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転生者な俺と勇者な私  作者: みなと
14/17

人狼捜索

 ルーライオの村を1人静かに歩く。

 ここには畑やそこそこの数の家……そしてその中に食べ物屋やら武器屋なんてこの場所には似つかわしくないものが存在しているらしい。


 ……まぁなんで1人で出歩いているのかというと魔王からの課題をこなす為である。

 時は少し遡り俺がまだルーライオで泊まる家にいた時だった。


「人狼を見つけろって……?」


「まぁ正確には人狼を見つけて対処しろって事だ」


 俺が疑問を浮かべている間に魔王は訂正を挟む、人狼?対処?どういう事だ?

 人狼って言うと……よくゲームとかで出てくる普段は人だけど夜になると狼になって人を襲うっていうあの?


「まぁ人狼っていうのは人と魔狼が混じり合って生まれた人と狼のハーフみたいなものだ。

基本的には人の姿をしていて人によって自分の意志だったり、何かしらの要因がなければ狼に変身出来ないってのが特徴だ」


 魔王は俺に人狼についての特徴を語った。

 普段は人の姿って……そんなの俺に探せるとは思えない。

 と少しばかりネガティブ意識になる。


「なんでそんな事を俺に?」


 少し自信なさげに魔王に問いかける。

 正直人狼が村の人に化けているのなら俺には見分けようが無い、それに俺には戦う意志がまだ無い……それなのに何故魔王はそんな事を俺に頼んできたのか?


「まぁ言ってしまえばお前への課題だ」


「課題……?」


「とりあえず村でも歩いてこい」



 疑問を投げかけるより早く、家の外に放り出され今に至る。

 人狼を見つけてそれの対処……対処ってなんだろう普通に倒せばいいのだろうか?

 そもそも俺への課題ってどういうことなんだろうか?


 そんな事を考えながら歩くと周りの風景に家屋が増えていく、どうやら村の中心らへんまで来たみたいだ。


「おや?旅の方かえ?」


 見ず知らずの人間が珍しいのかすれ違おうとした老婆に話しかけられる。

 ちょうどいい少し人狼とかについて聞こう。


「は、はい……あ、あの……人狼について……」


 上手く呂律が回らず最後の方は少し消えいるかのような声でほとんど初見の人との会話はやっぱり難しい。

 俺は一旦呼吸を整えて再び人狼について聞くことにした。


「すみません、人狼について聞きたいんですが?」


 よしっ!今度はちゃんと話せた。


「人狼……?確かにこの村では魔狼の被害は凄まじいけど人狼が出たなんて話は無いわね」


 頭を傾げながら話す老婆に嘘を言っているような気配は感じない……これほどのご高齢の人が知らないって事は人狼はいないのでは?

 だとしたら魔王は何故人狼を探せと?


 彼に何か思惑があるのか?それとも単純に魔王の読みミス?

 うーん、わからん。


「あの……どうか?」


 考え事をしてる俺に老婆が声をかける。

 どうやら考え事に夢中になりすぎてた……


「あっいえ、なんでもありません。

ありがとうございました」


 と感謝の言葉を告げて老婆と別れる。

 それからしばらく歩いて何か金属が強くぶつかる音が聞こえ始めた。

 一定のリズムでなり続ける音……その音へ行くと一軒の小さな鍛冶屋みたいな建物があった。


 建物というか小屋の前には某ハンティングゲームを思わせるような見た目でひたすら金床で鉄を打ちつけている大男がそこにいた。


 大柄で顔にはいくつもの深い傷跡がついており厳つく失礼だが悪人みたいな人相って表現が似合ってる……初見の印象はそんな感じだ。


 男は鉄を打ちつけるのに夢中になっているのか俺に気付かない。

 まぁこの人に聞かなくても別に変わらないかな……と思いながら俺は鍛冶屋を通り過ぎようとした。


「おい、テメェみねぇ顔だな

はっ村長が言ってたお客さんってヤツか」


 通り過ぎようとした瞬間にその強面の男に声をかけられる。

 俺を見て何か馬鹿にしてるかのようにハッ!と笑う。


 苦手なタイプの人だ……


「で、そんなお前さんがここらに何のようだ?

