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転生者の私は〝推し活〟するため聖女になりました!  作者: 玉響なつめ
第三章 引力には逆らえない

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第26話

 盛大な愛の告白()をしてしまってから、アドルフさんが一層おかしくなった。


 いやおかしいって表現はだめだな、これまでの過保護にプラスして距離ができてしまったのだ。

 家での施術は断られることもないけど、歓迎されてない雰囲気になってしまった。


(……まるで、最初の頃みたい。ううん、最初より距離がある、かな)


 やはり幼馴染の女性に対して、失礼な行動をとったことが原因だろうか。

 落ち込む。


 それでも家事はきちんとやってるし、なんだったら第五部隊の宿舎についてみんなが訓練している間は掃除だってしちゃうし賄いも作るし、隊長の執務室にあった書類も分類しておいたりと……やることがたくさんあると、気が紛れていいねえ。


「イリステラさん、大丈夫ですか?」


「うん、マヌエラ……大丈夫。今日のお昼は具だくさんのスープとパンだよ。サラダはそっちから好きに取ってね」


「ありがと。って本当に大丈夫?」


「うん。アドルフさんは?」


「隊長なら執務室に行ったよ。……アンタがいろいろやってくれて本当に助かるけど、無理してない? 大丈夫?」


 マヌエラもカレンも心配するほど、私は酷い顔をしているのだろうか。


 アドルフさんと過ごす日々が当たり前のように幸せで、彼を幸せにするつもりがいつの間にか自分ばかりが幸せだったんだなと思うととても胸が苦しい。

 せめてアドルフさんの負担が減るようにと書類を分類するくらいはさせてもらっているけど、それだってもしかしたら余計なお世話だったかもしれない。


 ついそんな弱音をマヌエラとカレンに吐いてしまうと、彼女たちは顔を見合わせて私を抱きしめてくれた。


「ごめんね、うちの隊長が」


「本当にごめんなさい」


「え? え?」


 何故かヨシヨシされてしまった。

 美女二人からのヨシヨシとかどんなご褒美だ。


 そんなことをしていると食堂に現れたアドルフさんがきょろりと視線を巡らせて、私を見て、料理を見て……難しい顔をしていた。


 みんながワイワイ食事をする中で、ツカツカと歩み寄ってきたアドルフさんが私の前に立つ。


「イリステラ」


「はい」


「……王城から呼び出しがあった。悪いが、今日は帰れそうにない。だから今日は宿舎に泊まれ、俺の部屋を使うといい」


「え? 家に戻って……」


「いいから俺の部屋を使え。決して単独行動をするな。いいな?」


「……はい」


 有無を言わさない強い口調。

 心配してくれているのだろうけれど、何も言わない。


 でも王城からの呼び出しということは、きっととても大切な話があるのだ。


「隊長言い方つめたーい」


「もう少し優しくなさらないと、奥様に愛想を尽かされてしまいますよ?」


「お前たちはさっさと食事を済ませて仕事に戻れ」


 私の両側でまだ抱きしめてくれている女性陣が文句を言ってくれるけど、それで動じるアドルフさんではない。

 そんな冷静なところもいい……さすが推し……どこまでも推せる……。


 思わず心の中で拝んでいる私に、アドルフさんはチラリと視線を向けてふいっと背を向けた。


 だけどすぐにはそこを去らず私の名前を呼んだ。

 なんだろうとジッと彼の背中を見つめていると、躊躇ったようにアドルフさんは肩ごしに視線を向けて「行ってくる」と短く言ってすぐに去って行った。


「あっ、あっ、い、行ってらっしゃい!」


 思わずそんな言葉を大声で言ってしまって恥ずかしい思いをしたが、さすが推し!

 私の情緒をこんなにもジェットコースターにできるのは、アドルフさんだけですよ!!


 周りが微笑ましいと言わんばかりの目を向けてきたが、アドルフさんが『いってきます』と言ってくれただけでも私は幸せなので許してやろう!


(しかもアドルフさんの部屋に泊まっていいとか幸せ)


 まあ掃除で何度か足を踏み入れたことはあるんですけどね!

 元々私物の少ない人だから本当に何もない、備え付けのベッドとタンスと机があるだけっていうね……もうちょっと物欲持ってもらおう。


 そんなことを考えつつ今日の夜の賄いも私に作らせてもらうことにして(本当は隊員たちの中で当番制である)、届いた食材を見分している時だった。

 アドルフさんが明日こちらに戻ってきたら好きな食事が食べられるように何を作ろうかな、なんて考えているとそれだけで幸せ。


 推しの体は私の作った食事でできている!

 あっ、なんかヤンデレっぽいけど違いますからね!!


「……あんた、本当になんなの?」


 野菜を持ってきた人の中に、なんとエミリアさんがいたのだ。

 私は思わず目を瞬かせてしまった。


「え? 何がでしょうか?」


 咄嗟に心にある聖女の仮面を被ったけど、間に合っただろうか?

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