第三話 承点
今何時なのだろうか。あれから何分経ったのか、僕には分からない。
懐中電灯もないため、ここがどこなのかも分からない。
そして目の前には知らない女の子。
ドックン
なぜかさっきから僕の鼓動はおかしくなっている。
初めての体験だ。夜だからだろうか、とても肌寒い。この辺一帯に冷気が漂っているのだろう。そのせいか、目に見える冷気が彼女をより幻想的にしている。
ドックン
なぜ心臓はこうも仕事を頑張っているんだろう。
そんな自問自答をしている際にも彼女は俺の方へと歩いてきた。
廊下中に裸足で歩く音だけが響いている。
僕は咄嗟に尋ねていた。
「き、君はこんなところで何をしているんだ?!」
驚くことに僕の声は震えていた。怖さなんかじゃない。でも分からないんだ。
この鼓動が僕の全身を強張らせている。
ドックン
僕の問いに彼女は笑っている。
「ふふふっ、私が怖くないの?」
その笑みに僕は怖くなってしまった。
恐怖からじゃない。僕の知らない感情が身体を支配しようとしているためだ。
ドックン
「おかしな子」
その笑みに僕の身体は震えた。
そして咄嗟に逃げ出してしまったんだ。全力で、何も見えない廊下を走った。
ドックン
この鼓動の高鳴りが、走ったせいでもなく、怖いせいでもないことを僕は気付いてしまった。
彼女が誰なのか聞けば良かったと、走りながら後悔してしまったからだ。
僕は一目惚れしてしまったんだ。




