第7話: あり得ない夢
はじめましての方も、お馴染みの方も、お越しいただきありがとうございます!作者のティラピア池です。今日も皆様に楽しんでいただけるよう、気合を入れてお届けします!
夜はすでに明けようとしていた。
しかし、アラリックはまだ眠っていなかった。
机の上には、様々なメモや設計図が散らばっている。
アラリックは、この世界へ来てから手に入れた奇妙な能力について、ひたすら考え続けていた。
「……そんな単純なものじゃないはずだ」
武器を創り出す能力。
物体の大きさを変化させる能力。
そして、自分が作り出したアイテムに現れる、様々な奇妙な効果。
すべてが、もっと大きな何かの一部であるように感じられる。
「……だとしたら、この能力はいったい何のために存在する?」
アラリックは夜が更けるまで考え続けた。
そしていつものように――また徹夜した。
やがて、朝が来た。
部屋の扉がゆっくりと開く。
アヤが部屋に入ると、机に突っ伏したまま眠っているアラリックを見つけた。
「……はぁ」
アヤはため息をついた。
「また徹夜したんでしょ」
アヤはアラリックのもとへ歩いていく。
「アラリック、起きて」
返事はない。
「アラリック」
それでもアラリックは動かなかった。
アヤは仕方なく自分の靴下を片方脱ぎ、それをアラリックの顔めがけて投げつけた。
「起きて!」
「……?!」
アラリックは飛び起きた。
顔から何かが落ちる。
アラリックはそれを拾い上げ、困惑した表情で見つめた。
「……これは誰の靴下だ?」
アヤは無表情のまま答えた。
「私の」
アラリックは数秒間、黙り込んだ。
「……そうか」
なぜかアラリックは、その靴下を顔に近づけて匂いを嗅いだ。
「……」
そして、真剣な表情でもう一度嗅ぐ。
「ふむ……」
アヤの表情が一瞬で変わった。
「……」
「……」
**バシィッ!**
アヤの平手打ちがアラリックの顔面に直撃した。
「変態!」
「……」
マイナスだらけの身体能力しか持たないアラリックにとって、たった一発の平手打ちでも十分すぎるほどの威力だった。
「俺はただ気になって――」
**ドサッ!**
アラリックはそのまま床に倒れ、意識を失った。
「……はぁ」
アヤは呆れたようにアラリックを見下ろした。
「本当に面倒くさい人……」
しかし、しばらくすると――意識を失ったアラリックの前に、奇妙な光景が現れた。
それは、今まで見たことのない不思議な夢だった。
アラリックの目の前には、七人の人間が立っていた。
その顔は、はっきりと見ることができない。
そして、七人の背後には、何千もの奇妙な存在がひしめいていた。
その数はあまりにも多く、アラリックにはその果てすら見えなかった。
「……何だ……これは?」
七人は、ただ黙って立っている。
誰一人として、言葉を発しない。
そして――
「――!」
アラリックは突然、目を見開いて飛び起きた。
「……は?」
彼はゆっくりと身体を起こそうとした。
しかし、しばらくしてアラリックは別の問題に気づいた。
「……」
少し離れた場所にいたアヤも、その様子に気づいた。
「アラリック?」
アラリックはゆっくりと頭を下げる。
「……おねしょした」
アヤは頭を抱えた。
「はぁぁぁぁ!」
「ごめん……」
「今すぐ片付けて!」
「はい……」
アラリックは立ち上がり、寝床を掃除して服を着替え始めた。
すべてを終えると、アラリックは再びアヤのもとへ戻った。
アヤはまだ不機嫌そうな顔をしている。
「次から、今朝みたいな変なことしないでよ」
「……はい」
アラリックはまだ痛む頬をさすった。
「それにしても、あの平手打ちは強すぎる……」
「あなたが悪いんだから、当然でしょ」
「……反論できない」
しばらくして、アラリックが尋ねた。
「この後、どこへ行く?」
アヤは少し考えた。
「とりあえず、少し散歩しようか」
「散歩?」
「うん。クエストも終わったばかりだし、昨日は結構疲れたから」
アラリックは頷いた。
「分かった」
二人は宿を出て、クロシマの街をのんびりと歩き始めた。
しかし、宿を出て数歩しか進んでいないというのに、何人かの住民がアラリックに視線を向け始めた。
「……おい、あの男を見ろ」
「ん?」
「あの顔、どうしたんだ?」
「誰かに平手打ちされたんじゃないか?」
「誰に?」
「さあ……」
アラリックには、そのひそひそ話が聞こえていた。
「……」
しかし、何も聞こえていないふりをした。
アヤはアラリックの隣を歩きながら、必死に笑いをこらえている。
「……笑うなよ」
「笑ってないよ」
「顔が明らかに笑いをこらえてるだろ」
「ふふっ……」
二人はそのまま街中を歩き続けた。
しばらくすると、アヤが突然立ち止まった。
その視線は、一軒の店へ向けられている。
ショーウィンドウの向こうには、見るからに美味しそうなケーキが並んでいた。
「……アラリック」
「ん?」
アヤは店を指差した。
「あれ……美味しそう」
アラリックもケーキを見る。
「欲しいのか?」
アヤはここぞとばかりに甘える作戦を使おうとした。
「もし買ってくれるなら――」
しかし、アヤが言い終わる前に、アラリックはすでに数枚の硬貨を取り出していた。
「ほら」
アヤは固まった。
「……」
アラリックはそのままアヤに金を渡した。
「買ってくればいい」
アヤは渡された金を見つめ、不思議そうな顔をした。
「……今日は珍しく気が利くじゃん」
「甘いものが好きなのは知ってるからな」
「えへへ」
ケーキを買った二人は、再びクロシマの街を歩き始めた。
しかし、細い路地を通りかかったところで、アラリックの足が突然止まった。
「……」
アヤが振り返る。
「どうしたの?」
アラリックは、その路地をじっと見つめた。
そこは、かつて仕事探しに失敗したアラリックが座り込み、自分の運命を嘆いていた場所だった。
しかし今、その路地には何人かの奇妙な人物がいる。
彼らの服装は、クロシマの住民とは明らかに違っていた。
そして、その仕草もどこか怪しい。
「……あそこに変な奴らがいる」
アヤも路地の奥へ視線を向ける。
「旅人かな?」
「かもしれない」
アラリックは遠くから彼らの様子を注意深く観察し続けた。
しかし、やがて自分の手を見る。
「でも、もし何か仕掛けてきたら……俺には何もできない」
アラリックは小さく息を吐いた。
「俺はまだ弱い」
アラリックは、自分の思考能力が身体能力を遥かに上回っていることを理解している。
だが、今の身体能力で複数の人間を相手にするのは――明らかに得策ではない。
「……やめておこう。行こう」
「うん」
アラリックとアヤは、そのまま路地を離れた。
そして二人は、これまで一度も訪れたことのない場所へ向かって歩き続けた――
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