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転生者の私は〝推し活〟するため聖女になりました!  作者: 玉響なつめ
第十三章 その喧嘩、買ったらぁ!!

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第124話

 とはいえ、得体の知れない何かが近くに迫っているってのはいい気分じゃない。

 ずーっとずっとアドルフさんとこの狭い部屋に二人きりってのは悪くないどころか最高オブ最高ではあるものの、逆を言えばここ以外安全な場所がないってのは袋小路も同然ってことである。


 今はまだ無自覚に私たちへ離婚を促す言動を取っている女将さん他、町の人々がどうしてああなっているのか原因がわからないと、何が起こるか心配になるじゃない?

 洗脳系なのか、催眠系なのか……いずれにしろ性質(たち)が悪いのは変わらない。


 それがさらに強まって実力行使……というか、攻撃性を持った時に私たちは一般市民に対してどう行動するかってのが問われていることにも繋がっている。


「……陛下からの指示はないんですか?」


「今は静観しろと。俺たち二人で原因を探るのは危険だという判断だな。自衛に努めろ、だそうだ」


「ぐぬぬ」


 この悪天候続きのせいで近隣の橋や道がガッタガタでその対応に追われているのは大前提で、諸悪の根源であろう使節団を連れて行ってもらうこともままならない。

 せめて応援をと思ってもそれを向かわせることも難しい。


 むしろ今は国内の孤立した民間人たちを順次救う方が大事……ということはよくわかる。


 陛下もいろいろと苦慮していることだろう。

 アニータ様も今頃聖女長様と連携して、治療にあたる聖女たちの指揮を執っていることだろう。


 それなのに私たちはここで籠城するしかできないとは!


「……アエスさんと他のウーヌの神官たちは同じ意見なんですかね?」


「どうだろうな。彼らとの接触はほぼない。あのアエスという神官が俺たちと接触していることを知っているかどうかもわからないほど、与えられた部屋から出てきていないらしい」


「そういやジャンさんも最近姿を見せませんね」


「悪天候の影響で最短路が潰れたため、迂回しているそうだ。俺の装備一式を持って戻る予定だが……」


「……戦闘は起きないのが一番なんですけどねえ」


「この雨が早く止んでくれることを祈るばかりだな」


 二人して窓の外を見上げる。

 厚い黒雲からは、相変わらず絶え間ない雨が叩きつけるようにして降り注いでいた。


 ふと、気がつく。

 いつものように(・・・・・・・)ここを尋ねてきたらしいアエスさんが見上げていたことに。

 気づいた私たちに、満面の笑みを浮かべているような気がする。


「……アドルフさん」


「毎度ご苦労なことだ。いくら言われたところで俺は死ぬつもりはないし、イリステラと別れるつもりもない」


「……町の人たちの言動には影響を及ぼすのに、私たちには一切ないってのもどういう能力なんでしょうね」


「さあな。だが……そろそろあちらも焦れていると考えれば、ボロを出してくれることに期待するしかないな」


「そんなに上手く行きますかね?」


「少なくとも俺が見た感じでは、あの神官は間諜向きの性格じゃない。自己の功績を誇り、自ら〝予言の神子〟などと名乗っている辺りを考えるに自己顕示欲が強いタイプだろう。そういうやつは無視されたり自分の思い通りにならないことが許せないはずだ。……と、ヘルマンが言っていた」


 ああー、なんかわかるかも。

 ヘルマンってそういう分析得意だし、この場にいてくれたらアエスさんのことお任せしちゃえるのになあ。

 こういう時にこそ役立てよ! お前の出番だろ!!


 脳内でヘルマンが『俺は陛下の命令がなければ働かんよ』ってウィンクしているのがこれまた腹立つんだよなあ!


「それじゃあ今日はどうしますか?」


「……せっかくあちらが来たんだ。俺たちの夫婦仲が変わらず円満だと見せつけてやればいい」


 すりっと鼻頭をこすりつけるようにして悪い笑いを浮かべるアドルフさん。

 はわ……かっこいい……!!

今年は書籍化も含め『推し活聖女』を楽しんでいただきありがとうございます。

まだまだ続くイリステラの推ししているつもりでされているかもしれないな日々をお楽しみいただければと思います!

年明けには書籍第二巻も発売されますので、そちらも併せてお楽しみいただけたら幸いです。


それでは良いお年を!

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