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転生者の私は〝推し活〟するため聖女になりました!  作者: 玉響なつめ
第七章 かわいそうな せいじょさま

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第62話

 推しのために家事をして、秘書業務をして、鍛錬する推しを見つめて応援して……そんな生活、最高じゃん?

 まあその場所が問題なんですけどね!


(……堂々といちゃつけないし)


 部屋が別なことも相まって、アドルフさんも相当ストレスを溜めているようだ。


 オオカミの獣性を持つ人間は一途で特定のパートナーを得るとその相手とのスキンシップが精神の安定にも繋がるんだってアドルフさんが言っていたので、きっと普段と違う生活が不満でならないのだと思う。


 そうだよね、思いを交わして教えてやるって言われたあの日からスキンシップ過多だもんね!


(おはようのハグと挨拶、それからキスでしょ? 膝に乗せられることも結構あるし、お互いに身支度を手伝うのも当たり前だったもんなあ……夜のお休みのキスもハグも、ベッドも今は一緒じゃないし……)


 母国と違ってここリンドーン王国は、男女の仲について厳しい戒律が存在する。

 国教をほとんどの人が信仰していてその教えに則った生活を送っているとのことで、今回我々にも『厳しくは求めないけれどこちらの民を刺激しないためにも理解を示してほしい』と言ってきたわけだ。


 夫婦であっても基本は別室。

 人前でハグやキスなどもってのほか。

 公式行事で正式なパートナーであれば手を繋いだり腕を組むのは致し方ない。


 このすっごくストイックな生活なのに王様は愛人いるんだ……? ってちょっと不思議に思っちゃったよね!


「いやー隊長機嫌悪いわあ。なんとかなんない? アレ」


「って言われてもなあ……」


 わざわざ別室にしたことには勿論、他の理由もあるんだろうと思う。

 たとえば、聖女と騎士を物理的に離すことで効果(・・)になんらかの変化……まあぶっちゃけ、アドルフさんの獣性が暴走する傾向になったりしないのかとかそういうことを見ているんじゃないかと思う。


 ただ密談を防ぐとかそういうのだったら、もっと監視の目が合ってもいいと思うけどこの館には本当に侍女さんとか執事さんとか、非戦闘員系の使用人さんしかいない。

 ちなみに生活面でのフォローはとてもとても良い感じ。


 お貴族様っていい暮らししてんだね! ってみんな大喜びしてた。初日は。


 そのうちなんでもやってくれる人たちがいたり近くで控えられていることが逆に息苦しいってみんな嫌気がさしちゃったんだけども。

 生粋の庶民集団だからなあ……。


「そもそもさあ、私がアドルフさんとこに行こうとすると侍女さんたちから変なこと言われるんだよね」


「変なことぉ?」


 カレンが首をかしげる。

 

 そうなのだ。

 私たち女性同士がキャッキャしている分には彼女たちはただおとなしく控えているんだけど、私がアドルフさんのところに行こうとすると何くれとなく話しかけてきたり邪魔ってほどじゃないんだけど……。


 アンドレイ・スリコフの仕業か? とも疑ったけど、そうではないっぽいし。


「なんていうか、聖女様可哀想って」


「は? 何それ」


「ほんとそれよねー」


「……聖女様、可哀想……ですか」


 マヌエラも首をかしげるし、ヒルデも不思議そうだ。

 なんで私が彼女らに哀れまれているのか。


「私はそんなことないですけど」


「……だよねえ。彼女たちに尋ねても答えはくれなかったけど、そこから察するに私がアドルフさんと〝結婚している〟ことが〝可哀想〟って思われてるみたいなんだよねえ」


 私の言葉に、みんながキュッと眉間にしわを寄せた。


 そりゃそうだ、私たちは仲の良い夫婦だ。

 それは部隊のみんなが認めてくれるくらいにね!


 元々私が(・・)アドルフさんのことが好きで好きで大好きで推して推して推しまくって妻の座に就いた経緯があるので、可哀想なことなんてなーんもないんだけど。


 でも他国の人間から見ると、可哀想なのかなあってちょっと首をひねった。


「……拉致された人間、あるいは亡命者たちがあることないこと言ったのかもしれませんね」


「まあ、どちらかというとあることあることじゃないかなあー」


 これまでの『聖女』の歴史を考えるとどうしても苦笑しかできない。

 さてさて、どこからどう挽回して『かわいそうなせいじょさま』なんて言われないようにするべきか。


 私は大きなため息を一つ吐き出して、みんなと相談するのだった。


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