三章 その一
噂が広まるのは早い。次の日学校に行くと、裏サイトの噂はクラス中に蔓延していた。
「うちの学校、裏サイトがあるんだってよ」「なんでも、盗みとか援交とかした奴を公開処刑しているんだって」「三年の先輩に、ショックで自殺未遂した人もいるらしいよ」「超やばいよね」
などなど、朝から大盛り上がりだった。
「これはすごいな」アンジュは心底感心したように声を上げた。「例のサイト、トップページのアクセス数が既に三十万を超えているぞ。在校生が千人だから、一人当たり三百回は見ていることになる」
「在校生だけが見ているとは限らないけどな」
俺は意識して冷たく言い放った。理由は無論、動揺を悟られないために。
たった一日でこれだけ話が広まるとは。予想を遥かに超えていた。しかも中には部長の自殺未遂まで知っている奴もいた。
これは早く、何とかしないと。そうしないと、どんどん噂が広まって、尾ひれがつく。そうなると、部長が学校に復帰しにくくなってしまう。それは絶対に、避けたかった。
「あまり思いつめるなよ、初」上目遣いで、アンジュは心配げにこちらを見てきた。「焦っても仕方ない。地道に調べるしかない」
「ああ」俺は短く返事をした。そう答えることしか、できなかった。