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転生者の私は〝推し活〟するため聖女になりました!  作者: 玉響なつめ
第四章 高難易度ミッションをクリアせよ!

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幕間 最初から手放せるはずなんて、なかったんだ

「アドルフ・ミュラー。ちょっとこっちへ来い」


「しかし」


「アニータに任せる以外今はない。それよりも聞かせろ」


「……何をでしょうか」


 王城に報告に来て、王子とイリステラの不可思議な会話を耳にしてなんとなく、理解したことがある。

 ゲオルグ王子はイリステラを『最弱の聖女』と呼び聖女を『使い捨ての駒』と呼ぶが、決してそれは彼女たちを卑下するものではない。

 何かしらの意図がそこにあるのだろうが、それを明かさない。


 だが今回、イリステラの言動と王子の今の対応で、俺は混乱していた。


「お前、結婚してからあの女と契りを交わしたか」


「……は?」


 問われた内容はあまりにもプライベートなこと過ぎて、思わず声が低くなってしまった。

 不敬だと言われてもこればかりは『何を言っているんだ』としか思えず、俺は口を噤む。

 口を開けば、悪態を吐いてしまいそうだったからだ。


(そんなことを話している場合じゃないだろう!)


 イリステラが、倒れたというのに。

 きっと無理が祟ったんだ。

 あの山で何かがあった。俺が見ていない、何かが。


 イリステラはいつも何も語らない。

 いろいろなことを教えてくれるし、俺の、俺だけじゃない仲間たちの心も救うほどに甘やかな言葉をくれるというのに、彼女は肝心なことをいつだって言わない。


(傍にいることすら、許されないのか)


 苛立ちが募る。

 だが、そんな俺を見てもゲオルグ王子は怒らない。


「……あいつ、何も話していないな?」


「……どういうことですか」


「聖女は特定の男と心を通わせた相手と肉体の契りを交わすことによって、その能力を発揮しやすくなるとされている」


「……なに……?」


 何を言っているんだ。

 だが同時に、納得もしていた。

 

 イリステラは以前、言っていた。

 聖女は、癒すのだと。

 治癒を使いすぎると、命に関わるのだと。

 

 その話を聞いて、俺は命を削るようにして俺たちのような獣化した人間の、ボロボロになった魂を癒す聖女は誰に癒してもらうのだろうと思っていた。


 聖女を守るための楔役として、伴侶が獣神部隊(ビースト)から選ばれる。

 ではそれの本来の目的が、聖女を外部の敵から守ると同時にその『疲弊した命』を守るための伴侶という意味であったのなら?


(何故、イリステラはそれを秘密にしていた?)


 答えは簡単だ。

 俺が、彼女に『愛さない』なんて宣言を初日からしたからだ。


(馬鹿な)


 守りたかったんだ。

 選んでくれて嬉しいと思う反面、俺のような汚れたケダモノの傍にいるのは苦痛だろうと。

 いつか別れるならば、最初から傷つかないようにして送り出してやるのがいいだろうと思って。


「……イリステラは聖女たちに預ける」


「俺は」


「お前の責任ではない。自分の命に対して、あいつ(イリステラ)がお前に負担をかけるよりも黙っておくことを選んだだけだろう。……ずっと、憧れていたそうだからな」


 殿下は教えてくれた。


 彼らが何を狙い、今回の鉱山にいくことを目的としていたのか。

 そしてその狙いの先が、王権を手にして戦争を終わらせることであること。


 そのために、神鳥の願いを叶えるべくその意思を重んじる一部の聖女たちと、ゲオルグ王子が秘密裏に数年前から計画を練っていたこと。

 そこに、イリステラがいたこと。


(何も、知らなかった)

 

 本来ならば、彼女の伴侶に選ばれるべきは事情を話してあるゲオルグ王子の腹心、つまり第一部隊の騎士となるはずだったこと。

 だがイリステラの希望と、方々の勢力からノーマークである俺が伴侶である方が何かと都合が良いこともあって俺たちは結婚したということ。


「……戦争以外にも、命の危険にさらされるんだ。好いた男の方がいいだろう」


 ゲオルグ王子はそう、言った。


 好いた男。

 それは俺のことなのか。

 いいやそれは確かにそうなのだろう。

 彼女が俺に向ける眼差しは、いつだって温かくて、甘かった。


 一線を引いていたのは、俺の言葉を守ってのことだったのか。

 だとしたら、そうまでして何故、こんな男に。

 そんな愛情を向けられたら、俺は。


(ああ、これを愛と呼んでいいのなら)


 好いてもらって、この手を離したくないと思ってもらいたいと願った。

 彼女が笑ってくれたらいいと思ったんだ。


 だけどもう。無理だ。

 彼女を失うなんて、許せるはずがなかった。


「イリステラ」


 教会内部に眠る彼女。

 聖女長の、命がけの術で彼女は命の灯火を辛うじて留めた。

 いつ目覚めるかはわからないが、それでも命を繋ぎ止めることができたのだ。

 体が治ってくれば、自然と目覚めるものらしいが……聖女長はいつかこういう日が来ると思って、能力を温存していたんだそうだ。


 代償として、聖女長はその力を失った。

 獣化もできず、治癒の力も持たないただの女性になってしまった。


「目覚めたら、覚悟しろよ」


 俺はもう、お前を手放してなんかやれないと覚悟を決めたんだ。


これにて第四章終了です。

明日から第五章突入だよ!!!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「聖女は特定の男と心を通わせた相手と肉体の契りを交わすことによって、その能力を発揮しやすくなるとされている」 恐らく『特定の男』か『心を通わせた相手』のどちらかだろうとは思ったので…
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