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転生者の私は〝推し活〟するため聖女になりました!  作者: 玉響なつめ
第十三章 その喧嘩、買ったらぁ!!

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第125話

新年あけましておめでとうございます。

ちょうど更新の本日、書籍版『推し活聖女』第二巻発売です!

そちらも楽しんでいただけたら幸いです! よろしくおねがいしまぁぁあす!!

「こんにちは、お二人とも!」


「……こんにちは、アエスさん」


「今日もお二人揃って行動ですかあ? 仲良しさんですねえ~」


 にっこにこの彼女はの言葉はその言葉だけならとても愛想の良いものだ。

 けれどそこに含まれる悪意は隠す気もないのだろう、嘲るようなその笑みも、見下すようなその眼差しも。


「……そろそろみなさんにも言われていますしぃ、諦めて正しい(・・・)世界線に戻るよう努力しませんかあ~?」


「あら、なんのことでしょう。ねえ? アドルフさん」


「わからないな」


 私の問いにアドルフさんがふっと笑い、私のことを抱き寄せる。

 あからさまな挑発だけど、アエスさんは馬鹿正直に受け止めてくれたらしい。


 うーん、そこまで素直だと逆に心配になるレベル。


(……アエスさんがこの状況を仕掛けているんだとしても、やっぱり黒幕って感じはしないよねえ)


 天候に関しては本当に偶然だろうと思う。

 けど、表情は隠せないし誤魔化す気もないし、周りに影響を及ぼしているのは自分です! って言って憚らない彼女はあまりにも……こう言ってはなんだけど小物臭がするっていうか、少なくとも大物じゃないっていうか……。


(じゃあそれを好きかってさせているウーヌの人たちが怪しいのか? っていうとそれも微妙なんだよな)

 

 ゲームの展開通りに進まなかったことが気に食わない、それはまあ理解できないでもない。

 でもだからといってみんながみんな、オーベルージュという少し離れた国の勝敗に興味を持つだろうか?

 いいや、彼女の言う正しい世界になるんだとしても、オーベルージュは数年後には今と同じように穏やかな暮らしが待っていたわけで……トータル的に言えば、世界にはなんの意味もないはずだ。多分。


 多分、というのはあくまで(・・・・)私の主観であって、事実かどうかの確認なんかしようもない。

 だって世界がどんな変化をしたかなんて、一個人でそんなこと把握できる?

 私は私の周りの人が幸せならそれに越したことはないと思っているし、他の人がそれで不幸せになったと言われても見知らぬ誰かよりも目の前の推しを……そして私を救ってくれた人の助けになることを選ぶしかできない。


 この世界には、救えなかった命なんてごまん(・・・)と存在するのだ。

 私は戦時中、無力な下級神官だった。

 死と隣り合わせどころか目前に迫った時に第五部隊の登場がなければ、私はきっと……だったし、そんな私はあの日の前も、あの日の後で聖女になるまでの間も、多くの死を見てきた。

 私が救えなかった命も、他の人が救えなかった命も、見てきたのだ。


「正しい世界なんて誰が正解を出すのでしょう。私たちはただ精一杯生きている、それでいいじゃありませんか。ねえ、アドルフさん」


「……そうだな。大切な人が隣にいてくれる幸せを守れるようになった。俺にとってはこれがただしい世界だな」


 ひぃ、推しが! 甘い!!

 いえ、私も大切な推しが隣で今日も幸せだって笑ってくれるこの世界こそが正しいですけどね!?


 私がその甘さに密かに悶えていると、アエスさんがぎっとその目をつり上げる。

 おっと可愛い顔が台無しだゾ!


 なーんて冗談を言える雰囲気では勿論なくて、私たちは身構えた。

 いや、アドルフさんは泰然としていたけどね。さすが推し、落ち着いてるう!

 私もこのくらい冷静でありたいものです。うん。


「いい加減にしてよ! 幸せなアドルフ・ミュラーなんて需要ないんだからね!!」


「なんですって、聞き捨てならん!!」


 聞き捨てならんよ! 話にならん!

 とはいえ、馬脚を現すとはまさにこのこと。


 アエスさんはだんだんと足を踏み鳴らし、その姿はまるで癇癪を起こした小さな子供のようだった。


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