王子君と中学校3
給食の時は、二つの川の席を向かい合わせにくっつける。俺は、真ん中の川の一番前にいつも机をくつけて(いわゆるお誕生日席ってやつ)いるけど、今日は王子君がいるから、王子君の席が俺の向かいにある。
給食中も俺の向かいに座る王子君は、ずっと不機嫌で…。ご飯食べれば機嫌が直ると思ったのに…。なんで、今日の献立、主食がコッペパンなの…!
「…王子君、本当にごめんね!」
「……。」
「先生、王子君と何かあったんですか?」
「王子君、ずっとふてくされてるじゃん!」
「星野先生、王子君をいじめたんですか…?」
うわあ…。生徒たちにめっちゃ睨まれてる…。たしかに、俺が悪いんだけど…!王子君を預ける人を間違えたよ…南先生にあんな趣味があるなんて知らなかったし…。
「…星野先生は悪くないよ。」
王子君が話し始めた!しかも、俺のこと先生って呼んでくれた…!?今は、黒髪バージョンだからか…?
「王子君…!」
「…でも、写メを撮ろうとしたのは、ちょっと」
「わあああー!王子君、何の話かな!!」
「星野先生、今、王子君が何か言いかけましたけど…?写メって何のことですか?」
「ししし、知らないよ!!ああ、王子君、俺のプリンあげるね!」
「先生、何か怪しい…!」
「何か隠してません?」
「別に!…ほら、みんな早く食べて!お昼休みが短くなっちゃうよ!」
その時、俺の胸ポケットにあるスマホが鳴った…!これは、もしや…あの時の写メが…!
あれ?俺の胸ポケットから、スマホが消えた…!?
「ちょっと、加藤さん!先生のスマホ勝手にとっちゃだめでしょ!」
俺の隣に座っているクラス委員の加藤さんが俺のスマホを握りしめている!
「先生、王子君が写メが何とか言ってたけど、今来たメールと関係あるんですか?」
「ちちち、違うよ!加藤さん…!ほら、返して!」
「何もやましい事がないなら、メール開いて見てもいいですよね?」
「こらー、プライバシーの侵害だぞ!返しなさい!」
いつの間にか、俺は他の生徒達に身動きを封じられ…!?おい…!確かにこのクラスは、いじめとか仲間外れとかなくて、問題なしの優等生ぞろいの仲良し2年2組だけど、こんなところでその団結力を発揮すんな!!
加藤さんが、無慈悲に俺のスマホをいじる…!やめてー!!
「星野先生、メールは南先生からです。『今日撮ったやつです。とりあえず、一枚だけ。』だそうです。」
「報告しなくていいから…。みんな、本当に俺、怒るよ!」
「画像つきです。開きますね。」
「加藤さん、それだけは…やーめーてー!!」
画像を見た加藤さんの動きが止まる…!やばい…絶対、め●まさんのやつだろ…!?
―以下、星野洸の妄想劇場―
『…先生、この画像の子、王子君ですよね!!男の子に、こんな格好させて悦んでるなんて…あなた、本当に教職員なんですかー!!』
『うわぁ…先生、そういうご趣味があったんですか…?キモーい!!』
『俺たちのこともそういう目で見てたってことだろ…!俺、先生のこと見損なったぜ…!』
『星野先生が…超絶変態教師だったなんて…!!』
『アグ●スに言いつけてやるー!!』
星野洸、教師人生終了のお知らせ…。
ああ…終わった…何もかも…。さらば、俺の輝かしい未来…!!
―妄想劇場終了―
沈黙を破り、加藤さんが口を開いた…。
「…先生、この画像の子、王子君ですよね!わああ…!!可愛いー!そして、かっこいい!!」
へ…?可愛いはわかるけど…。かっこいい…?
「ほら、みんな見て見て、王子君、本当の王子様みたいだよ!」
加藤さんが俺のスマホを水●黄門の印籠のようにみんなに見せつける。スマホの画面に映し出されているのは、王子様のコスプレをした王子君だった…!デ●ズニー映画に出てくる王子様みたいな格好。うわあ…似合うな。似合いすぎる…!確かに、本当に王子様みたいだ…。なんか、すごく神々しい…!め●まさんコスプレのやつじゃなくて良かった…!!
「先生、これが王子君の不機嫌の理由ですか?」
「あ、ああ!実は、南先生が王子君を着せ替え人形みたいにいろんなコスプレさせたみたいなんだ…。」
「王子君、そうなの?」
「…うん。」
「なぁーんだ!初めから、そう言ってくれればよかったのに…!さては、先生この王子君の激レア写メを独り占めしたくて、黙ってたんですか?」
「…そうだよ!もう、ばれちゃ仕方ないな…。クラスのLINEに載せとくよ。」
クラス中から、大歓声が上がる…!
みんな、どんだけ王子君のことが気に入っちゃったんだよ…。