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小人族の仲介人な私。  作者: 榎本あきな
第一仲介所:草原
9/24

9人目。違うような私

「危機的状況」


……まだかなぁ…。

…ん?あ、そろそろヴァルが来ちゃう。

逃げないと。また無いことを言われるのは僕だって嫌だ。

…早く、来てね。こんな思い、僕だって嫌なんだ。

聖獣。それは、神に愛された動物である。


神様は、一人の人物を愛し、その人物の一生を見守る。

それと同様、動物も神様に愛される。


しかし、それは神様一人につき、たったの一種。

愛されればずっとその動物の種族を見守っていてくれるが、愛されなければその動物は愛されている動物よりも大変な人生を送る。

大変な人生…といっても、それは聖獣にとってであり、ずっとそう過ごしてきた彼らなら、別に何の問題もない。


聖獣になるには特に条件などはない。あるのは神に気に入られるか否かだ。

ほとんどは、神の好みで決まるのだが。



その神の中で、竜を聖獣とする神がいる。

音の双神である、リティシアとルディシアである。

実際は、言葉の精霊であり、二人合わせて音の神としての力を持つのだが…それは割合しよう。


その二人は、精霊としての性質を持つためか、非常に気まぐれで子供っぽい一面がある。

そのためか、二人は作ったのだ。「自分だけの成獣」を


それは、竜であるが、持っている能力が他の竜とは違った。

その竜のオスは「表面上の願いを叶える」力を。その竜のメスは「内面上の願いを叶える」力を。


その竜は、誰かの願いを叶えるときに生まれてくる。

その願いの内容に応じて、性別が変わる。

その願いの強さにより…竜は、姿を変える。


***


パキリ


何かが割れる音がする。


  ピキリ


何かにヒビが入る音がする。


    バキリ


何かが突き破る音がする。


      コトリ


何かが……落ちる音がした。





卵が割れ、中から光があふれてくる。

そこから出てきたのは


物理的にありえないであろう大きさの竜の頭だった。


そこから出てくる竜。

割れた卵から出てきた竜の大きさは、竜が身をかがめてもこの洞窟の穴が埋まってしまうくらい大きかった。


その竜の羽や鱗は、まるでガラスのように透き通っており、覗き込めば自分の顔が写るくらい。

その竜の額には、二本の黒い角が真っ直ぐに伸びており、耳のしたには小さな、黒い角と対象になるような真っ白な角が二つ。

その竜の尻尾には、付け根に黒いリングがつけており、尻尾は先から真ん中までが黒く染まっている。



その翼に包まれる形で、私は竜の真下にいつの間にかいた。

真下…というより、竜の体の近くで二つのガラスのような翼に包まれている感じ。


竜が、オルゴールような安心するような、すべてに振動するような咆哮をあげる。

それはとても穏やかで…懐かしかった。


竜の咆哮とともに、ティラノの体には、ガラスのようにヒビが入り…そのまま、パリンと音を立てて跡形もなく消えてしまった。割れたガラスも残らず、周りに溶け込むように消えていった。



ふと、頭に違和感を感じる。

こう…頭の重さがいつもより違うような…。

視線も、さっきよりどことなく高いような気が……。


その時、竜が少しだけ、バサリと翼を広げる。

髪がその時にできた風でフワリと舞い上がる。


…私は、違和感に気がついた。


腰まである髪が、短くなっているのだ。

それに、身長も何故か高くなっている。


髪の毛は切れたのかもしれないけど…どうして身長まで…?

もしかして…魔素に体が適合したのだろうか…?それにしては、大きくなるのがちょいと早すぎる気が…。


竜が、ガラスのような翼を縮め、私を包み込むようにする。

その時、羽に写った私の顔は…………



懐かしい、今の私と、まったく違う顔だった。



頭に痛みがはしる。

何かを思い出しそう。でも…それは思い出してはいけないきがする。

どうしてだろう。何故なんだろう。この記憶は、私のものなんだろう?


…私のものを思い出して、何が悪いんだ。


羽に写る私の顔は、何の表情もなく、今の私みたいに頭を抱えていて…

そして、涙を流していた。


どんどんと溢れてくる涙。

耳元を撫でる、短い黒髪。

自分の姿を写し続ける瞳。


耳元に流れ込んでくる音。


その音を聴きながら、私の意識はゆっくりと深い海に沈んでいった。

一つの言葉を残して。



***


あったかい……。

この微睡みの中にずっと漂っていたい…。

なんだろう…冬の時に布団にずっと篭っていたいのと似てるな…。


「―――!――――!」


ん?なんか声…というより鳴き声が聞こえる…。

うるさ……くはないな。むしろ心地いい。このままずっと寝てていいですか。


「―――!!――!!!」


こらこら。そんな大きく鳴いたら次第に騒おぐべぇっ


苦しい!待って!すっごいい苦しい!なんか肺が圧迫されてる!心臓マッサージでもされてるのか私は!?

いや…これは誰かなのか何かなのか知らないけど、知らないものが乗っかってるんだ!


待って待って。重いって。重いからおりぐばぁ。跳ねんな!!

起きる、起きるから跳ねなウボァ。どけよ!起きたくても起きれねぇよ!


とりあえず、ピョンピョン私の上で跳ねているものを両手で抱きしめて固定させる。

重いし苦しいけど、さっきよりはマシ。でも…この手の感触はなんですか。


あの~…なんていうかその……うん。

率直に言うと、主に蛇とかの爬虫類の鱗の感触がします。

でも、蛇じゃないんだよね…。そもそも、蛇だったらあんな跳ねないでしょ。


なんだろう…。妙な期待的なものとともに、ゆっくりと瞼を押し上げ………閉じる。


なんでいるの?……なんでいるの!?

あれ!?あの出来事って夢だと今の今まで思ってたんだけど!?

夢なのにそれを話題にしたら笑われるかなと思って今まで考えてなかったのに!ちなみに、話し相手は自分自身です。……ボッチとか言うな!自分でも思ったけど……。


額から伸びたまっすぐな二本の黒い角。耳の下には真っ白な小さな角。先から真ん中まで黒く染まった尻尾。

瞳の下の黒い線とか、額についた赤い宝石とか、所々違うけど……


完璧、あのときの竜ですね。わかります。


夢だ。絶対夢だ。私はまだ夢を見ているに違いない。手の感触とか、肺を圧迫するこの重みとか、全部私の錯覚だ。これが錯覚じゃなければ、私が今まで経験した…ティラノのこととか、そういうのが全部本当の事だと肯定しなければいけない。あの時の感覚は、思い出したくもないので夢として心の奥底に閉まっておきたいです。南京錠でもかけて。


夢だと念じながら再び、今度はさっきよりもゆっくりと目蓋を押し上げる。

目蓋を押し上げ、目を開いた先には………


尻尾を犬のように降っている、私の腕で抱きかかえられるくらいの竜がいました。







夢じゃなかった………。

妙にやる気が出てこない。

なんとか自分の好きな「シロイカラス」をリピート再生で聴きながら作業してたけど。

やる気出すのにいい方法ないですか?あったら教えて欲しい……。


次回は、ボウシちゃんが寝てる間の事を。

そろそろ終わりに近づいています。第一章が。物語は、まだまだ終わりません。…それまで書き続けられるかな…。


それでわ。

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