第7幕'真実'
……
目の前に広がる光景を、一つずつ頭が整理していく。血だまり。真っ赤な手に握られた真っ赤なナイフ。そして横たわる一つの遺体。母さんだ。…僕が殺した。ボくガころシタ
怖いくらいに落ち着いていた。何故だろう?信じられないような仮説が、ふと浮かびあがった。
そしてそれは、一瞬で真実となった。
……
「いやー本当によかった!あんなクソみたいなやつ、死んで当然なんだよ。よくやったよ君は。
……聞いてる?」
いつの間にか、ホープが降りてきていた。ナイフを手に持ったままソファに座る僕に、ヘラヘラと話しかけている。でも、言わなきゃ。これが本当なら、また同じような悲劇が…いや。もっとひどいことがおこるだろう。
「なぁ。お前、一番最初に天使には寿命があるって言ってたよな?もし、天使が死んだとしよう。じゃぁそこに天使がいなくなったら、次の天使はどっから出てくんだ?」
ホープの表情が突然固くなった。
「お前はなんでここにいる?そもそも、各地で災害は起きているよ。それが悪魔のせいだとしたら、そこの天使は死んだってことだよな?」
ホープはまだ黙っているので、とどめをさすことにした。
「リクエスト。天使の寿命を教えろ。」
「五十年…」
とてもか細い声で答える天使を見て、自分の考えが間違っていないことが分かった。
もう躊躇はいらない。全部話せばいい。だって、これが真実なのだから。
「天使が死んだら、新しい天使はどこから生まれてくる?生まれ変わる?だったら寿命なんていらないよなぁ?じゃあ神様が一から作る?これも違う。そんなことなら、この世に災害なんてないはずだ。だとしたら、答えは一つ。…寿命の近い天使を人間界に送り出し、その人間を宿り木として、新たな天使を生みだす。…これが、おまえがここにいる理由だ。」