表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『コミック最新巻、7月8日発売!』落ちこぼれ退魔師は異世界帰りで最強となる  作者: 秀是
第十三章 京極一族編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

255/259

第十四話 火種


 潤からの爆弾発言に真夜が素っ頓狂な声を上げてしまう。真夜からすれば碌でもない提案なだけに、この反応も無理は無いだろ。


「いや、お前、何言ってるんだ?」

「そ、そうだよ、潤! それに私の身体でもあるだろ!?」

「お家再興ならば次世代は必要じゃろ? それに強い男を求めるのは、女として自然の事じゃ。雫とて興味はあるじゃろ。これほどの男はまず他におらんぞ?」

「雫と記憶を共有してるなら、俺に婚約者が二人いることはわかっているだろが。そんな真似が出来るか」

「二人おるなら、三人目というのもありじゃろ? 英雄色を好むとも言うしのう。我の生きていた時代も強い男は色々な女子おなごとまぐわっておったのじゃ」


 当時は子供の死亡率も高かったし、一般人の平均寿命も短かった。そのため子供は多く作っていたし、男は幾人もの女と子供をもうけた。


 特に退魔師は命の危険が多い職業であり、高位の退魔師は自分の優秀な血を絶やさぬように、当時は一般人よりも子供を多く作る傾向にあった。


 そんな中、潤はそれなりに長生きしたが、自分が生きていた時代でもお目にかかれないような、強大な力を持つ退魔師を前にどうしても胸の高まりが抑えきれなかった。一族繁栄、お家のために子供は作ったが、こんな感情は初めてだった。


「まあ打算もあるがのう。お主ほどの力の持ち主と我あるいは雫の子であるのならば、間違いなく強い退魔師の素養を持つ子が生まれるはずじゃ。それに現在最強と言われている星守一族との仲をより一層強く出来るし、お主との縁も深まる。ああ、もちろん認知しろとは言わぬし、父親不明としておくので安心するのじゃ」

「あんたが生きていた時代の価値観を、今の時代の価値観に当てはめるなよ。俺にそんな気は欠片もない。それにそれは生まれてくる子供が可哀想だろうが。誠実さの欠片もない事を出来るかよ」


 認知しないのと父親不在では星守一族との関係の強化も出来ないだろうが、と真夜は心の中で突っ込むが潤としてはそれは建前のようだ。


「お主の気配からして未経験の坊やでもあるまいに。どうせやることはやっておるじゃろ。それと価値観を言うなら、この時代で女子を二人も囲って誠実も何もないじゃろ。二人が三人になっても、そう変わらんと思うんじゃが」


 ぐはっと、雫の一言に内心で真夜は大ダメージを受けた。二人には納得してもらっているし、優秀な退魔師は一夫多妻制が認められているし、真夜周辺にはまあ受け入れられているのであまり考えないようにしていたが、こうしてはっきりと指摘されると精神的にくるものがあった。以前に真昼に二股と言われた時以上のダメージだ。


 心なしかルフの視線もいつもより厳しいような気がする。じぃーと真夜の方を見て、どうするつもりなのかと無言の圧力をかけてきているようだった。


「それを指摘されたら反論はできねえが、それでも俺は二人以外と関係を持つつもりはねえよ。他を当たってくれ。この時代にも俺以外にも優秀な退魔師はそれなりにいるからよ」


 あるいは彰の名前を出してもいいかもしれない。真昼は駄目だ。星守にこんな火種を持ちこむわけにはいかない。


「残念じゃのう。割と本気じゃったのに」

「勘弁してくれ」


 潤の言葉に本気で真夜は辟易した。彼女的には残念だが、このあたりが引き際だとは弁えているようだ。強引に行っても真夜から悪感情を向けられては損だと判断したのは、間違いなく当主としての経験もあるだろう。


