表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/2

第二章 日本家屋

 囲炉裏に畳に襖に障子。

 レオンの意識が回復したた時、木製の天井が見えた。

 いつもベットで寝ているレオンにとって直接床に敷かれた布団に寝かされるのは初めての経験。でも寝心地はとってもいい。

「何かいい匂いがする」

 畳を見るのも初めて、い草の匂いに癒される。服も浴衣に着替えさせられていた。

 寝たままの体勢で部屋を見回してみれば、見たことの無いものばかり。

 障子に襖に戸は木製、窓はガラスしか見たことのないレオンにとって紙で出来ている障子に襖は斬新。

 床の間に囲炉裏。囲炉裏の上に吊り下げられている鍋だけは辛うじて見たことがある。

 枕元にトラジマの猫がいて、レオンが起きたのを見て走り去っていく。尻尾が三本ある猫も初めて見た。

 器用に襖を開けると、部屋を出て行き、しばらくして助けてくれた不思議な少年を連れてきた。

「目が覚めたみたいやな」

 少年が布団の横に座る。

 部屋の中なので帽子とサングラスは無し、ロングコートも着ていない。

「女神様」

 思わず呟いてしまった、それほどに綺麗な顔をしている。以前、レオンは聞いたことがあった。天界には死んだ者を転生させてくれる女神がいて、キスをして強力な能力を授けてくれると。

 キスを思い浮かべて、顔が赤らむお年頃。

「僕は男やがな」

 アメジスト色の瞳で笑う。

「その顔で男なんて、反則だよ」

 ついつい呟いてしまう。

「そう言うあんたも可愛い顔してるやないか」

「それ、結構気にしているんです」

 男なのに可愛いと言われるのは嬉しいよりも複雑な気持ちが先に来る。

「どのみち、生まれ持った顔や」

「そうですね」

 三本尻尾の猫は不思議な少年の膝の上に香箱座り。

「僕は麻生仁夜(あそう じんや)。あんたは?」

 不思議な少年、仁夜が名乗って聞いてきたので、

「オレはレオン」

 レオンも名乗った。

「この子はみーこ、この家の主だよ」

 仁夜に撫でられ、嬉しそうにゴロゴロ喉を鳴らす。

「おーい、出来たぞ」

 とてとてと日本家屋の奥から、アニメの絵柄の傘を差していた幼い少女が湯気の立つマグカップを乗せたお盆を持ってきた。

 キャスケットを脱いだ幼い少女の髪はきつね色でピンと尖った耳が生えている。

「わらわはタマモじゃ」

 幼い少女、タマモは名乗る。

「起きれるかの?」

「ハイ」

 レオンが布団から半身を起こす。

「どうぞ」

 お盆の上にあった湯気の立つマグカップを渡される。マグカップにはフクロウのイラストが描かれている。

「ゆっくり、飲むのじゃぞ」

 マグカップの中身はすりおろしたリンゴの温かいジュース。

「ありがとう」

 言われた通りゆっくり飲むと、すきっ腹を甘いリンゴのジュースが優しく温めてくれ、衰弱しきった身体がじわじわと回復していくのを感じる。

 一息吐き、

「あの、タマモさんは獣人ですか?」

 尋ねてみた。レオンにしてみれば頭に獣の耳が生えている種族と言えば獣人ぐらいである。

「わらわは崇高なる天狐じゃぞ、獣人なぞと一緒にするではない」

 天狐とは聞いたことはない種族、獣人とは違うのだろうかと戸惑っていたら、

「別にいいだろ、似たようなもんだしよ」

 長身の赤毛の女性がやって来た。着ているのは青いTシャツ。雨合羽を脱いだ頭には二本の角が生えている。

「俺様はイバラギだ」

 ドカッとレオンの横に座る。

「オーガ?」

 頭には二本の角が生えていた種族と言えばオーガ。冒険中、出会って協力したことや対立・敵対したこともあるる。ただレオンの知っているオーガに比べてスマートな体型。

「俺様は鬼だ。まぁ、今じゃオーガは鬼と訳されるがな」

 タマモと違って大して気にしていない。

 意図することなく、肘から先がない左手に目が行ってしまう。

「ああこれか、若気の至りって奴だ。調子に乗って橋の上で絡んだ相手がやたらと強くてな、ぶった斬られちまった。それで俺様はほうぼうのていで逃げたしたんだ」

 まるで楽しい思い出のように、肘から先がない左手を振りながら話す。

「まぁ、腕一本で自分を見つめ直すことが出来たんだ、安いもんだよ」

「あなたが逃げ出す相手なんて……」

 役立たずと罵られてもレオンは冒険者だったので、イバラギを見れば彼女が強い戦士なのは解る。そんなイバラギの左手を斬り落とし、敗走させた相手とはどれ程の手練れだろうか。

 そう思っていたら、またイバラギの左手に視線が行っていることに気が付き、

「……すいません」

 本人が気にしていなくても、レオン自身が悪かったと思い謝罪。

「お前を見つけた時は薄汚れいたのに、洗ったらこんなに可愛かったなんてな」

 イバラギが強引に話題を変えた。

「お前のことは私が洗ってやったんだぜ、隅々まで」

 微笑んだイバラギの犬歯は尖っていて、はっきり言って牙。

 浴衣に着替えていることと汚れていた身体が奇麗になっていること。それは誰かがレオンの服を脱がせ、洗ったことを意味している。

 その誰かがイバラギであり、女性である。

 その事を自覚したレオンの顔が赤くなる。

「俺様はとても力強い。右手一つでお前を洗う事なんておちゃのこさいさい。全然、不自由してないんだ」

 だから気にするなと笑い飛ばす。


 リンゴのジュースを飲み終えたレオン。空になったフクロウのイラストが描かれカップをタマモは受け取る。

「今はゆっくり休むとええ、詳しい話は回復してからや」

 仁夜の言葉に甘えることにしたレオン、布団に横たわり目を閉じる。






 茨木童子が渡辺綱と戦ったのが一条戻橋と言う話以外に、羅生門と言う話もあったよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