気持ちの自覚
何時もお読み下さり有難うございます!
まだ、6月の設定ですので、季節の花は6月のものです。
夏椿は6月から7月
芍薬の花は5月から6月です。
何処に行くのかとヒヤヒヤした麗は財前に抱え込まれながら目を閉じていた。
付き人が格子柄の障子を開ける音で目を開ける。
畳みが敷いてある部屋だった。今度は大広間の様な場所でとても広い部屋に来た。
100人は余裕で入りそう。天井の飾りは光や風を通す為、鳥や花を掘った繊細な細工の欄間が設置されており、
飾り棚やら、高そうな掛け軸や焼き物、壁掛け一輪挿しには芍薬の花が可憐に一輪飾ってあった。
その全体を灯篭の様な温かい光を放つ照明が所々に置かれていて部屋を明るく照らしていた。
私が豪華な部屋の内装に驚いていると、いつの間にか座布団の上に降ろされていた。
目の前のローテブルには、ステーキやら魚の煮付けやら和食と洋食が混在した豪華な、食事が乗せられていた。美味しそう。目の前の食事に見入っていると、
「食べろ。」財前は命令してくる。
麗は戸惑った表情をしてしまう。
冷淡なヴァンパイヤが人間を気遣うなんて、驚いてしまう。
「人間は1日3食食事をしなければならないと聞く。本当に人間はつくづく難儀なものだな。」
だけど、敵の出した料理を食べるべきか悩む。
悩んだ末にお腹も空いていて、図太かった私は目の前の豪華な料理を頂く事に決めた。
だけど、背中の傷が痛くて中々身体を支えれない。
「あの、食べてる間私の肩を持って支えてくれませんか?」
「ふん。人間は脆いな。」と相変わらず冷たい口調。相手は敵。支えて持ってくれる訳ないかと思った。
その瞬間、財前は座っている私の所で座って肩を支えてくれるのだった。
驚いた。対して期待してた訳ではないから尚更、料理を提供してくれるだけでも意外だったのに、言う通りに肩を支えてくれるのは、意外と優しいのかな?それとも本物の攻略対象だから?
何はともあれ、体が支えられた事によって、私は料理を食べる事ができた。
美味しい!
口に入れた瞬間、お肉は蕩けてなくなり、野菜サラダはシャキッと新鮮でその上にレモン汁とオレンジ、塩胡椒などでできた爽やかなドレッシングが掛けられていた。アサリの良い出汁が効いた味噌も辛さ加減が丁度良かった。
何これ美味しい!お箸が止まらない!
現金な私はすっかり気を緩めて目の前のご馳走に目を輝かしてしまう。その様子をじっと興味深げに眺めている財前。
「美味しい!」とあまりの料理の美味しさについニッコリ笑顔になる。
財前は一瞬驚いた顔をしたが無表情に戻り、麗をじっと見ていた。
「財前は気が利く良い人ですね!」又も、ニッコリ笑って財前の方を見て言う。いてて、財前の方に体を捻ると背中に痛みが走る。
そして次いでに、この豪ジャスなお料理は1人で食べ切れず、財前にも進めてみる。
「財前も食べたらどうですか?」
それに、この頬っぺたが落ちそうになる程の料理を食べて美味しさを共有してほしくて。
「我は人間の食べ物は食した事がない。食そうとも思わぬ。」こんなに美味しいものを食べないなんて勿体ない!シェアハウスの皆んなはヴァンパイヤだけど美味しそうに食べているのに。
「はい!」とお節介かとは思いつつ、箸を替えて味付けのあるステーキを財前の口に放り込んでみた。
意表を付かれた表情をし、顔を顰めた財前だが、無言のままゆっくりと咀嚼し、そのままごくんと飲み込んだ。
無言だ。やはり美味しくなかったのか?
「悪くないな。だが、我は...」おお!悪くない発言が出ました!
と思っていると、財前の艶やかな髪が私の肩に垂れてきて、私の首筋にヌルついた物が伝う。
財前は麗の首を舐めていた。
「我はこっちが良い。」そう低く耳元で囁くと首にプツリと牙を立てた。鬼畜だ。前言撤回!優しくなんかない。貧血の私は更に貧血になってしまった。
文字通りお互いに食事を済ませると又、先程の様に背中と膝裏に手を回され抱え込まれ、先程の部屋に戻される。
財前に血を摂取された私はふらふらだった。布団まで降ろされ、財前も一緒に布団の中に入る。
えぇぇ!?
貧血でぼうっとしていた私の頭が一気に覚醒する。
「な、どうしてあなたも一緒なんですか!出て行って下さい!」必死に財前を押し出すもののビクともしない。
「いいのか?ここは過激派の住みかだが。俺が居ないとお前はいっぺんに同志の食事になるだろう。れな。」と楽しそうに笑い私の偽名を呼ぶ財前。
「け、け、結婚前に男の人とお、おな同じ布団なんて駄目です!」と吃り、震えながら言う。
結婚前に男の人と同じ布団なんてふしだらな!
シェアハウスの人達は私を男だと思ってたから、どうにか譲ったけど、今は私が女だとバレてるし駄目だ!
「お前は、面白いな。自身の貞操を気にしているのか?命よりも純潔が失われる事に対して怖がるとは変わっているな。では、お前を我の妻にすれば文句あるまいな?」
「そりゃそうですよ!そう妻...えっ?妻??
」麗は目が零れ落ちそうな程見開く。いきなり話が急展開し過ぎてマセンカ?
「そう。妻」と言うと真横にいた財前が急に居なくなる。麗の視界が暗く照らされ、麗の目の前に現れる。財前の艶やかな長い黒髪が麗の肩に流れ落ちて、2人の黒髪が重なる。
相変わらず人形の様に何を考えているか分からない表情を麗の薄紅色の瞳に映し出していた。
だけど、先程には気付かなかった色気を妙に孕んでいる。
財前は麗の上に覆い被さるように、のし掛かっていた。
褥に着いた両膝で麗の足を挟む。
財前は麗の顎を先程までの狂気じみた雰囲気とは違い、優しい手つきで掬い上げじっと赤い瞳で見つめる。
ただでさえ、貧血状態なのに、ヴァンパイヤの力が強すぎてピクリとも麗は顎も足も動かす事ができず、ギョッとする。
「ど、どうして妻?会って間も無い私を?それに私、まだ高校生です!」
「お前の血は殺すには惜しいと思ったからだ。
ああ。人間は歳を気にするな。我の世界で歳は関係ない。それにお前は我の半分も生きないだろう?人間は寿命が、短いからな。だから、問題はないぞ?」
「問題だらけです。話が急で...」
フッと笑ったかと思うと「今更、恥ずかしがる事はない。先刻もお前の裸体は見ているから安心しろ。」
裸を見た事を今認めた!キッと麗は睨みつける。
財前の手は麗の顎から、肩に移す。自由に動く方の財前の筋張った手は麗の着物の襟元に沿って手を滑らせていき胸元、帯部分にきて帯締め(細い紐の様な物)おたいこ(帯)ゆっくり解いていく。
な、何、何なの?私の貞操の危機?安心なんてできないんだけど!ゆっくりと解かれる帯が余計に艶めかしく官能的に映る。
ドキドキと心拍数があがる。だけど、このヴァンパイヤに靡く事は無い。
私は、自覚してしまった。自分の気持ちに。
誰に自分の気持ちが傾いているのかちゃんと自覚してしまったのだ。
本日も最後までお読み下さり有難うございます!