「まあ我の身体に興味が出たら、いつでも言うのじゃ。我はいつでも待っておるからのう」


 そう言ってポーズを取る潤。確かに雫は発育も良い。渚や朱音に無い身体的魅力は確かにあるだろう。


 ゾワリとなぜか不気味な悪寒が真夜を襲うと同時に、脳裏に朱音と渚がハイライトの消えた目でふふふふと笑う光景が浮かびゾクゾクと身体が震えた。


「どうしたのじゃ?」


 思わず後ろを振り返ってしまった真夜に潤が訝しげに問う。


「い、いや、何でもねえ。と、とにかく俺はあんたと肉体関係を持つ気はこれからも絶対に無いからな。あと下手に誘惑するなら、俺はあんたらには一切協力しない」


 念のため釘を刺しておく。無いだろうが、もし朱音や渚のいる前で迫られでもしたら……、考えるだけでも恐ろしい。

「あいわかった! 我としてはお主に協力してもらう利点は大きいので、機嫌を損ねないように気をつけるとしよう」

「そうしてくれ。で、この試練の結果はどうなんだ? 確かに雫もそれなりの実力があることもわかったし、将来的には当主に相応しいだけの強さは得るだろうが、現状じゃその三体に勝てない。あんたが従えたとしても、色々と問題は出てくると思うぞ」


 三体の式神達も潤がいるのであれば雫にも従うだろう。しかし対外的な対応は難しい問題も残る。実力が伴っていないのに、超級三体を従わせているのはおかしいのではないかと疑念を抱かれる可能性がある。


 潤の存在についても伝え方によっては大きな火種になりかねない。


「それはすでに話はついておるのじゃ。雫には一応今回の試練に挑戦させたが、まだまだ力不足なのは我も理解しておる。我にしてもかつての全盛期にはまだ届かぬゆえ精進は続けるが、取り敢えずは我の正体は伏せて、ただの別人格ということにして、表に出ようと思ってる」


 取り敢えず、潤の正体は隠して最近出来た雫の別人格として堂々と表に出るとのことだ。確かに別の霊器を使う理由を説明するにはそれしかない。自分から明かしさえしなければ、京極家初代当主の生まれ変わりなど、誰もわかりようが無い。


「式神達はこのまま現時点では弱体化しているとして、それを従えたとしておく。まあ我に掛かれば。こやつらの力を抑えることは造作も無いからのう。もっともそれでは無条件での当主にはなれぬじゃろうが、他の者よりも一歩先に進むことは出来るのじゃ」


 超級三体と比べ、弱体化したとして特級程度ならば確かに見劣りするが、それでもかなりの戦力なのは間違いない。実際、特級三体ならば雫ならばギリギリ、潤ならば余裕で倒すことが出来るであろう。


 本人の実力と特級の式神三体。新たな京極家の柱としてならば、十分に次期当主候補の筆頭になれるだろう。


 真夜の疑問に対して、潤は今後の展望を説明する。


「一族を導くには、強い指導者が必要じゃ。強大な三体の式神を従えるのは、内外に向けて雫の事を誇示するには打って付けじゃ。それと所詮我は過去の人間。雫を押しのけ、我が主導権を握ろうとは思わぬ」


 今の雫でも特級の三体の式神がいれば他家の次期当主にそこまで大きく見劣りしない。それどころか上回る可能性もある。


 潤としては雫が主人格であり、自分はすでに過去の存在であり、たまたまこの時代に意識が覚醒した。


 元々同一人物だが、最初からこの時代で構築された雫を押しのけてまで、主人格になるつもりはないそうだ。


「無論、我も現代を楽しませてもらってはおるがのう。我の時代に無かった色々な面白い物も多いし、何よりもお主のような男もいるとわかった。京極家の再建をしながら、雫と共に今世を謳歌するつもりじゃ」

