第10話: 安すぎる武器と、盗賊たちとの取引
はじめましての方も、お馴染みの方も、お越しいただきありがとうございます!作者のティラピア池です。今日も皆様に楽しんでいただけるよう、気合を入れてお届けします!
翌日、僕はいつもより早く目を覚ました。
服を整え、必要なものを確認すると、すぐにアヤと一緒に冒険者ギルドへ向かう準備をした。
今日はまたクエストを受けるつもりだ。
少なくとも昨日の出来事のおかげで、僕は魔法の使い方を少しだけ理解できるようになった。
とはいえ、突然強くなったわけではない。
ステータスは相変わらずだ。
HPはマイナス。
STRもマイナス。
DEFもマイナス。
INTまでマイナス。
要するに、僕は今も世界で一番意味の分からない人間だった。
宿を出ると、アヤがすでに入口で待っていた。
「おはよう。」
「おはよう、アヤ。」
僕たちはそのまま並んで冒険者ギルドへ向かって歩き始めた。
クロシマの街は、すでに多くの人で賑わい始めている。
商人たちは店を開き、何人もの冒険者が武器を携えながら歩き、住民たちもそれぞれの仕事に追われていた。
数分ほど歩いたところで、僕は突然立ち止まった。
道端に転がっている小さな石が目に入ったからだ。
「アヤ。」
「ん?」
僕はその石を指差した。
「スケルトン・アーミーに、あの石を前に向かって投げさせてみて。」
「石?」
「うん。」
アヤは不思議そうな顔をしたが、言われた通りに命令する。
「スケルトン・アーミー、あの石を投げて。」
一体のスケルトン・アーミーが石を拾い上げた。
そして――
**ヒュッ――!**
石は凄まじい速度で飛んでいった。
「――!?」
茂みに隠れていた三人の男に直撃し、そのまま地面に倒れ込んだ。
「……」
僕は無言になった。
アヤも無言だった。
「成功した。」
「本当に成功した……。」
しかし、僕たちが何か行動を起こすより先に――
木々の陰から、さらに何人もの男たちが姿を現した。
彼らは剣や槍など、様々な武器を手にしている。
「動くな!」
一人の男が武器をこちらへ向けた。
「さっさと降参しろ! さもなければ殺すぞ!」
僕はすぐに人数を確認した。
思っていたより多い。
「お前たちは盗賊か?」
「そうだ。」
一人の盗賊がニヤリと笑った。
「持っているものを全部渡せば、命だけは助けてやる。」
すると、何人かの盗賊の視線がアヤへ移った。
「それに、あのエルフは――」
一人の盗賊が下品な笑みを浮かべる。
「――俺たちが連れていく。」
僕の目つきが変わった。
その言葉だけは、どうしても気に入らなかった。
僕には頼れるほどの身体能力なんてない。
それでも、アヤは僕の仲間だ。
「アヤ、僕の後ろにいて。」
「でも――」
「信じて。」
アヤは小さく頷いた。
「分かった。」
その瞬間、一人の盗賊がアヤへ向かって走り出した。
「そのエルフを捕まえろ!」
スケルトン・アーミーが即座に動いた。
**ズブッ!**
スケルトンが男の前に立ちはだかり、その攻撃を阻止する。
盗賊はそのまま地面に倒れ、動かなくなった。
「な――!?」
他の盗賊たちは驚いた。
しかし、すぐに反撃へと移る。
数人が一斉にスケルトン・アーミーを取り囲んだ。
「こいつらを攻撃しろ!」
**ガキンッ!**
一体のスケルトン・アーミーが攻撃を受け止める。
だが、次の一撃がその身体を捉えた。
**バキッ!**
スケルトン・アーミーは地面に倒れ、そのまま動かなくなった。
「スケルトン・アーミーが一体やられた!」
アヤが慌てた声を上げる。
「アラリック!」
僕は戦場を見渡した。
敵の数が多すぎる。
このまま戦い続ければ、僕たちのスケルトン・アーミーは長くは持たない。
「やっぱり……僕のスケルトンじゃ長くは持たないか。」
「え?」
僕は頭を掻いた。
「うわ……どうしよう。」
別の方法を考える。
僕には肉弾戦なんてできない。
それに、アヤだけに前線を任せ続けるわけにもいかない。
その時、僕はあることを思い出した。
以前使った、あの能力だ。
「……待てよ。」
僕は自分の手を見つめた。
「だったら……武器を作ればいいんじゃないか?」
僕はすぐにアイテム生成の能力を発動させた。
「――武器を作る!」
目の前に光が現れる。
一振りの武器が形を成した。
そして、さらに一つ。
また一つ。
「一……二……三……。」