もしかして武器の注文か!?」


 少し目をキラキラさせながら近寄ってくる鍛冶屋の男……まぁ目をキラキラさせてもその強面だと気味悪さで鳥肌が立ってしまうのだが……


 武器……と言っても今の俺にはそんなもの使える訳もない、まぁ軽く人狼について聞いてここから離れるか……


「いや、武器じゃなくて……」


「なんでぇ、武器じゃないんかぁ……

まぁ今はあの魔狼どもをぶっ殺す為の武器を作るので忙しいんだがな」


 俺が口を開いて武器の事を否定すると男は少し落胆したかのようなため息を吐きながら手に持った鋭い金属の塊をこちらに見せながそう言い俺は気分を落ち着かせるのにかなりの労力を使っていた。

 ……まぁいい、魔狼の話も出た事だしこのまま続けよう。


「人狼についてなんですけど……」


 と少し呟くように人狼について聞く。

 この人も知らないんだろうなぁ……


「なにっ!?人狼だとっ!!!」


 その瞬間鼓膜が破けそうなほどの声量で男は叫ぶ。


「何か知ってるんですか!!」


 いきなりの大声に意識が吹っ飛びそうになるのを堪えて人狼について強く反応した男の話を聞こうとする。


「いや、珍しい名前を聞いて驚いただけだ」


 首を傾げ男は俺の希望を打ち砕いた。


「そうですか、では俺はこれで」


 この男の思わせぶりな発言に少しイラッと来て俺はその場を離れて他の村人から話を聞くことにしたのだ。



「人狼?長年この村に住んでるけどそんな話は聞かないなぁ」


 ここは村の八百屋的な店、店の裏には畑がありそこで野菜を作っては村の人達相手に商売しているらしい。

 そこの店主のおやっさんに人狼の事を聞くもどうやら彼も人狼については知らないらしい。 

 長年住んでる人でも聞いたことがない人狼……本当にいるのだろうか。


「それよりも最近は畑が荒らされて野菜が無くなっててな……魔狼はそんな野菜なんて食べないと思うんだけどなぁ」


 と八百屋のおやっさんはちょっとした愚痴を俺に溢す。

 泥棒とかでもいるのだろうか?苦労してるんだな。


 続いては村の薬屋。    

 ここでは薬のほかに魔法に関しての道具も少し置いているらしい。

 そこの店の人はご高齢の女性で紫色の三角帽子にローブ「ザ・魔女」って感じで店中に謎の煙を焚かせていた。


「イーッヒッヒッ、人狼?そんなの知らないね。

それよりどうだい坊や。ちょっとした魔法だけで大爆発を起こすこの魔法薬はいらんかい?

少しサービスしておくよ〜」


「あっ結構でーす……」


 店の雰囲気的に苦手なので即座に店を後にした。


「人狼?知らないねぇよ俺は今からこの山の下の街に行くからどけよ」


 次に話を聞いたのはこの村の村長の息子。

 俺とはそんなに変わらない年齢なのになんかチャラそうな見た目で少し聞いた話だとよく山の下の街まで馬車をわざわざ呼んで遊びに行くそうだ。


 よくそんな金持ってるなぁ

 とちょっとした疑問を感じていると村長の息子はそのまま俺の横を通ってそのまま行ってしまった。


 ふと彼とすれ違った時になんか土の匂いがしたような……?


 その後も数時間経ってあたりは夕暮れ時、何人かに話を聞いたが特に何の成果も得られずに帰路へつく。


 宿泊する家に近づいた時、俺達を案内してくれた人……マークとたまたま出会った。


「おや?散歩ですか?」


「え、えぇ」


 少しフレンドリーに話しかけてくるマーク、少し彼との距離感が分からず少し戸惑いながら俺は返答を返す。

 まぁダメ元でこの人にも人狼の事聞いてみるか。


「そういえばマークさんは人狼って知ってますか?」


 別に他愛もない話をするかのように、情報なんか期待せずに気楽な喋り方で話す。



「……はははっ!なんですかそれ、そんなもこの村にはいませんよ」


 マークさんは少し間をおいて笑いながら返した、俺の質問がそんなにおかしいものなのか、やはり人狼についての情報は集まらないまま俺は帰った。


 その後は特に何もないまま……魔王がどこから仕入れたのかわからないが手に入れていた食材を使い食事をとり就寝……その間、魔王は俺に人狼の調査について聞いてはこなかった。


