星野洸の考察
用具室の掃除をする俺。王子君は、ストレッチ用のマットの上で寝ている…。ウェーブのかかった黒髪に、今は閉じていて見えないけど、澄んだ青い瞳。どの角度から見ても整った可愛らしい顔!…見た目はどう見ても幼稚園児なんだよね。だけど…実は14歳!
とりあえず、これまでに王子君についてわかっていることをまとめると…。
1.お空の上に住んでいる。
2.みんなから『王子』と呼ばれていた。名前じゃなくて、身分らしい…。
3.一昨日の晩、体が縮んでいて、公園のベンチにいた。
4.黒髪の時は、知能が見た目のまんまになってしまう。
5.銀髪の時は、体力の消耗が激しい。
6.髪の色の変化は、感情の起伏も影響している。
7.お米が大好き。食べただけで、銘柄と産地を当ててしまう!
8.バ●スが使える。
9.空の上でもテレビが見れる。
10.王子君のことが大好きなキモい兄がいる…。
あのヤクザ、『さるお方』に頼まれて王子君を捕まえようとしてたね…。『さるお方』ってやぱっり、リンゴちゃんに出てくる『セカイを滅ぼす者』のことなのかな…?てか、作者、絶対リンゴちゃんの宣伝のためにこの作品を書き始めたよね!悪質なステマだよね!
なんで、その『さるお方』は、王子君を捕まえようとしてるんだろう…?今朝なんて3000万円で取引を持ちかけてきたからな…。たかが、子どもに3000万円て…。まあ、王子君はたしかに可愛いけど…。そこまでして、手に入れたいか?…ショタコンの変態さんなのかな?
あと、王子君、ヤクザの弾丸を知っていたよね!弾丸というか…薬莢?俺は、拾った弾丸をズボンのポケットから取り出して眺めた…。本物を見るのは、初めてだけど…普通の弾丸だよね…?
グラウンドからは、スターターピストルの音が響く。短距離がタイム測ってるんだね。俺は、掃除の手を止めて用具室から出て、グラウンドで練習する部員たちを見に行った。一応、副顧問だし…。
次に走るのは、我がクラスの加藤さん!クラウチングスタートの体制をとっている。ピストルの合図で加藤さんが走り出す。速いなぁ…。他の部員の子と差がめっちゃついてる!綺麗なフォームに風になびくポニーテール…かっこいい!!部員のほとんどが、加藤さんに釘づけになってる…。
「きゃああー!!加藤先輩かっこいいー!!」
「アナちゃんー!!結婚してー!!」
女の子たちから黄色い声援が…!同性からも、もてるんだね…。
加藤さんも王子君も14歳…。14歳って不思議な年だよね。体は、大人に近づいてはいるけど、なんだかアンバランスで…。心も同じで…。
昨日の『火●るの墓』の清●も14歳だけど…。あれ、大人になってから見ると叔母さんの気持ちを理解できるようになって、清●がもっとしっかりしてれば、二人とも死ななくて済んだとか言う人いるけど…。俺はそうは、思えない。俺がまだ考え方が子どもなだけかもしれないけど…。自分の教え子見てて思うけど、14歳ってまだまだ子どもだよ。いきなり母親亡くして、あんな幼い妹を一人で背負うことになったら誰だって、ああなると思うんだけど…。だいたい、あの叔母さん、もう少し二人の気持ち考えて言葉を選べよ…行動しろよ…!お母ちゃんの着物を米に変えるシーンとかもう…俺、あれ昨日も見て号泣しちゃったよ…王子君の前で…。俺が清●だって、あんな業突くババアのもとに可愛いせっちゃんを置いとけないから家を飛び出すよ!…結末が…ああなってしまっても…。
俺、あのババア本当に嫌いなんだよね…。まあ、清●を擁護するのは、俺の子どもの頃と境遇が少し似ているからかもしれないけど…。
俺の母さん、俺が5歳の時に病気で死んじゃって…。父さんは仕事人間で、俺の面倒みられないから、俺は遠い親戚に預けられたんだ…。その親戚の叔母さんがまんま、あのババアみたいだったから…。叔母さんは、なぜか俺のこと嫌っていて…まあ、俺だけおやつくれなかったり地味な嫌がらせを受けてたんだ…。一番つらかったのは、叔母さんは自分の子と、俺を比べて俺を蔑むようなことばかり言われたことかな…。
俺って駄目な人間だと完全に思い込んじゃって…。家にも居づらくなって…。中学上がる頃には、悪い連中とつるむようになって…。悪い事ばっかりして…。
14歳になると、俺はもう立派な不良になっていて…。ある時、かなりやばいことをしでかしてしまってあやうく少年院に送られそうになったんだけど…その時の俺の担任の先生が、俺のために…こんな馬鹿な不良生徒のためにいろんな人に頭下げてくれて…なんとか少年院にいかなくて済んだんだけど…。それから、その先生は、何かと俺の面倒をみてくれて…俺が悪いことをすると本気で叱ってくれて…。勉強もその先生が一から教えてくれて、テストで良い点とると、褒めてくれて…。俺の良いところをたくさん見つけてくれて…たくさん褒めてくれて…俺、その先生のおかげで自分に自信が持てるようになったんだ。
陸上もその先生がたまたま顧問をしていて、先生にもっと褒められたいから始めたんだっけ…。中学の教師になったのも、その先生に憧れて…先生みたいな先生になりたくて…。
「星野先生、練習終わりましたー。先生?」
「…ああ!加藤さん、お疲れ様。じゃあ、グラウンド整備して、片付け終わったら解散でいいよ。」
「はーい。先生、そういえば王子君は、どこにいますか?このあと、みんなで遊ぼうと思って!」
「ああ、王子君なら用具室のマットの上で寝てるけど?」
「え…?用具室には誰もいませんでしたよ?」
「えええええー!?」




