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2話 俺飼育される

「俺、猫になってる!」


初めての経験に、俺の頭はパニックになった。いったいどうすればいいんだ。


とにかく、落ち着いて頭を整理するためにも家に帰りたい。家に帰ってから、今後どうするか考えよう。


……いや、猫になったという現実から目を背けたいだけなのかもしれない。


俺は周りを見渡した。


見慣れない景色ばかりだ。酔っている間に、いったいどこまで歩いてきたのだろう。


現在地が分からなければ、家までどれくらい離れているのかも分からない。


スマホで調べようと、鞄から取り出そうとしたとき、俺はあることに気づいた。


……そうだ。俺、猫なんだった。


スマホなんて使えるわけがない。これじゃ道を調べることもできないじゃないか。


しかたなく、勘を頼りに適当に歩いてみた。しかし、歩いても歩いても、同じような建物や家ばかりが続いている。


もしかして、俺は同じ場所をぐるぐる回っているだけなのでは?


目印らしいものもない。地図なしで家までたどり着くのは、至難の業のように思えた。


俺は途方に暮れた。


そのときだった。


正面から、誰かが歩いてくるのが見えた。


あの人に道を聞こう。


……いや、待て。俺、猫だから言葉を話せないんだった。


やっかいだな。


その人が近づいてくるにつれて、見覚えがあるような気がしてきた。


え……美雪さん?


そう、俺が会社で片思いしている美雪さんだった。


美雪さんは俺を見つけると、嬉しそうに駆け寄ってきた。


「猫ちゃんだ!」


「野良猫なのかなあ?」


そう言いながら、美雪さんは笑顔で俺の頭を撫でた。


え、マジでこんなことある?


大好きな美雪さんに頭を撫でてもらえるなんて!


俺は嬉しさのあまり、スキップしたくなった。もちろん、猫なのでそんなことはできないのだが。


美雪さんは何度か俺を撫でると、満足したのか、


「猫ちゃん、バイバイ」


と手を振り、立ち去ろうとした。


ちょ、待って! 俺、迷子なんだけど!


連れて帰ってくれよ!


美雪さん、猫好きじゃん。だからさ、お願い!


しゃべることはできないが、俺は美雪さんに向かって、いかにも寂しそうに「ニャー」と鳴いてみた。


我ながら、演技力が半端ない。主演男優賞を受賞できる気がした。


もちろん、猫なので無理なのだが。


美雪さんは足を止めると、しゃがんで俺と目線を合わせた。


「寂しいの?」


俺はもう一度、悲しげに「ニャー」と鳴いた。


美雪さんは一瞬、考え込むような表情を浮かべた。


しかし、何かを決心したのか、パッと明るい顔になった。


「じゃあ、うちに来る? 野良猫なんでしょ? 私と一緒に住もう!」


そう言って、彼女はまた俺を撫でた。


「ちょうど私、猫好きだし。私も寂しかったし……。なんだか私と君、似たもの同士だね」


そう言うと、美雪さんは俺をそっと抱きかかえた。


こうして俺は、猫になった姿で、大好きな美雪さんの家に転がり込むことになるのだった。

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