第12話
そりゃね、アドルフさんからしてみれば、ある程度は信頼できる関係になったとはいえ未だ完全な信頼にはほど遠い『お飾りの妻』と可愛い部下たちを秤にかけたらそりゃ部下を取りますよね。
一ヶ月ちょっとの私と、長年の付き合いの部下。
どっちが大事かなんて明白すぎて膝から崩れ落ちて『そんなことないのにぃ~仲良くしたいのにィ~!!』って大声で喚いてゴロンゴロンしたい勢いだわ。
いやいい大人なんで、もちろんそんなことは実際にはいたしませんけども。
それに一応これでも『職業:聖女』なんでね、人の目があるところでは優雅な振る舞い(笑)をしないといけないのだ。
どこまでいっても付け焼き刃でしかないんですけどね!!
教会と国、そして聖女と兵士。
お互いを信頼しあわなきゃいけないメンバーが揃いも揃って不信感しか持っていないのだから難しい話だ。
(そもそも獣人族が退化していったのは種の存続をかけて人間族と交わっていった結果で、本能が残っているのは遺伝子的に当然のこと。暴走するのは肉体が遺伝子に負けた結果で、能力と思考が乖離したことによって魂がズタズタになってしまう……)
祈りのポーズを止めて、私は女神像を見上げる。
ゲームでは実際、女神様が出てくる。
女神様……ということになっているが、実際には聖なる鳥だ。神様の使い。
この国の国旗にもなっている、それはもう美しい鳥だ。
神様の使いたるこの鳥を神鳥様と呼び崇める獣人族。
神鳥様は卵を孵化させるのに、特別な鉱石を必要とする。そのために唯一の産出国であるこの国にいるのだ。
卵が孵化すると、親鳥は天へと還る。
番がいるわけではなく、単体生殖しているらしい。不思議だ。
とにかく教会によると神の遣いだかららしいんだけど、とにかく人間の世界を見聞きして、そして空へと旅立つんだとか。
卵が孵化しなくなった時、神様と人間との繋がりが途絶えるんだってさ!
ちなみにその鉱石が何故この土地にだけ出るのか、枯渇しないのか、そこら辺はゲームでは語られていない。
だがある時、戦争が始まって国王が神鳥様に相談した。
毎年、毎年、規定の量を納める代わりに力を貸してくれないか、と。
実はそれが回復能力を持つ人間の始まりだったのだ。
時の王様が『このままだと神鳥様が望む鉱石が出る山が侵略者に奪われてしまう。侵略者たちの狙いは鉱石だ。神鳥様のために戦って、獣化してでも追い払うつもりが、我々はすぐに暴走してしまうから力を貸してほしい』というようなことを訴えたのだ。
その結果、神鳥様はならば魂の修復を行えるようにと自分の血を分け与えたのだ。
ちなみにそれを受け取ったのは、国王の連れていた小姓で、その小姓の血筋から回復能力を持つ人間が増えるはずだと神鳥様に言われた王様は、とにかく小姓にいろんな女を抱いて子を成せと命じたというクズ発言が……おっと、口が悪くなりました。
(ってことがゲームの終盤ではわかるわけだけど)
まったくもって何も知らされていない我々からするといい迷惑だな。ぷんすこ。
ならなんで平民にも生まれてるんだって話になると、そこはまたややこしい。
小姓があちこちでばらまいた種は無事に芽吹いたけど、それでも戦争の激化では風前の灯火。
鉱石が採掘できる土地も争いが激化して、神鳥様も困ったもんだってことで回復できる人間を増やして従順な獣人族に頑張ってもらおう! ってなったらしい。
(……本当にいい迷惑だよね)
その結果、アドルフさんたちみたいに使い潰される人たちが、出るのだから。




