天然
「で、話は進んでんのかよ?」
俺は野バラ、ワル2人と麻雀の卓を囲んでいた。
野バラが案外協力的だったのと、3人じゃ麻雀できねぇからと、俺が空席に座すことになった。
「元部長が昨日ネタ持ってきたよ。 ほら」
野バラがポケットから几帳面に畳まれた用紙を俺に渡してくる。
それを受け取り、広げるとカッコ書きでボケ、ツッコミのセリフが交互に記されていた。
題目は「修学旅行」で、俺はそのネタを一読すると野バラに聞いた。
「……これ、面白ぇのか?」
「は? これから漫才やろーって奴がネタの善し悪しも分かんねーのかよ。 それポン」
俺が捨てた牌を拾う野バラ。
ちなみに、麻雀とかルールよく知らねーから適当に捨ててる。
今捨てたのは「東」の牌で、横のワルが毒づく。
「てめえ、やる気あんのかよ……」
知るか。
今捨てたのは結構いい牌ってことか?
もう一人のワルが野バラに聞く。
「そういえば、Mー1で優勝したミルクボーイ、結構テレビ出てますね」
(ミルクボーイ? ヤクルトレディの亜種か?)
野バラが相槌を打つ。
俺は気になって確認した。
「何だよ、それ」
「……は、ミルクボーイしらねーの?」
「……テレビとか見ねんだよ、昔っから」
「おまっ、マジか。 Mー1も見ねー、バラエティも見ねーで良くお笑いやりてーとか言えんな。 やっぱり天然かよ、お前」
……何か、腹立つな。
天然とか、俺はバリバリの養殖だっつの。
色々バカにされんのもシャクだから、俺はもう一度ネタを読み、自分なりの見解を述べることにした。
「あー、このネタだけどよ。 ツッコミのセリフがなげーよ。 何でやねん! の一言でいいじゃねぇか、なァ?」
「それのどこがおも……」
右側のワルが何か言おうとするのを野バラが止める。
「……分かった。 元部長呼びつけて直させとく。 私はこれから校長に部の名前変更と、お前が新しく部長になる旨を伝えに行ってくる」
立ち上がると同時に、野バラは牌を倒す。
「役満だ」