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転生者な俺と勇者な私  作者: みなと
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少年の決断

 暗く狭い洞窟の中、俺は自らを魔王と名乗った老人と相対していたのだった。

 魔王って確かリティアが言っていた魔族と一緒にこの国で暴れているってあの??

 そんな存在がなんで今俺と共に焚き火を囲んでいるんだ?


 俺は警戒し立ち上がり壁いっぱいまで下がって老人との距離を取る。


「どうしたのじゃ?そんなに離れて……」


 老人はいきなり動いた俺に一度目をやってから焚き火で温めてた液体を容器に注いでいた。

 どこかで嗅いだようないい匂い……これは。


「スープ……?」


 美味しそうな匂い……老人が持ってる容器からは暖かそうな煙……最後にあったかいスープを飲んだのは中学1年の時からかな……


 いやそんなことは今は置いておこう……

 今はこの老人に対して警戒を……


 そう思った矢先、グルグルグルと空腹を知らせる腹の虫が鳴る。

 

「まずはこっちに来てこれでも飲みなさい」


 腹の音を聞いた老人は優しく声をかける。

 ま、まぁ腹が減ってはなんとやらというやつだ……俺は顔を真っ赤にさせながらゆっくりと焚き火に近づいて座り老人からスープの入った容器を受け取る。


「ありがとうございます……」


「まったく驚いたぞ、お前あんな何もないところで何をしておったのだ?」

 

 容器を手渡した老人は俺に尋ねる。

 何をしていたか?その老人の言葉を聞いて俺は昨日の夜の事を思い出そうとする。


「何してたって……それは……そ、れは……」


 老人に対しての言葉の途中で記憶が蘇る……殴られた痛み刃物を突きつけられた時の恐怖そして無我夢中になった後の手に残る血の温もり……


「あ、あぁ、あぁぁぁぁぁ!!?!?」


 そうだ、俺はあの時2人の男に絡まれてそれで、それで……

 

「いかん魔力が暴走しておる……」


 自身が起こしてしまったことに対しての恐怖や後悔の念、そして自身への怒り……

 それにより魔力は暴発してしまう。


 洞窟全体に広がる荒々しい風の魔力を見た老人はそう呟きながらその魔力の発信源である俺へと近づく。


「俺は……おれ、は……」


 次第に視界は歪み薄れていく意識……

 このままではまた昨晩と同じ事が起こってしまう……


 しかしそんな事はなかった。


「しっかりせいっ!!」


 老人は荒れてる魔力の中俺に近づいて俺の両肩を強く叩いたのだ。

 その衝撃なのか、魔力は霧散し暴走は収まった。


「なん……で?」


 俺は魔力の暴走を止めてくれた老人にそう問いかけた。

 彼は自分を魔王だと名乗った、魔王というのは非情な存在でこんな状況なら俺を止めるのではなく、俺を殺すはず……そう思っていたかりだ。


「なぜって……?そりゃ目の前で大変な目に遭ってる人がいたら助けるのは当然の事じゃないか」


 彼は平然とした顔で何も変なことのないように話す。


「まぁ待て、お前の言いたいこともわかる

何故魔王の私がこんな事をしておるのかじゃろ?

まぁ確かに今までの魔王じゃったらお前の事を殺してたかもしれん……だけど私はそんな事したくないのじゃ」


 彼は自分に面と向かって話す。


「なん……で?」


 平和的なことを語る彼に疑問を投げかける。

 彼は少し戸惑った態度を見せたがすぐに胸を張って口を開く。


「なぜって……

私の夢は人と魔物が対等に暮らしていける……そんな世界を作りたい……

それだけじゃ」


 彼は少し照れくさそうにけれどもその言葉に誇りを持ち、俺に夢を語った。

 魔物と人が対等に暮らしていける……そんな馬鹿げたような妄想話……叶えられるのは相当に厳しい。

 

「そんな事……出来るわけ……だって魔物は人を襲うんだよ?」

 

 そうだ魔物とは常に人を襲う害をなす生物……そんなのと人が共に暮らしていけるなんて想像が付かなかったのだ。


「……確かに人に害を及ぼす悪き魔物もおる……けれど人を襲うことのない魔物だって少なからずおるのじゃ。

いい奴もおればわるい奴もおる、それは人にも同じ事が言えるじゃろ?

だから私は悪き者達をなんとかしてそんな善良な者達のためにより良き世にしたいと思っておる」


 おそらく……彼の言っているいい魔物もいるというのは事実だ。

 だってそう語る彼の目には一切の曇りが無く夢を語る少年のような無邪気さが見えたからだ。

 けれど彼の夢には……


「じゃあ俺はあんたの言うところの悪き者だよ……だって俺は…………

人を……殺したんだから」


 息を何度詰まらせたかわからないくらい止まってようやく自分のした事を彼に告白した。

 それは俺自身が殺しをしたということを自覚したということでもあった。


「そうか……まぁ深くは聞かん。

それならお前には2つの道がある」


 下を向く俺を見ながら魔王は語りかける。

 その言葉を聞き俺は顔を上げる。


「1つは街へ戻り自ら捕まり罪を償うか。

そしてもう1つは……私と共に来て私の夢を叶える手助けをするかだ」


 魔王の提案をただ無言で聞く。

 

「2つ目はただの逃げじゃ……下手をしたらお前の心に残ってる後悔を引きずるかもしれん。

けれど……私の夢を叶えたとき、お前の罪の意識は少しは晴れるかもしれん。

確かに1つ目の方が正しいとは思う、だが……私はお前の選択を否定はしない」


 そう言って手を差し伸べてくれる魔王。

 彼が何故自分にここまでしてくれるのかはわからない、彼の言うとおり今大人しく自主すれば心が落ち着くのかもしれないけれど……

 

 そんな時に思い浮かぶのはリティアの顔……彼女が今の俺を見たらどう思うだろう?

 人を殺めて、魔王と焚き火を囲んでる俺を見たらあの人は俺を軽蔑するだろうか?


 そんな事はわからない……けれど俺は……


 まだ終わりたくない


 そんな希望を抱いて俺は彼の手を取ったのだ。

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