還している。……八部江、お前は覚えていないだろうが、おそらくお前がオーヴァードの力で彼女を守ったのだろう。現在、綾瀬真花はUGNの記憶操作によって、事故当時の記憶は消されている。俺も彼女と軽く話してみたが、記憶操作に問題はなさそうだった」
「なるほどなるほど。それは良かった。ジバシ、クラスメイトである矢神秀人について、ここ数日の監視で分かっていることは?」
「矢神秀人は八部江や綾瀬真花と同じクラスの学生。目立たない学生でしたが、最近は人を見下すような言動が増え、性格が変わってきているように感じます」
「ああ、それは確かに俺も思いました。あいつ、感じ悪かったですよねー、ジバシさん」
八部江が気さくにジバシに声をかけると、『うるせぇ、話しかけるんじゃねぇ』と言わんばかりに睨まれてしまった。その眼光に八部江もひるむ。
「なるほど……八部江くんは、何か矢神秀人について知っていることはないかな?例えば学校での噂とかで構わないのだけれど」
「噂ですか? うーん……あ、凄くどうでもいいことかもしれないですけど、矢神が綾瀬さんのことを好きだって噂があります」
「へぇ……」
「まぁ、綾瀬さんってクラスでも人気がありますし……」
八部江の言い方に、感情の機微に聡いナツキは理解する。そしてにやりと含みのある笑みを浮かべた。
「あぁ、確かに綾瀬ちゃん、可愛い女の子だものね。大変だね、八部江くんも」
「えっ……!? そんなのじゃないですって!」
少し頬を赤くした八部江が慌てて否定するが、ナツキは笑みを深めるばかり。
「ん? そんなのって何のことだろう~?」
「支部長、遊びはその辺りにしませんか」
ジバシの言葉に遮られ、ナツキはつまらなさそうに肩をすくめた。
「やれやれ。でもま、ジバシの言うとおりだね。今日はここまでにしておこう。各自、綾瀬真花や矢神秀人、そしてFHの動向について調査を進めてほしい」
「分かりました。俺は引き続き、矢神秀人の調査を進めます」
「ああ、頼むよ。八部江くんも、クラスで噂になっていることや、何か気になる話がないか友人に聞いてみてくれないかな? そういった情報は君のほうが調べやすいだろうからね」
「わ、分かりました」
「それじゃあ、今日は一度解散。明後日は二人とも学校は休みだろう? 昼頃に一度、この店に顔をだしてくれたまえ」
二日後の昼。ナツキが経営する喫茶店には約束通り、八部江・ジバシ・ナツキの三人の姿があった。
「全員揃ったね。早速だけれど調査の方はどうだい? 順調かな?」
ナツキは二人の首尾を尋ねるが、どうやら二人の成果は乏しいようだ。
「いえ、クラスメイトにも聞いてはみましたけれど、特には……」
「俺も、いくつか伝手を頼ってはみたのですが、流石にもう少し調査に時間がかかりそうです」
「そうか。二人とも引き続き調査を続けてくれたまえ」
「支部長は何か新しい情報は掴みましたか?」
「ああ、とびっきりのが分かったよ」
一方のナツキはこの二日間の捜査で有力な情報を掴んでいた。
「この市に現在潜伏している春日恭二だけれど、彼の目的が判明した。どうやら彼はレネゲイドウイルスに適格した人物を探して、ファルスハーツの人員確保を目論んでいるらしい」
レネゲイドウイルスに覚醒するものは決して多くはない。つまり春日恭二のターゲットは、自ずと絞られてくる。
「そしてこれがもっと重要な情報なのだけれどね、どうやら八部江くんや綾瀬ちゃんが巻き込まれたバス事故、あれはファルスハーツによって仕組まれた事故だった可能性が極めて高い」
バス横転事故、それはレネゲイドウイルスに適格しうる人物を絞り込むためにファルスハーツが謀ったものであると。
「つまり、だ。あのバス事故がファルスハーツによって仕組まれたモノだったとすれば、当然彼らもバス事故による被害は把握しているだろう。あの事故では多くの人間が小さくない怪我を負った」
言葉を切ったナツキは、八部江の目を見て告げる。
「――あの事故で無傷だったのは、君と綾瀬ちゃん。その二人だけだ」
「! 支部長それって」
「ああ、そうだよジバシ。彼らファルスハーツは間違いなく、二人をレネゲイド適格者だと判断しているだろう。そう遠くないうちに、奴らから何らかの干渉があるはずだ」
「綾瀬さんは……」
「もちろん、UGNは綾瀬真花への監視を強くする。表だってボディーガードをつけることなどは難しいが、それでも確実に何らかの形で彼女にファルスハーツからの干渉があるだろうからね」
UGNのこともレネゲイドのことも知らない一般人の綾瀬真花に護衛をつけることは難しい。悔しいが、よりいっそう目を光らせておく以上のことが出来ないのが現状だ。
「そうですか……」
「ジバシ、それに八部江くん。クラスメイトである君たちは綾瀬さんの側にいることも多いだろう。これからは少し、彼女の周りに気を配ってくれ」
「はい、支部長」
「分かりました、ナツキさん」
ナツキの言葉に頷く二人。
そしてナツキはその八部江にも警告をする。
「そして忘れてはいけないのは、君もその対象ということだ、八部江くん。君は戦う力を手に入れたかも知れないが、その力を決して過信してはいけない。君もまた、狙われる立場であることを忘れてはならないよ」
「……はい」
「ジバシ、君の負担は大きくなるが、八部江くんのこともお願いするね」
「分かりました」
ジバシは静かに頷く。
そして報告やこれからの方針が固まったところで、ナツキはポンと一つ手を叩いて立ち上がった。
「よし、今日はここまでにしておこう! お昼ご飯としようか。せっかくだから私が何か作ろう」
この店のマスターが腕まくりをし、厨房へ向かう。
「あ、じゃあ支部長。俺はナポリタンが食べたいです」
「はいはい。八部江くんもどうだい?」
「あ、お願いしまーす」
そうして、穏やかな昼の時間が始まった。




