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第12話 「山神さまとハル(後編)」

あれから幾年。


ハルは聡明で、

よく気がつく少年へと育っていた。


ある日、ふと尋ねた。


「なぜ私はここにいるのですか」


山神さまは珍しく、

黙ってやり過ごさなかった。


霧の日のこと。

御堂の前に置かれていたこと。

源蔵じいさんが祈り続けていたこと。


静かに、すべてを話した。


ハルは最後まで黙って聞き、

少し考えてから言った。


「そうでしたか」


それだけだった。


山神さまはわずかに視線を向ける。


「……恨みは、ないのか」


ハルは首を振る。


「山で育ちましたから」


そして、やわらかく笑った。


「ここが、私の居場所です」


山の風が、

そっと木々を揺らす。


ハルはいつものように

御堂の戸を開け、畑へ向かった。


土を踏む音が、

静かに遠ざかる。


その背を見ながら、

山神さまは目を細める。


置いていかれた子だった。


行き場のない子だった。


面倒なものを

拾った――

そう思ったこともあった。


けれど。


空を見上げれば、

穏やかな晴れ間が広がっている。


山の気は、やわらかい。


御堂の外では、

ハルが黙々と土を耕している。


それが少しだけ、

気に入らなかった。


山神さまは今日も不機嫌だった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

山の静かな日々を、少しでも感じていただけたなら嬉しいです。

またどこかの物語で、お会いできましたら幸いです。

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