僕は次々と様々な武器を作り出していく。
剣。
槍。
斧。
盾。
武器の数はどんどん増えていった。
しかし、武器を作るたびに僕のMPが急速に減っていく。
「……まずい。」
僕はすぐにマナポーションを取り出した。
**ゴクッ!**
一気に飲み干す。
そして、また武器を作る。
**ゴクッ!**
さらに一本。
「くそ……結構燃費が悪いな。」
その間も、アヤとスケルトン・アーミーが僕を守り続けていた。
何人かの盗賊がこちらへ近づこうとするが、なんとか食い止めている。
しばらくすると、僕の周囲には大量の武器が転がっていた。
僕は大きく息を吐いた。
「……これで十分だ。」
僕は大量の武器を見つめる。
その時、突然あることを思い出した。
「……あ。」
僕は額を軽く叩いた。
「サイズ・オルタレーション(Size Alteration)。」
能力を発動すると、いくつかの武器が一気に小さくなった。
「これなら持ち運びやすい。」
小さくした武器をいくつか手元に残し、残りは地面に置いた。
そして僕は、盗賊たちへ視線を向けた。
「止まれ。」
盗賊たちの動きが止まる。
僕は一本の剣を持ち上げた。
「お前たち、さっき僕を殺そうとしたよな?」
「……何?」
「でも、僕を殺したら……お前たちのほうが損をする。」
僕は作ったばかりの剣を掲げた。
「この武器を見ろ。」
盗賊たちは剣を見つめる。
「これを、ものすごく安く売ってやる。」
僕は両手の指を使って数字を示した。
「たった十枚の銅貨でいい。」
盗賊の頭目は眉をひそめた。
「このガキ……その値段は高すぎる。」
「高すぎる?」
頭目は僕の持っている剣を指差した。
「そんな剣に?」
「十枚の銅貨なんて、誰が払うと思う?」
僕は笑った。
「だったら、使ってみろ。」
頭目は少し迷った。
だが、やがて僕から剣を受け取った。
「いいだろう。」
頭目は近くの木へ向かって歩いていく。
そして、剣を振り下ろした。
**ヒュッ!**
**ズバッ!**
剣は木の幹をいとも簡単に切り裂いた。
頭目は言葉を失った。
剣を見る。
そして、切断された木を見る。
「……」
僕は笑った。
「どうだ?」
頭目は僕から離れ、部下たちへ小声で話し始めた。
「このガキ……本当に馬鹿だ。」
「しかし、こいつはどこからこんな武器を手に入れたんでしょう?」
「もしかして、マジックバッグを持っているんじゃないですか、ボス?」
「あり得るな。」
頭目は地面に並べられた武器を再び見た。
「だが、こいつは本当に馬鹿だ。」
「これほどの武器なら、明らかに高品質だ。」
「それをこんな安値で買えるなら、他の盗賊にもっと高く売りつけられる。」
「俺たちは大金持ちになれるぞ!」
彼らは互いに顔を見合わせる。
そして――
「ハハハハハハ!」
盗賊たちは一斉に笑い出した。
僕は黙ってその様子を見ていた。
「……」
僕は笑いを堪えた。
彼らは、自分たちが何をしようとしているのかまったく理解していない。
僕は小さな砂時計を見る。
五分。
それが、僕の作った武器の制限時間だ。
五分が経過すれば、これらの武器はすべて消える。
僕は思わず笑いそうになった。
「よし。」
僕は盗賊の頭目を見る。
「それじゃあ、取引成立だ。」
「そうこなくちゃな!」
頭目は嬉しそうな顔をする。
しかし、僕は一本の指を立てた。
「ただし、条件がある。」
頭目の表情が止まった。
「条件?」
「一つ目。僕やアヤに二度と手を出さないこと。」
僕は二本目の指を立てる。
「二つ目。レベルを上げるためにEXPを稼げる場所を教えてくれ。」
「……EXP?」
頭目は少し驚いた。
「それだけか?」
「うん。」
頭目は笑った。
「もちろんです、旦那。」
「この程度の取引なら、何の問題もありません。」
頭目は部下のほうを振り返った。
「おい、お前たち! 地図はどこだ?」
「これです、ボス!」
一人の盗賊が古びた地図を取り出した。
「旦那、ここを見てください。」
盗賊は地図の一部分を指差した。
「この辺りには、EXPを稼げるモンスターがたくさんいます。」
「どんなモンスターだ?」
「色々いますよ、旦那。」
盗賊はさらに別の場所を指差した。
「もっと危険な場所へ行きたいなら、強いモンスターが出る地域もあります。」
僕は真剣に地図を見つめた。
「なるほど……。」
そして、一つ気になったことを尋ねる。
