第四話 隠秘
次の日、僕は五十嵐たちに呼び出された。
「おいプー太郎、昨日警備員に見つからずに帰れたか?」
夏休みなのにこいつらに呼び出されて少しイライラしていた。だから適当に返事した。
「多分ね」
この態度に五十嵐は少しムッとしたが、特に何かを言うことはなかった。
「あー、良かったぜ。プー太郎が警備員に見つかってたら俺らも危ないしな」
安堵したように斉藤が笑っている。
校則として、夜の学校への侵入は禁止されている。もし忍び込んだことがバレると自宅謹慎は免れないだろう。
今は夏休みだ。それなのに自宅謹慎になると、せっかくの休みが台無しだ。
しかし、僕の頭の中は違った。
警備員とかそんなものどうでも良かった。
あれから時間が経ったというのに、今も頭の中は彼女のことでいっぱいだった。昨日の夜、校舎の中で出会った女の子のことで。
あの場所で何をしていたのか何てどうでもいい。また今夜も行けば会えるのかな。
そんなことを考えていると五十嵐が怪訝そうな顔をしていた。
「プー太郎、お前、何か見たのか?」
その言葉に一瞬ドキリとした。
「え……誰とも会ってないよ……」
目が自然と泳いでいた。動揺してしまい、声が震えてしまった。
五十嵐はカッコいい顔立ちをしていると思う。女受けの良い顔だ。
もし僕が「綺麗な女の子がいた」と言えば五十嵐は会いに行くかもしれない。いや、五十嵐だけじゃない。斉藤も西村も後藤も高木もみんな一目見ようとするはずだ。
冗談じゃない。僕なんかがこいつらよりモテるわけがないのに、みすみす彼女のことを教えるなんてするもんか。
「……見たんだな?」
しかし五十嵐は僕の言葉が嘘だと分かったようだ。
そして声を荒げて僕の胸倉を掴んだ。
「言え! 何を見た? 誰と会ったんだ!」
その形相にビビッてしまい、渋々、昨日のことを話してしまった。
「お、女の子がいたんだ。僕たちと同じ歳くらいの。で、でも、怪談話とは全く関係ない場所でだよ! 警備員に見つかりそうになって必死こいて走ったんだ。かなり走ったから全く別の場所だよ」
僕の話を聞いて五十嵐を除く他の奴らは食い付いていた。
「お、お? その子、可愛かったか?」
こんな感じに。
しかし五十嵐は違った。
「確かに場所は違うだろうな。あのとき警備員がいたすぐ近くが怪談の場所の視聴覚室だからな。けど、女がいたんだろ? お前も知ってんだろ、怪談の内容」
「知っているけど……」
「ならお前はもう夜の学校に行くな。死ぬぞ」
そう吐き捨てるように五十嵐たちは僕の目の前から立ち去った。
その言葉に僕は酷く憤りを感じた。
「な、何でお前に指図されなきゃいけないんだ!!」
しかしこの言葉は彼らに聞こえなかったようだ。




