番外編:壷の中身は何じゃらほい。
ふっふぅー! おぅ、いぇあっ!
と、いきなりごめんなさい。つい最近、このコロボックルの世界でぷるぷる王国の王女様やってます。ぷにぷに王国の王様に一目惚れしたあの私です。
覚えてますか?
え? 何で叫んでたか?
そうそう、やばいよやばいよ。何がやばいって今にも鼻血を吹きそうな私マジやばい。
何故って?
よくぞ聞いてくれました!
なんと! 今私の腕にはあのころころ王国の宰相、レッサーパンダのぷにが居るのだ!
ちょっとそこの奥様聞いてくれざます。この子ったら私の頭一つ分くらい更に小さいざます。このぷにの世界にやってきて、二頭身な黒猫ぷにになった私より小さいんざます。ちっちゃなぷにな腕で抱き止められるんざます。鼻の奥がつんとするざます。
「あう~王様が、王様が~!」
「ちょっと落ち着いて?」
最近、漸くこのちっちゃい口に慣れてきたから、もう噛まないよ。「たちつてと」や「さしすせそ」もばっちりだよ。
そんでもって、この前の話なんだけど、ぷるぷる王国の王様が変わったからその挨拶に王女である私が来たんだよね。
あの噂のパンダの王様が気になったのもあったんだけどね。
いや、萌えた。ウサギの王様ほどのときめきはなかったけど、それでも十分萌えた。
だって、めっちゃ偉そうだったんだもん。高慢ちきだったんだもん。
あのコロボックルな外見でそれやられても腹なんか立たないもん。
もし人間の姿でやられたら殴る自信はあるけど。
そんで、お近づきの印にって、お土産に私が厳選したタイヤをプレゼントしたのさ。ほら、パンダってタイヤで遊んでるイメージがあったからさ。
最初、笹にしようかと思ったけど、タイヤと戯れてるパンダが見たいが為に……。
めっちゃ目が輝いてたね。
興味無さ気に受け取る振りして、内心では無茶苦茶舞い上がってた感じの目だったね。
残念ながら遊んでる姿は見れなかったけど……。
後で宰相が夢中で遊んでたって、こっそり教えてくれたのには思わずきゅんと来た。
いやー、最初宰相見た時は危なかったね。思わず我を忘れそうになったもん。
ただでさえ、ころころしいコロボックルが更にころころしてやがる……しかもちまい……。
このまま連れ去ってしまおうかと思ったよ。
癖がこれまた可愛くて、吃驚すると股の間からしましまでフサフサな尻尾を出してキュッと抱きしめるのさ。
愛くるしいったらなかったね。本気で嫁に欲しいと思ったよ。
そんで今回。
プレゼントしたタイヤの具合どうー?
と、聞きに来たのさ。あわよくばタイヤに戯れるパンダを見に来たのさ。
そしたら何ということでしょう。ころころしいちまいレッサーパンダにタックルされたではありませんか。
内心鼻血物だわさ。
これはもう、ここぞとばかりに抱き締めたね。どさくさ紛れてフサフサ尻尾も堪能してやったさ。
あれヤバいよ。ふわもこだったよ。
後ちょっとで萌えが鼻の粘膜を突き破ろうとした時、レッサーパンダが王様が大変だと教えてくれた。
「あぅっ、王様ダイエット……タイヤが……壁に秘密の……超巨大スロープ国家プロジェクト……壷が……でし」
「うん、国家プロジェクトに滑り台を造ろうとしている事しか分かんない……」
レッサーパンダは未だ混乱が抜けないのか、話す内容も要領を得ない。
取り敢えず、はっきり聞き取れたのは「ダイエット」と「超巨大スロープ国家プロジェクト」と「壷」だけである。
なるほど、見事に訳分からん。
一体どんな繋がりが?
因みに、レッサーパンダは語尾が「でし」とか「でち」なんだぜ。可愛くね?
そんなこんなで、レッサーパンダな宰相に連れてこられた場所。
途中長いスロープがあったりなんかして……その際、私がレッサーパンダを抱っこしながら滑りました。腕の中ではしゃぐレッサーパンダ……ごっちゃんです。
「あ、そういえばニコ……ダンゴ虫ぷにな諜報部隊隊長は……」
「う? それなら、ぷにぷに王国でおやつの調査をしてるでち」
「Oh……またか……」
ちょっくら気になったので、ニコの事を聞いたら、何とも納得してしまう答えが返ってきた。
ニコよ……また摘み食いしてるのか……。
そして何故ぷにぷに王国なのだろう? パンダの王様、何かこだわりでもあるんかね?