「EXPって、普通はすぐにステータスへ入るのか?」
盗賊は首を横に振った。
「いつもすぐに入るとは限りません、旦那。」
「少し遅れてステータスに反映されることもあります。」
「でも、それが普通です。」
僕は黙った。
「……なるほど。」
そういうことだったのか。
どうりで。
僕は今まで、そんなことすら知らなかった。
その瞬間――
**ピコン!**
目の前に通知が表示された。
「《おめでとうございます! 野生のイノシシを討伐しました》」
「《EXP+100》」
「……」
僕は通知を見つめた。
「おお。」
ようやく入ったらしい。
`EXP:-10,000 → -9,800`
僕はゆっくり頷いた。
「なるほど……。」
しばらくすると、さらに別の通知が表示された。
「《おめでとうございます! 薬草を採取しました》」
僕は眉をひそめた。
「……これも?」
どうやらEXPは、様々な行動によって獲得できるらしい。
僕はアヤを見る。
「アヤ。」
「うん?」
「君もEXPを獲得したのか?」
アヤは自分のステータスを確認する。
「ちょっと待って……。」
数秒後、アヤの目が大きく見開かれた。
「うん。」
「EXPが入ってる。」
「そうか……。」
僕は頷いた。
すると、突然アヤが笑顔になった。
「アラリック。」
「ん?」
「私、もう一度スケルトン・コマンダーを召喚できる。」
「おお。」
僕はホッとした。
「それはよかった。」
少なくとも、これでまた僕たちの戦力を増やせる。
取引を終えたあと、僕は盗賊たちが使っていた荷車を指差した。
「あと一つ。」
「何です、旦那?」
「その荷車を置いていけ。」
頭目は困惑した。
「荷車ですか?」
「そう。」
僕は彼らの荷車を指差した。
「獲物を運ぶのに必要なんだ。」
「分かりました、旦那。」
頭目は素直に頷いた。
僕はさらにいくつかの武器を取り出し、彼らへ渡した。
「これはボーナスだ。」
「ボーナス?」
「無料。」
盗賊たちの目が一斉に輝いた。
「それから、これからも問題を起こさないなら、また武器を渡してやる。」
「もちろんです、旦那!」
頭目は勢いよく頭を下げた。
「二度とあなたに手を出したりしません!」
「よし。」
その後、盗賊たちは武器を抱えながら、足早にその場を去っていった。
僕は遠ざかっていく彼らの背中を眺めた。
「……本当に気づいてないな。」
アヤが首を傾げる。
「何に?」
僕は小さく笑った。
「五分だよ。」
「ん?」
「まあ、そのうち分かる。」
安全を確認したあと、僕とアヤは野生のイノシシを荷車へ積み始めた。
幸い、荷車があるおかげで僕自身が持ち上げる必要はない。
STR -300の僕が一人で持ち上げようとしたら、たぶん先に僕のほうが倒れる。
僕たちはそのまま、クロシマへ向かって歩き始めた。
しばらく歩いた。
僕は先ほどの取引について考えていた。
その時――
**ピコン!**
再び、通知音が鳴った。
僕は足を止めた。
「……」
アヤも立ち止まる。
「アラリック?」
僕はゆっくりと後ろを振り返った。
遠くの木々の間で、何かが動いた。
人間ではない。
普通の獣でもない。
僕は目を細める。
「アヤ……。」
「うん?」
「僕たち……二人だけじゃない。」
風が木々の間を吹き抜ける。
葉が静かに揺れた。
そして、木々の向こうから――
何か重いものを引きずるような音が聞こえてきた。
**ズ……ズズ……。**
僕は反射的に、先ほど作った小さな武器の一つを握った。
「……なんだ、あれ?」
そして、その瞬間。
僕は初めて感じた。
――あの野生のイノシシを持ち帰ることが、問題の本質ではなかったのだと。
少しでも「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ページ下部の**【ブックマークに追加】や【評価(★★★★★)】**をいただけると嬉しいです!皆様の応援が執筆の大きな励みになります!もしかしたら「こういう設定の小説は途中でエタる(エピソードが途絶える)んじゃないか……」と思って、ブックマークをためらっている方もいるかもしれません。ですが、断言します。私はこの作品がライトノベル化、コミカライズ、そしてアニメ化するまで絶対にエタりません(更新を止めません)!ぜひ大佐の行く末を、一緒に最後まで見届けてください!




