第一章 お腹 空いた
新作の連載になります。
「腹、減った」
弱々しい声がレオンの口から漏れ出す。
「お腹、空いたよ……」
もう何日も食事を摂っていない、少年の年頃は沢山栄養が必要なのに。
「焼き魚が食べたい……」
冒険中に川で捕まえ、焚火で焼いて食べた魚。思い出しただけで腹が鳴る。
公園で子供が水を飲んでいるのを真似して、水道で水を飲んで飢えをしのいできた。
水だけでは一時しのぎにしかならない。ふらふらと、足元がふらつく。
アッシュゴールドの髪も着ている白茶色の服も薄汚れ、見る影もなくくすんでしまっている。
元いた世界で裏切られ、モンスターに殺されかけ、気づいたらこの世界にいた。
金属製の高い建物が立ち並び、馬も着いていないのに走る鉄の馬車。全てがレオンが見るもの聞くもの触れるものが初めてのものばかり。
レオンの言葉が通じない、持っている皮袋の中に中には楕円銅貨二枚と穴銅貨一枚と銅貨一枚はが入っいるがここでは使えない。紙のお金なんて初めて見た。
「ここはオレが育った国じゃない、生まれ世界でもない」
否が応でも認めざる得ない、ここはレオンの居た世界よりもずっと文明の進んだ世界だと。
レオンの容姿と服装はこの国では目立つらしく、ジロジロと見られるのが気になってしまい、人目を避けるようにしてきた。
目の前が霞む、目に入ったベンチに力なく座り込む。
手の平に意識を集中すると、小石が現れた。そこらへんに落ちている石となんだ変わらない石、何の価値もない、ただの小石。
「オレは役立たずだ……」
投げ捨てた小石がコロンコロンと、舗装された道を転がって行く。
レオンの職業は創生士、創生士以外適正職無し。
あらゆる物を生み出すことが出来る創生士。適性者が少なく、歴代の適合者は碌な物しか作ることが出来なかったことと、役に立つ錬金術士がいたことで創生士は低級職と蔑まされる。
散々、家族やパーティメンバーたちから役立たずと罵られ、ついには遭遇した強力なモンスターの囮にされてしまった。
ぽっんぽっんと雨が降り出し、やがて本降りとなって容赦なくレオンの身体を打つ。
「このまま、オレは死ぬのかな……」
仲間と思っていた相手に裏切られ、こんなどことも解らない世界、見知らぬ国、レオンのことを誰も知らない世界で死ぬのか、そう思ったら悲しくて切ない。
「――」
黒い傘を差した一人の少年が話しかけてきた。長い烏の濡れ羽色の髪を三つ編みにしていおり、漆黒の服を着て上に純白ロングコートを羽織っている。
黒い帽子とサングラスで顔を隠しているのでよく見えない。
話しかけてくるがレオンには言葉が解らない。
少年の後ろには長身で赤毛のショートに青い雨合羽を着た女性。左手の肘から先無く、袖がたれている。
もう一人はアニメの絵柄の入った傘を差したキャスケットを被った幼い少女。白いシアートップスに真ん中にキツネのイラストが入った赤いサロペット、ピンク色の長靴を履いている。
何かに気が付いた少年は長身で赤毛の女性に黒い傘を持ってもらい、レオンの目の前でパーンと柏手を一回打つ。
「あんた、異世界から来たんやな。これで言葉が解るようになったやろ」
黒い傘を返してもらう。
レオンは驚く、この世界に来て初めて言葉が理解できた。嬉しくて立ち上がろうとしたが、ふらついて倒れそうになったところを長身で赤毛の女性に抱きとめられる。
「相当、弱っているみたいやな。イバラギ、“迷い家”に連れて行くで」
「了解、仁夜」
赤毛の長身は女性は、ひょいとレオンを掴むと荷物のように肩に担いだ。
不思議な少年はスマホを取り出し、
「みーこ、今から客を連れて行くさかい。風呂と布団の準備しといてや」
ここで限界が来たレオンの意識が途絶えた。
楕円銅貨は日本円にして一枚百円、穴銅貨は一枚五百円、銅貨は一枚千円になります。




