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一緒と隣と隣と上と下。  作者: 梅屋さくら
Story3 急接近。
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**ツイニトワニマデ。

幸せな気分のまま眠り、その翌朝。

いつもあんなに私に甘えてくっついてくる杜和がなんだかよそよそしい。

小さな机の下で足がぶつかってから違う机に移動してしまうし、目が合うとすぐにそらすし、いつも一緒に登校するのに先にすたすたと歩いて行ってしまうし……。

とにかく避けられているんだなぁ、ということは私にもわかった。


学校に着いても私と目を合わせようとはしないので、


「俺なんか怒らせるようなことしたか?」


と思い切って聞いてみた。我ながら、素晴らしい勇気だったと思う。

まあそんな自画自賛はおいといて。

そう尋ねられた杜和は、無視。聞こえていないわけないのに。

とりあえず今日は諦めよう、そう思った。


部屋に戻り、一緒に入ろうとすると、


「僕は夏帆くんの部屋行って泊まってくる」


といってさっさと逃げられてしまいそうになった。

ずっと無視され続け、私は少しいらついていたので、腕を全力で掴んで私たちの部屋に入れ、ベッドに座らせた。


「なぁ、なにがあったんだ? 嫌なところあったら直すからさ」

「衣良くんって……なんでしょ?」

「え? なに。ごめん聞こえなかったんだけど」

「衣良くんって……女の子なんでしょ!?」

「へ?」


な、なぜ。なぜそのことがばれてしまったんだ。

昨日のことを考えてみるが、なにも思い当たる節がない。

きっと変な時期の変なエイプリルフールかもしれない。

そんな馬鹿なことを考えて、とりあえず否定してみようと思った。


「なにいってんだ? 俺は男だぞ? ほら」

「うそでしょ。ほんとのこと言って?」

「いや、俺うそついてねぇから……。なんで女だって言うんだ?」


ひやひやしながらしらばっくれ続ける私と、疑いの目を向け続ける杜和。

ずっと言って良いのか悩んでいる、というかんじが伝わってきた。

ついに意を決したのか、閉じていた口を開く。


「僕ね、昨日見ちゃったの。

稜くんの部屋で女の子の服着てて、女だってばれるなよ、って言われてたところ」


まさか。そこで見られていたとは思わなかった。

私がドアが開いたことに気付かなかったのも無理はない。

かわいい服に夢中で周りなんてぜんぜん見ていなかったから。

はっきりと見られている以上、もう言い訳はできない。


「そっか、昨日の夜か……。ごめんなさい。今までずっと黙っていて」

「別に黙ってたことに怒ってるわけじゃないから良いよ。

なんでわざわざ男装なんかして星高に入ったの? さらに男と同じ部屋」


私はこうなった理由を説明した。

男と同じ部屋だったのは最初は戸惑ったが、割り切ってしまったらすっかり慣れてしまったことも。


「僕がどうこう言えることじゃないから、別に言いふらしたりはしないよ。

でももうこの同じ部屋で過ごすっていうのはできないかもしれない。

だから僕は夏帆くんの部屋にこれからは行って泊まることにするよ。安心でしょ?」

「だめ! 私のせいで杜和に苦しい思いをさせるなんていや。

……もう決めた。私、この学校をやめる。みんなには何もかもを話して」

「なにいってんの!? 僕のことなんて考えないで良いんだよ。

今まで気付いてあげられなかった僕も悪いし」

「ううん、良いの。杜和の日常を汚したのは私なんだから、私が綺麗にすれば良い」


私はもう中退しようと決意した。

クラスのみんなに謝って、先生たちにもお礼を言って、お別れ。

みんなを騙している私が悪いんだからそれで当然だと思った。

親にはなんて言われるかわからないが、みんなに迷惑かけるよりずっとまし。


すると、それまで私を見つめていた杜和が、


「衣良くん、優しいね」


と言ってきた。

こんな嘘つきなのに? そう言うと、


「そうやって自分をいじめちゃうのも優しさのせいかもね」


さらに私を褒める。

なんだか照れくさくって、顔を背ける。


「僕は優しい衣良くんとお別れなんてさみしい。衣良くんはさみしくない?」

「そりゃあさみしいけど……。でも杜和をこの部屋から追い出すっていうのはやだ」

「じゃあ、衣良くんが良いならこのままじゃだめかな?

それなら、衣良くんはいやじゃないし、僕もさみしくないし。やっぱりいや?」

「私はほんとに良いの。でも杜和がいやじゃない?」


ほんとに私は良かった。

だって今まで通りならとても楽しいし、みんなも優しいし。

すると杜和は頭をぶんぶんと横に振った。


「ぜんぜん。ていうか、僕はずっと一緒が良い」

「今まで通りで接してくれる?」

「うん。ちょっとは慣れるまで時間かかるかもだけど……。

でも今までみたいに一緒に笑えるようにがんばって慣れるから、待っててくれる?」

「ありがとう……!」

「これからは僕もサポートするから、どんどん頼ってね?」


この日の杜和は、とても頼れる男の子ってかんじで新鮮だった。

みんなと離れずにここに居続けられること。嬉しすぎて涙が浮かんだ。


次の日、杜和はいつも通り甘えてきた。

少しはスキンシップ控えめにはなったけれど。


さらに、登校するときには全力で転んでいた。

昨日の男らしい杜和は幻だったのかもしれない……そんなことを思って私は口に笑みが浮かんでしまった。

なんだかレアな杜和を見られて嬉しかった。

どきどき編。

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