第61話
なんか……なんだろう。
推しの距離が近い。いやいいんだけど。
いやね?
アドルフさんって割とスキンシップ大好きなところがあって、両思いになったあたりからはそりゃもう距離感バグってるなって思うことが多々あった。
それは認める。
だけどまあね、契約結婚からの両思いになったからってのもあったんだろうなって私は思ったわけですよ。
戦争の終結、私はその立役者で命が失われる可能性があるほどの大ダメージを負って、しかもただただアドルフさんを推していたがために純粋な気持ちで結婚相手として願った……という事実を受けてアドルフさんが感激したんだからしょうがない。
言っておくが私が自意識過剰になったんじゃなくて、アドルフさんにそう言われたからそうなんだよ!
小っ恥ずかしいけど!!
そんなアドルフさんは今、ひっつき虫です。可愛いなあ、おい!
「……仕方がないですよ、あちらの指定で男女は別棟と決められたわけで……こちらも穏便に話を進ませるためには仕方がないって決まったでしょう?」
「この話し合いは勿論、今後の関係を保つためのものではあるが同時に獣化した人間と聖女の関係を探るためだ。その成功例たる俺たちはあいつらにとって格好の研究対象だろう」
「まあ、それはそうなんですけど」
そう……アドルフさんは今、ご不満なのだ。
それは私たちの寝泊まりする場所について、だ。
外交官含む第一部隊のメンツは王城内の客室。
そして私たち第五部隊は王城からほど近いとある貴族家の邸宅に滞在させてもらうことになったのだ。
そもそも全員を王城内に迎えずに分断などもってのほか……というわけではなく、あくまで戦争が終わったばかりだし大人数を呼んだことで民衆も不安がっているであろうこと、そういった面でも相手国の提案を呑んだからってゲオルグ陛下から直に言われているのでそこが問題ではない。
アドルフさんが納得していないのは、男女で部屋を分けられた点にある。
「仕方ないじゃないですか、同じ部隊内で夫婦なんて事例少ないですし……こちらの国は男女間の接触について、とても厳しい戒律があると聞いてますよ」
「だが俺たちはれっきとした夫婦だ」
「それはそうなんですけど」
うーん、駄々をこねる推し。
男らしくてかっこいいのにこんな可愛いところを見せてくるとかギャップ萌えがすご
い。
どうしよう、両思いになってからもさらに推すところしか見つからないって私の推し、すごすぎない……?
「そもそもアンドレイ・スリコフの屋敷というのが気に食わん。勝手に人の妻の手に口づけるようなやつだ」
ふおお、嫉妬……これは嫉妬ですか?
拗ねてるんですね!
あの後めっちゃ拭かれましたしね! 痛かったけどこれも愛だと思ったら全然オッケー!!
「……しかし私たちの任務を考えれば、好都合でもありますよ」
「それはそうだが。なら、なおさら俺たちは同じ部屋であるべきだ」
ゲオルグ陛下から内密な命を私たちは受けている。
アンドレイ・スリコフ……および元・聖女であろう彼の母親について調べ、亡命、もしくは拉致された聖女や神官の現状を調べるようにというかなりな難題である。
あの王様、めっちゃ私たちのことこき使うよね……。
いっくらある程度の内情と本性を知っているからって、使い勝手のいい部下と思われるの本当にいやなんですけど!?
まあ、アニータ様からもお願いされているからやりますけど!
ゲオルグ様のためじゃないよ、アニータ様のためだからな!?
(……はあ、戦争さえ終わればあとは楽隠居くらいの気持ちだったのになあ)
アドルフさんと思いを交わしたからってそこはそう変わらないだろうって思ったら、まさかのゲオルグ陛下が逃がしてくれなかったパターンでござる!
私は平和に!
推し活がしたいだけなのに!!




