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神山司の思惑

今回偶々見かけた親衛隊二人と絡まれてる会計に茶番を披露した。

どんだけすれ違ってんだお前らと呆れて、そろそろ腹割って話せと思ったからだ。

チビ二人を追っ払って会計と話してみれば、どうやらこいつも色々と考えて分かっているようで。

それならもう俺の出番はなさそうだと、自分で考えろと言えば目に見えて落ち込みやがった。

くそ、俺が動物好きだと知っての行動だとしたらこいつ計算高いぞ。



「…神山君、説明してもらえますか」



二人が戻ってくるか否かの賭けには勝った。

二人は俺の予想通り、隊長の羽川に連絡を取って助力を仰いだんだ。

まぁ、まさかこんなに隊員も集まるとは思ってなかったけどな。

そして今、目の前の羽川は怒っていた。

そりゃそうだ、きっと羽川は会計と『遊ぶ』と言った神山司が居るとしか聞いていないだろうから。



「大塚様に、何をしたんですか。答えによっては…ボクたちは君に対抗しますよ」



屋上での弱々しい雰囲気はどこへいったのか、随分と男らしい顔つきになっている。

それ程までに、会計が大切なんだ。

最恐の赤髪不良の俺に喧嘩を売るくらいには。

後ろの奴らも殺気立ってるし、会計はボケっと突っ立ってるし。

もっとしゃんとしろよ馬鹿会計が。



「俺に対抗、なぁ…どうするつもりだ? 言っておくが、俺は喧嘩売ってくる奴には容赦しねぇぞ」

「っ、何でっ、ボクたちは君を信じて…っ!!」



助けを求めたのに、その言葉は音になることなく羽川自身によってその内へと閉じ込められた。

俺に助けを求めたのは、各隊長の独断行動だったらしい。

俺を信じて助けを求めたのに、か…あいつらと同じようなことを言う。

俺の大切な、俺が裏切った二人の友達と、同じ表情で。

フッと一瞬目を逸らしたが直ぐに戻す。



「お前が俺の何を知ってるのか知らねぇけど、人任せにすんのはお門違いじゃねぇの?」

「それが、気に障ったんですか。だから君は大塚様に危害をくわえようとしているんですか」

「さぁな? ただコイツがムカつくだけだよ、俺は。全然喋んねぇし、何考えてんのか分かんねぇし」

「ッ黙りなさい!!」



俺の言葉に肩を震わせたのか、それとも羽川の怒声に驚いたのか。

大塚は顔を上げて羽川を見ていた。



「君に大塚様を愚弄する権利はない!! 君こそ大塚様の何を知っている!? 大塚様は心優しい方です。動物への愛情も知っているし、花壇に水やりをしている姿も知ってます」



花壇…もしかして、保健室の裏の花壇か。

そう言えば管理者なんていないだろうに枯れることはなかった。

動物だけじゃなく植物まで世話してたのか、コイツ。



「そんな優しい大塚様をボクたちは知っているから、ここに居る。護るために、ボクたちが居る。神山君、君が大塚様に危害をくわえようとするのなら、ボクたちは全てを掛けてでも君と戦います」



