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エレベーターの扉が開くと、金属バットにボールが激しくあたり、金属音がテンポよく響いていた。
人はまばらで、カップルは居ても、女性一人という客は見当たらない。
私は、財布から1,000円札を1枚取り出し両替機に挿入した。
両替機の中の何かが、挿入したお札を千円と認識して、100円玉が10枚が両替機の中から出てきた。
両替機から出てきた10枚の100円玉を手に握りしめてバッターボックスのあるブースへと向かった。
だいぶサビついた金属の扉を引いて、私はブースの中へと入った。
バットを握る前に、試しに手の匂いを嗅いだが、金属の臭いが手にびっしりと付いていた。
ホームベースの先の隣のバッターボックス前のネットの前にバットが三本、筒に入って置いてあった。
長い金属バット、中くらいの長さの金属バット、さらに小さい金属バット。
長さから察して、男用、女用、子供用だろうかと私は思った。
握りしめていた100円玉を、ブースの中にあるコイン投入機の上に積み上げるようにして置いた。
そして、三本あるバットの中から、中くらいの長さのバットを手に取り、ホームベースの隣のバッターボックスへと入った。
一度、試しに素振りをする。
わたしは、野球の経験はもちろんのこと、ソフトボールの経験すら無い。
ぎこちない体の体重移動とバットさばきによって、滑稽なスイングを堂々と披露した。
笑い声が聞こえなかったのが幸いである。
そのあと、何度か素振りをしたあと、私は満を持してコイン投入機に100円玉を投入した。
バッターボックスの先に、大きなピッチングマシーンがあった。
液晶がついていて、プロ野球選手の映像が映っている。
ピッチャーの投球フォームと同時にボールが放たれる仕組みのようである(隣のブースの人を観察し、気がついた)
液晶の中にいるプロ野球選手は、両腕を天高く掲げ、左足を上げて、右腕を円形に振った。
液晶の中の選手のリリースポイントの位置に、穴があり、腕がそこに到達すると、ボールが勢いよく放たれた。
私の一心不乱の見よう見まねスイングは、空を割いた。
そしてボールは、後ろのボール受けのネットに当たって跳ね返った。
時速80キロのブースを選んだつもりであったが、結構早かった。
プロ野球選手は、140、150キロを平気で打ち返しているはずだ。私は、プロ野球選手のすごさを思い知ったのだった。
その後、私のバットは空を割きつづけた。何度バットを降っても、バットがボールに当たることはなかった。
しかし、最後の1球でバットにボールが当たった。ビギナーズラックというやつである。
金属バットが少し重くなるが、私はその勢いに負けじと力を込めて打ち返す。
しかし、ボールは前に飛ぶことはなく、真上に打ち上がった。
1,000円玉を10枚に崩したが、私は1回でやめた。
私には、あまり野球という競技は向いていないようである。