 彼が何を考えているのかわからず寝室の布団の中で悩み続けているせいで一向に眠れる気がしない。


 仕方がないから俺は少し外の空気を吸ってくることにした。

 元の世界ではあまりしなかった事だが、都会育ちの俺にはどうも自然の空気が新鮮に感じられるのだろう。



 外は暗く、月の明かりが静かなこの地を照らしていてそこまで前が見えないなんてことはない。

 まぁせっかくなら少し歩いてみよう、そう思いそこら辺を歩く事に。

 

 村とは別方向に歩いている為、建物が見当たらなず草原が一帯に広がる。

 そろそろ森も近くなってきたし帰るか、とそう思った矢先だった。


「う、うわぁぁぁぁ!!!」


 男の叫び声が聞こえ野次馬精神なのかは知らないが反射的に声の方へと向かった。


 声がする方に近づくとそこにはさっき村で見た鍛冶屋の大男が1匹の魔狼に襲われている姿が目に映った。


 男は腰を抜かしているのか尻もちをついた状態で震えた手でさっき仕上げていた刃を魔狼へと突きつけるがすぐに魔狼の前脚で弾かれ、男の手から離れてしまった。


「く、くるなぁぁ!!」


 このままだとあの男が危ない!どうする?

 俺が魔狼に勝てる確認なんてかなり低い、前だって戦うことすらできなかった。

 

 それにあの男は苦手なタイプだ助けたって俺にとって有益な事になるなんて思えない……

 だから……


 だから……なんだ?

 俺はまた……逃げ出す気なのか?

 いつもいつも逃げて逃げて、その結果が人殺しだ。


 ここでも逃げたりなんかして俺はあの子に……リティアにちゃんと顔向け出来るのか?


 そう思った時には既に体は動いていた。

 俺が何をするべきか、あの鍛冶屋の男を助ける……それは違う!


 俺は──!!


「うおっらぁぁぁぁ!!」


 鍛冶屋の男に飛びかかろうとした魔狼に側面からの飛び蹴りを喰らわせる。

 急な攻撃に魔狼はそのまま飛び転がり俺は鍛冶屋の男の前に立つ。


「俺はここで……変わるんだ!!」


「おまえさん……」


 後ろから目を見開きながら驚いて鍛冶屋の男が呟く。

 流石にあんな蹴り1発で魔狼が倒せたなんて思ってはいない、俺は男を逃す為の時間を稼いだのだ。

 このまま連れて逃げ……

 そう思って鍛冶屋の男を見た。


 魔狼に引っ掻かれたのか脚には深い爪痕が刻まれておりそこから赤い血が溢れ出していた。

 こんな脚じゃ……魔狼からは逃げられない。


「──グルルルッ!」


 まずいもう魔狼が起き上がってきやがった!

 魔狼の唸り声を聞き即座に振り返る……そして手遅れだと気付いた。


「──グルルルッ!」


「──グルルルッッ!!」


「──グルグルルルッ」


 既に目の前にはさっき俺が蹴りを入れたのも含めて3匹の魔狼がおりこちらを睨みつけていたのだ。


「まずっ──!!」


 3匹は同時に襲いかかってくる……

 あぁ、これは終わったな。

 そう思った矢先、俺のすぐ横を何か影が通り過ぎていったのを感じた。


 その影はあっという間に魔狼3匹へと襲いかかる、魔狼の右からの反撃を喰らいながらも腕?を噛みつかれるくらいで済ましてそのまま攻撃を続け3匹とも追い払ってしまった。


 

 月明かりがその影を照らす……

 二足歩行だったから人だと勘違いしていたその影は全身を美しい白銀の毛で覆い、黄色の眼光、細い手足には鋭い爪を付けているその正体を俺はすぐに理解した……


 これが人狼なのだと。

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