私たちの朝はここから始まる
「セレスト~~! 紅茶を入れて頂戴!」
「かしこまりました、セレスティアお嬢様。少々お待ちください」
晴天。
ここは、色とりどりの花に囲まれた、私の家の庭。
私の名は、秋桜 苅琉愛。英名、Celestia Cosmo Carmella
何故英名があるのかって?? そりゃぁ、社交の場で必要だから。しかも、私が住んでるところ、日本じゃないし。
「お嬢様、紅茶をお持ちしました。本日の紅茶は、4種のフルーツを使った紅茶でございます」
彼は、セレスト・シア・ジャージス。私専属の執事だ。
「有難う。どこで手に入れたの? こんな高級そうな紅茶」
「先ほど買い物に出た際に、出会った侯爵様から奪い……ンンッ。頂戴いたしました」
「何してんの」
それってただの盗みでは……? と思ったことはおいておいて、きっと美味しいって自慢してきたやつを侯爵の使用人たちからもらったのだろう。…………侯爵様に内緒で。
「……というか、さっき⁉ 今、朝の6時よ⁉」
「はい。いつもより早く目が覚めてしまったので。セレスティアお嬢様……苅琉愛に何かあげようと思ってな。ちょっくら町の出店通りに出て来たんだ。……苅琉愛、今日誕生日だろ?」
執事が急にため口に!と思ったそこのあなた。これが彼の素です。
私の執事……もとい、セレストは私の幼馴染。訳あって私の専属護衛兼執事をしているのだ。
「嬉しいんだけど……ため口で話すのは人がいないところって言ったはずよね? セレスト??」
「大丈夫。人払いしてあるから。ほかの使用人どころか、奥様方もここには来ないよ」
「そういうところ徹底してるわよね、貴方……」
「苅琉愛と幼馴染でいたいからさ。徹底しないわけないだろ?(笑)」
そういってセレストは笑った。
幼馴染。執事……
今はこのまま、幼馴染でいたいと思った。
矢先。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!?」
「「!?」」
悲鳴。
この声は……
「アンナね……」
「アンナですね」
アンナという名前の家のメイドの一人。
「虫でも出たのかしら? それにしても大きな声だったけど」
「……いや、たぶんあれは」
「「つまみ食いが料理長にバレた」」
声が重なる。
お互いに顔を見合わせて……
「ふふっっ……!」
「……ははっ!」
噴き出した。
「どうしてあんなにつまみ食いするのかしら。どうせ食べれるのに……まぁ、そこがアンナの可愛いところでもあるんだけど」
「……その言葉、そのままお返ししても?? お嬢様?」
「ナンノコトカシラ」
「昨日カップケーキを3つ人目を盗んで食べてた人が何を言っているのやら……」
「あーあーあー!!」
苅琉愛の声が庭に響き渡った。
風が吹く。2人の中にある悲しみの感情を盗んでいくように。
花々が揺れる。2人の仲の良さを感じ取ったかのように。
「ほんとに、手のかかる幼馴染だ」
「なんか言った?」
「ん-ん、何も。さて、お嬢様? そろそろお客様が来るお時間でございます。一応お着替えになられては?」
「あら、もうそんな時間? ……そうね、一応外着だし、着替えてきますか」
花びらが舞う。彼女たちの未来の無限の可能性を表すかのように。
立ち上がって、あたりを見渡して、やっぱり晴天は心地いいと改めて感じた苅琉愛は、自室へと歩き出した。
そんな彼女の背中を、セレストは少し心配そうな目で見つめつつ、ティーカップの片づけをするのであった。
今日も一日が、ハチャメチャな一日が、始まる。
一杯の紅茶と、笑いとともに。




