宋飛9
「それにしても宋飛、お前の体力と馬鹿力はとんでもないな。おかげで労役は大分助かってるけどよ。ここに来るのにいったい何をやらかしたんだ?」
「盗賊みたいなものだったよ」
「捕まっちまったってことは、どんくさかったんだな」
「まあ、確かにそうだなあ。お前は?」
「俺は何もしていない。普通の大工さ」
「どういうことだ?」
「やってないんだよ、何も。もう忘れたが、俺が牢に入れられたのは、何か取ってつけたような理由だった。お偉いさんからの建築仕事の対価をまけなかった、とかかな。だから強いていうなら賄賂を渡す金がなかったことが罪だろうな」
そういうことがあるのは聞いていた。役人や軍の将校が、何かにつけて銭を要求し、断れば罪人として捕らえられる。林勝もほんの少し気を利かせればなんともなかったはずだ。
「ばかばかしい。そんな奴らばっかりか。ここに入っているのは」
「それだけ腐っちまってるってことだよ、この国は。大半は何もしてない奴、不正の濡れ衣を着せられた奴、もしくは耐えかねて暴れたり盗みを働いた奴だ。凶悪なやつなんてのは数えるほどしかいない」
「そういえば、奥にやたら厳重な牢があった」
「ここには特にやばいのがいてな。噂だが、反乱を企てた奴がいるらしい。だが、証拠がなくてずっと閉じ込められているって話だ。武達っていったか」