そんなこんなで長いスロープを滑り終わった先に見た物は、一つの古びた大きな壷だったのです。
なるほど、さっきの宰相の言葉の中の「壷」はこの事か。
「王様、この中に入っちゃったんでし」
「えぇ!?」
マジで!?
と、仰天している私に、レッサーパンダはくりくりの目に涙を溜めて、事のあらましを教えてくれた。
フムフム、スロープで滑り降りた先に居た王様に突っ込んでしまったとな?
ほうほう、突っ込まれた王様は、それはもう美しい放物線を描いて飛んでいき、壷の中に落ちていったと……。
それはそれは……。
み、見たかった! ものすっげ見たかった!
や、ば、い……ジワジワ来る。
私は、吹き出しそうになるのを必死で堪えた。
だって、この子にとっては笑い事じゃないもんね。私だってそれくらいは弁えてるさ。
そんでもって、自分の背位ある壷に近づいてみる。
爪先立ちになれば、ギリギリ覗き込めた。
中は不自然な位に真っ暗。
不意に、くいくいとスカートを引っ張られたので見てみれば、不安気な顔のレッサーパンダがこちらを見上げていた。
そっか、この子の背じゃ中は覗けないものね。
私は抱っこして覗かせてあげた。
「あうっ、真っ暗でし! 何も見えないでちよ! うわーん、王様ー!」
「え!? ちょっと待って? 危ないから!」
目の前のふわもこな尻尾に、内心顔を埋めたくなるのを必死に押さえていた私。
え? 変態ちっく?
分かってるよバカチンが! でもでも、感情が高ぶっているのか、レッサーパンダの尻尾が膨らんでるんだよ!? ぶわって!
誰だってこの尻尾見たら変態にならざるを得なくなるよ!
と、そんな場合じゃなかった。
壷を覗いて感極まったのか、レッサーパンダが壷に飛び込もうと私の手の中で暴れてるのさ。
いくら何でも危ないって! 見るからに怪しい壷だって!
だって何かすっげ中真っ暗だもん。底が見えねーもん。縁から既に見えねーもん。
私は、このころころしい、ちまい、萌えの、固まりである、レッサーパンダぷにを、全力で、守り通すっ!!
何か知らんけど、変な使命感が私を突き動かす。
暴れるレッサーパンダを押さえるのに必死になっていると、目の前でふわもこの尻尾がぶんぶんと振れ動く。
え? ちょっ、何これ!?
ふわもこの尻尾がっ! ふわもこの尻尾がっ、私の顔を絶妙な力加減で叩いてくるんですけどっ!
……………。
ぐへっ、ぐへへへへっ。
こりゃもうたまらんっ! もふっれってか! 思う存分もふれってか!
望むところや! 覚悟しろっ!
そしてとうとう私の理性は振り切れた……と、思ったよね。
でもね、このもふもふしい尻尾は、私の顔を叩くと同時に、私の鼻の粘膜までも刺激した。あ、鼻血じゃないよ。
そう、毛が鼻の中に入ったのだ。
そしたら当然、体が本能で異物を出そうとするよね。
つまり嚔が出るよね。
「ふっ……へくちっ!」
私にしてはやけに可愛らしい嚔が出た。一人でいる時は、「ぶえっくしょいっ、とくらぁ」とか言ってるのに……。幼なじみの妹分に「おっさん臭いね」って言われる位なのに。
何か不思議と、外でする時は控えめなんだよね。無意識?
まぁ、それはいいんだけど……。
……何というかね、言葉にならないの……。
「何をしておる。早く我を此処から出さぬか」
「お、王様~!!」
レッサーパンダは手放しで喜んでいる。
でも私は素直に喜べない。
今起きた事を要約すると……。
私が嚔した。
↓
壷がぺかっと光った。
↓
壷からパンダの王様がにょろっと頭を出した。
………………。
え? 何てハクション大○王?
