32話 裸の付き合い
「おお! このように広い風呂だとは思いもしなかったぞ! アリシア、余の所もここまで広く出来ぬか?」
「改装工事にお時間はかかりますが……お姉様、それよりは新しい場所にお作りになられた方が良いかと」
「うむ! その辺りは任せた!」
会談の後に風呂となった我らだが、タイミングよくアリシア達も進歩を伝えるべく艦に来ており、一緒に風呂へと同行する事となった。
その中にはリンとリンネも含まれている。
大浴場に来てからヒルダはずっとハイテンションだ。扇風機や自販機、竹で出来た椅子に一枚の大きな鏡などまるで子供みたいにはしゃいでいる。
帝国でもここまで再現するのは難しいだろうが、可能なら頑張ってほしい。
さて、ゲセルシャフトの大浴場に付いて説明をしよう。
ここは艦を利用している戦闘員や研究員を労わる為に作った施設で我がかなり力を入れている。
40人は余裕で入れる大浴場に季節の野草を使った薬湯にジャグジーやサウナなど様々な施設を整えている。男湯も同様だな。
男衆は全員男風呂だ。当然だな。男湯と女湯は壁一枚で隔てているが、天井付近は機構の関係で空いている。覗こうと思えば覗けるが、その場合は死が待ち受けている。組織でも覗きは厳禁だ。
「よーし、イヴ。行くぞ!」
「判ったからそんなに手を引くな! というか少しは隠せ!」
「余の身体に隠すような恥じる場所は無い!」
言い切りおった。
ヒルダはタオル一枚も身に着けず、生まれたままの姿となって我らの手を引く。プロポーションは見事としか言いようがなく、芸術品と言ってもいい。動くたびにたゆんたゆん動く果実。
引き締まった体にやや筋肉が付いた腹筋、曲線を描く括れに安産型の臀部。
そんなヒルダに引きずられるように我が脱衣所から大浴場へと引き込まれていると、アリシアが鼻を押さえてるのが見えた。
「お姉様とイヴ様のお裸……! ここは楽園でしょうか」
アリシアの目が怖い。
レイに助けの視線を送るが、にっこりとほほ笑まれ頑張れと口元を動かしていた。
「さてと、美月、リン、リンネ。ボク達も行こうか」
「いいんでしょうか……?」
「良いのです。妾たちはのんびりとしましょう」
「おかーさんと一緒のお風呂……久々です……♪」
レイと美月の助けも望めない。おのれ。
掛け湯で汗や埃を洗い流したあと、ヒルダ自らの手で洗うと宣言。
背中を洗ってもらう感覚で許可したのだが、それが間違いだった……!
「イヴの肌はきめ細やかで良いな。ツヤツヤスベスベだ」
「そういうのは良いが頬ずりするな! ぴゃっ! こらっ変な所を触るな!」
「変な所じゃなくて胸と尻だ! 余はここが好きだからな」
「堂々と言うな!」
性癖を暴露する皇帝なぞ聞いたこともないぞ!
ええい露骨にセクハラしおって! 馬鹿力で抑え込まれては力を使わんと抵抗できんぞ!
「あー、イヴー。くれぐれもここで能力使うのNGだから。壊されたら堪ったものじゃないし」
「何だと……!」
我にどうしろと!?
「ふふふ、戦いでは負けたがこっちでは勝たせてもらうぞ」
「おい待て! 何だその卑猥な手つきは! 手をワキワキさせるな!」
「問答無用! あははは!!!」
「ぬわーー!?」
全身をくすぐる様にさらに洗われてしまった。
体格もヒルダの方が圧倒的に大きいので二つの果実を押し付けられたりしたが、羞恥でそれどころじゃなかった。
「リン、あちらは見てはいけません」
「? おかーさん、わかりました」
「ああ……ここが天国ですのね」
「あわわ、あんなところまで……」
「美月君、そのたわわをボクに少し分けてほしいんだけど」
あっちもあっちで大混乱だ。
リン、頼むからこっち見るんじゃない。お前は純粋で居てくれ。
アリシア、鼻血を出しながらこっちみるな。
美月、指で目を隠してるだろうが、指が開いて隠れてない。ガン視してる。
レイ、何でジト目で我を見る。助けろ!
隅から隅まで洗われた後、我はヒルダに抱えられる形で大浴場の湯船につかっていた。まるでお人形扱いだ。
「いやー……最高だった。やはり美少女は愛でるに限る!」
「我は疲れたぞ……何で風呂で疲れなければならんのだ」
「あはは! 良いではないか!」
抱っこされたまま頭を撫でられるが、抵抗する気力すら失せたわ。
愛でるように撫でていたヒルダだが、突如真横から我の顔を覗き込む。鼻が触れ合うような至近距離に思わずどきっとしたのは内緒だ。
「なぁイヴ、本当に我の嫁にならんか? そっちの方が正直早いだろう」
否定は出来んがそれやったらダメな気がする。
「ならん。と言うかお前が捜すのは旦那じゃないのか」
「男は男で良い奴を探すが、やはり見目麗しく才能あふれた嫁が欲しいではないか! その点、イヴは満点だぞ」
「その評価だけ有りがたく受け取っておく……」
もしここで頷いたら色々と終わりそうな気がする。それにさっきからレイからの視線が鋭いんだが。何故だろう。
ジト目のレイがすいーっと泳ぐように近づき、我の腕を取ってヒルダから我を取り上げる。まるでもの扱いだな。
「悪いけど皇帝陛下、うちのイヴはあげないよ」
「ほう。先約がいたという訳か。あと、レイといったか。お主もこういった場ではヒルダと呼んで良いぞ。堅苦しいの無しだ」
「そいつはありがたい話だ。だけどね、イヴとボクは長年一緒にいる仲なんだ。昨日今日あったような相手には譲れないよ」
「ふふん、長年一緒にいるというには連れ添っているわけでもないではないか。その貧相な身体では余には勝てんぞ」
「うぐぐぐ! アダ……イヴはこの貧相な身体でも良いって言ってくれたんだよ!」
それ何年前の話だ! 酒の席の話を掘り返すの止めろ! あらまぁって感じでリンネは見てるし、美月はじーっと注視してる! アリシアはもう手遅れだな。
「そういうが、ほれ、イヴはこの通り我の胸に注目しておるぞ」
「イヴっ……! 君と言う奴は……!」
いやこれはちがう。頭が固定されてるだけで我わるくない。というか放して。
「ヒルダ、ちょっとどっちがイヴに相応しいか勝負と行こうか」
「良いだろう!」
誰か助けてくれ!! この際ヒーローでも構わん!!!