「なるほどな。確かに現実的にそれが一番か」

「うむ。あと我としてはお主やお父上殿の後押しがあれば、雫が次期当主になるのも難しくはないと思っておるが、お父上殿はともかくお主の後押しは最終手段じゃな」


 重鎮の右京と京極家に多大な恩を与えた真夜が後押しすれば、確かに雫が有利だろう。


「それは俺や星守による、京極に対する過度な内政干渉になる。さすがにそれは勢力バランス的に出来ない相談だな」


 今でも京極家は星守に対して頭が上がらない。そこへ真夜が雫の件でしゃしゃり出ていけば、周囲は完全に京極家は星守の風下に立ったと思われるだろうし、雫は星守家の傀儡当主だと印象づけてしまう。


「そんな事しなくても実力で黙らせればいいだろ。政はあんたも経験があるだろうし」

「まっ、確かに後々の事を考えるとその方がよいか」


 時間はかかるが、星守が極力介入しないで京極家を再建していく方が無難であろう。


「今日の所はこやつらを連れて戻って、雫の存在感を高める。当主やあの三人も実績があれば大きな文句も言えんじゃろ」

「まあ特級三体でも十分だろうしな。あの三人じゃ一体にも手こずるはずだ。あの三人を上手く説得して協力とまではいかなくても、敵対さえしなけりゃ当主にはなれるだろうよ」


 真夜の見立てでは清彦は雫を認めるだろうと思っている。他の六家が才能豊かな実力ある若手が当主や次期当主になろうとしている現状、京極を立て直すにはどうしても圧倒的な実力の当主が欲しいところだ。


 雫も右京の娘なら血筋は確かだし、京極家も老害などが大勢逝去しているためあの三人さえ説得できれば、そこまで他で大もめする事も無いだろう。


「うむ。まあくれぐれも我の正体は他言無用で頼むのじゃ。お主は信用できると思う故、そこまで心配はしておらんが」

「俺もこれ以上面倒ごとになりそうな話題は勘弁して欲しいからな」

「そうじゃな。さて、ではそろそろ我も式神達の処理をして引っ込むとしよう。我が表に出続けると、身体の消耗が雫の時よりも激しいのじゃ」


 主人格は雫であるため、潤は表に出て霊術を使い続けると雫以上に肉体への負担が大きいらしい。特に今は三体の式神達との戦いの後なので、消耗はかなりのものらしい。


「わかった。護衛は引き続きするから心配はするな。右京さんの所まで無事に送り届ける」

「頼んだのじゃ。一応我もまだ表に出ることは可能だからのう。ではお前達、しばらくは窮屈であろうが我慢してくれなのじゃ」


 そう言うと潤は三体の式神達に処理を施すと、彼らは力を封印した状態で霊符に姿を変え、それを確認した後彼女は満足そうに頷くと雫と人格を交代した。


「ふぅっ、疲れた。けど残念だったな。私にはまだまだ無理だったみたいだ。あれだけ大口叩いていて情けないな」


 人格が完全に雫に戻ったようで、潤の気配が消え去った。本人も悔しさと無念さがあるようで、辛そうな顔をしている。ただそれは精神的なものだけで無く、肉体的なものもあるようで心身共に消耗が激しいようで顔色もかなり悪い。


「大丈夫か?」

「あ、ああ。うん、なんとかね。正直少し辛いけど、これくらいでへこたれていたら、京極家当主になんて慣れないさ」


 雫はやせ我慢をするかのように言い切る。


(根性はあるな。まだ未熟だが、朱音や渚よりは強いのは間違いないし、潤もいるからこりゃ将来有望だな)


 潤のインパクトもあったが、真夜は雫のことも正当に評価していた。同年代の中どころか、退魔師界全体を見てもすでに雫は上澄みの方にいる。


 あとはそれをどう伸ばすか。京極という庭で、彼女が潰れずに成長できれば初代の生まれ変わりということもあり、歴代でも有数の当主になれるだろう。


(そうなりゃ、兄貴や雷坂にも良い刺激になるだろうな。その分、当主としては大変だろうけど)