ざっ、と羽川の背後の隊員たちが俺を睨み付けた。

何ぼけっとしてんだ会計、お前ここまで想われといてまだ信用ないとかほざくつもりか。

お前にも届いただろ、コイツらの言葉が。

次はお前の番じゃねぇの。

俺はどんっと会計の背中を押した。

親衛隊は更に怒りを露わにして、会計はたたらを踏んで振り返る。



「メンドくせぇ、テメェらに付き合ってやるほど暇じゃねぇんだよ俺は。会計には手は出さないからもうここには来るんじゃねぇぞ」



これで会計は親衛隊と話すだろ。

ここまでしてやったんだからそれでも何もしなかったら、今度こそ殴る。

そうして俺はその場を去る…つもりだったが、突然腕を引かれて前に進めなかった。

何だよ誰だよと思って後ろを見れば、まさかの会計。



「何のつも…」

「違う」

「あ?」

「大塚、様…?」



違う、と口にした会計は俺の腕を掴んだまま俺の顔をどこか必死さを含んで見ている。



「違う、…神山、違う」

「大塚様、何を…」

「おい会計、離…」

「神山、優しい」



思わぬ言葉に俺と親衛隊たちは目を見開く。

そんな反応にもお構いなしに、会計は一生懸命言葉を紡いだ。



「神山、俺…と、親衛隊、しんぱ、い、して」

「え…」

「危害、違う。おれを、諭し、て…」



会計はぎゅっと力強く、俺の腕を掴んだ。



「神山、悪くない。…悪いの、おれ」

「かいけ、い様…」

「大塚様…」

「神山誤解、…だめ」



親衛隊に向かってそう言った会計は、再び俺の方を見た。

前髪で隠れている目が、真っ直ぐに俺を見ている。

…なんでお前、俺に対して必死になってんだ。

相手が違うだろ、相手が。

お前が喋って自分の意思を伝えるべきなのは、親衛隊だろうが。

冷たく突き放して俺は退場すべきなんだと思う。

そうだと、分かってはいるけど。



「…お前、馬鹿だな。どっちが優しいんだよ」

「かみ、やま…」

「分かった、分かったから。せっかくお前が言葉をくれたんだ。俺が無視するのは道理に合わねぇな」



くしゃりと、会計の頭を撫でてやった。

すると会計は嬉しそうに顔を綻ばせる。

くっそ、大型犬みたいで可愛いとか思ってねぇぞ。



「羽川と親衛隊隊員」

「え…」

「さっきは悪かった。会計のことを故意とは言え愚弄した」

「神山君、どういうこと…ですか?」

「コイツとお前ら、もっと話した方が良いと思って勝手に動いただけだ」



つーか会計、お前はいつまで俺の腕を掴んでおくつもりだ。



「…じゃあ、遊ぶとか喧嘩とか、嘘…?」

「…まぁ、そういうことだ」



ざわざわと親衛隊たちが騒ぎ始める。

だろうな、そう簡単には信じられないだろ…って、は?

何でこいつら泣いてんだ?



「会計様が、笑ってらっしゃる…っ」



笑うだけで、人を泣かせるなんざ並大抵のことじゃないぞ…すげぇ影響力だな。

俺は何となく面白くて、ぶはっと笑った。

すると親衛隊たちは目を瞬かせて俺を見る。



「か、神山君?」

「いや、何かお前ら、ほんと会計のこと好きなんだと思ってな。良いんじゃねぇの?」

「……っ!!」



そう言うと、ばっと顔を赤くした奴らが多数。

笑われたのが嫌で怒らせたか、しくったな。

これは本当に俺は退場した方が良さそうだ。



「おい会計、後はお前一人で出来るな、離せ」

「い、や!」

「はぁ?」

「神山、一緒いる!」



おいおい勘弁しろ、どんだけビビってんだこいつ。

つーか大声出せるようになってんじゃねぇか。

すると呆然としていた羽川が、クスクスと笑った。



「大塚様、神山君のことがお好きなんですね」

「すき、友達」

「はぁ!? 何勝手に友達認定してくれてんだテメェ!!」

「ともだち…」



こいつ、自分の見せ所分かってやがる…っ!

ぐぬぬと俺が唸っていると、羽川が俺に歩み寄って来た。



「これから大塚様とボクたちで親衛隊会を開きます。神山君、君も一緒に来ませんか?」

「俺は部外者…」

「神山、くる」

「はい、分かりました」

「おい!!」



勝手に決められた、タッグ組みやがってもう仲良しじゃねぇか!

そうして俺は図体に見合った力で会計に引きずられて生徒会会計親衛隊会とやらに無理矢理出席させられた。

その間会計は俺の腕を離そうとしなかった、何でだ。

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