 真昼はともかく、彰は強敵の出現にかなり歓喜するだろう。彰が男だから女だからと気にするか気にしないかはわからないが。


 ただ一族の当主としてみれば、新たな強敵の出現に喜んでばかりもいられない現状だろうが、上手く付き合って行ければこれほど頼もしい事もないだろう。


「まっ、潤がとはいえ一応の目的は達成したから戻るとするか。その悔しさをバネに成長すれば問題ないだろうしな」

「ふふっ、そうだね。真夜は本当に良いことを言うね。私も潤じゃないけど、真夜に恋人がいなければ、猛アタックしていただろうね。君が隣にいてくれたら、凄く頼もしかっただろうに、もの凄く残念だよ」

「……お前も不穏な事を言うなよ」


 割と本気で残念がっている雫に真夜はげんなりしたように呟く。まだ顕現してるルフも再び何とも言えない無言の視線と圧を真夜にかけてくる。ルフには悪いが危険も無くなったし、これ以上彼女の視線に耐えられないため、そろそろ戻ってもらうことにした。


 不満があるように見えたルフだが、真夜の要望を聞き素直に霊符へと姿を変えた。


「体力と霊力も少し回復させるぞ。その状態じゃ、あの道を帰るのも大変だろ」


 真夜は霊符を取り出すと、雫を最低限回復させる。敵ではないが、完全に身内というわけではないので手の内をできる限り晒さないようにする。


 帰りもあの結界が張り巡らされた道を帰らなければならないのなら、多少は体力や霊力がないと辛いだろう。


「こんな事も出来るのか、君は。確かに昨日の治癒を見れば、これくらい出来ても不思議じゃないけど」

「手札は多い方が良いからな。けど俺だって何でも出来るわけじゃねえぞ」


 遠距離攻撃手段がないとか、属性の霊術が使えないとか、出来ないことも多いので万能とはほど遠いと真夜は自認している。


「それでもさ。それと今日はありがとう。真夜のおかげで、最低限の目的は達成できた」

「気にするな。俺も仕事で請け負った事だからな」


 二人は来た道を戻る。


「出口は入った所に繋がるのか?」

「ううん。出口はまた違うところなんだ。というより、どこに繋がるかはわからないんだ」


 雫、と言うか潤曰く、どこに繋がるかは時刻や季節により変化するそうだ。同じ所だとこの中の霊力に淀みが出来たり、外に繋がる場所に何かしらの影響が生まれる可能性があるからだそうだ。


「比叡山のどこからしいけど、そこまで変な所に出ないらしいから、心配しないでいいそうだよ」

「俺は別にどこに出ても構わねえが、疲弊している雫は場所によってはキツいだろ」

「私の心配をしてくれているのか。真夜は優しいな。けど大丈夫だ。これ以上、君の迷惑にならないようにするから」


 雫はそう言いながら、真夜の後ろについて階段を降りていく。来た時は雫が先導したが、今度は出口の安全確保の為に真夜が前を進む形だ。


 二人は他愛も無い会話を続けながら、階段を降りていくと出口が見えてきた。


 だが出口付近にさしかかった時、雫の視界が歪むと身体がぐらりと揺れた。


 体力霊力は回復させてもらったが、潤が表に出ていた時間が長かったのと、思った以上に精神的に疲労していた事で結界から受けるダメージが思った以上に大きかったようで、出口に近づき気が緩んでしまったため、疲労が出てしまったようだ。身体が傾いたことで足がもつれてしまう。


「うっ、あっ!?」

「おい!」


 真夜は雫の異変を察しそのまま彼女を抱き留めると、この場で留まるのは危険と判断し、彼女を抱きかかえる形で出口へと跳躍した。


「えっ?」

「真夜?」


 真夜は聞き慣れた二人の声を聞いたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>あの三人を上手く説得して強力とまではいかなくても 誤字 協力かと
ルフが圧を掛けてきてるの好きすぎるw なるほど出口が比叡山の中でランダムだから余計に護衛が必要だったのね 子供欲しい宣言を知った朱音と渚が対抗意識燃やして欲しい気持ちもある とか思ってたら修羅場き…
そんな…真夜君には二人の彼女の他にも赤司さんやアキラ君、真昼君もいるのに!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