タツノコさんもビックリやー。
私はレッサーパンダと協力して王様を壷から出した。
何かみっちりはまってた。
うん、何となくダイエットの意味が分かったよね。
今度ダイエットグッズでも贈ろうかな……。
そんなこんなで、何とか王様を壷から出す事が出来た。
そして語られる壷の中での出来事。
聞いて私は理解した。
パンダってば人間の世界にトリップしちゃってる。
しかも、机の引き出しって……。
ド、ドラ○も~ん……。
当然、どこでもドアやら襖を見ている私はそれを連想する訳で……。
それよりも、王様があっちで会ったという小娘。何か私の幼なじみの妹分を思い出すなぁ。
ちっちゃい頃は、「お姉ちゃん、お姉ちゃん」ってくっついて回ってたっけ。
そりゃもう、鼻血物の可愛さでしたもの。怖がらせないように必死に耐えたよ。
ある日、ハロウィンに着ぐるみを着せたのさ。
はっちゃけたね。
その後の妹分の視線の冷たさよ……。
でもまぁ、それでも「お姉さん」と私を慕ってくれる心の広い出来た妹分でした。
こっちの世界に来る際、ちゃんと挨拶したよ。
涙目になってた。めちゃ可愛かった。
それにしても、ぷにぷに王国といい、ぷるぷる王国といい、今回の事も含めて、一国に一つは向こうの世界に行く何だかの道具があるのだろうか?
そして、此処までドラ○もんを連想させるものとして、次は浴槽とか有り得るのだろうか?
いや、ネタとしてね? イヤーン、ノビタサンノエッチーはありそうじゃない?
それとも土管? ほら、広場にある。がき大将がリサイタルとかしてるあの……。
まぁ、何はともあれ、王様と無事再会できたレッサーパンダの笑顔、まじプライスレス。
でも、そんなレッサーパンダを前に、王様は口をへの字にしてちょっと悔しそう?
何か「我よりこれが……我よりこれが……」とブツブツ呟いているけれども。
ふと壷を覗いてみた。
驚いた事に、さっきあんなに真っ暗だった壷の中が普通になってた。ちゃんと底も見えるよ。
そんな感じで眺めてたんだけど、底の方で何かゆらっと揺れた。
影のような物が渦を巻いたかと思うと、何かをぺいっと吐き出した。
こ、これはっ……。
私は壷に頭を突っ込んだ。
途中、それに気付いた王様と宰相が騒いでいたけれど、まるっと無視して何とかそれを取り出した。
透明なビニール袋で包まれたそれに、私は見覚えがあった。
「こ、これは親父の拳骨……」
それは前居た所の近所のケーキ屋さんの目玉商品である「親父の拳骨」と言う名のシュークリームであった。
私はチーズが食べられないので食べた事はないが、幼なじみの妹分が大絶賛していたスイーツではないか。
そしてそれと一緒に一枚の紙が……。
『自称パンダの王様へ
昨日はお別れも言えずごめんなさい。
おわびに、今日給食で出たデザートのお菓子をおくります。
親父の拳骨という名前のシュークリームです。
ものすごくおいしくて、私が大好きなお菓子です。
もしまたこちらに来ることがあれば、今度はレッサーパンダの宰相さんも連れてきてくれるとうれしいです。
抱っこさせてください。
小娘より』
これはどうやら王様に向けての手紙のようだ。
昨日とか書いてあるけど、こっちにとっては今日だよね。時間のズレでもあるんかな?
そんな疑問を内に秘め、私は王様に親父の拳骨と共にその手紙を渡す。
読み始めた王様は最初、「なんと殊勝な娘よ」なんて目頭を押さえていたけれど、読み進める内にワナワナと震え始めた。そして最後にはその手紙を床に叩き付けたと思ったら吠えた。
「やはり我よりレッサーパンダがよいと言うのかぁー! 我はパンダぞ!? それを、それをー!!」
「ま、まぁまぁ落ち着いて……」
「王様ー、これ凄く美味しいでし! もぐもぐ」
「宰相バカタレめ! それは我のぞ! 何を勝手に食っておるかぁ!!」
「キャー!!」
後は何かもう、王様と宰相の追いかけっこで終わった。
レッサーパンダが追いかけられながらも親父の拳骨を手放さなかった。それどころか口にいっぱいクリーム付けて頬張ってた。
その内、二人とも普通に追いかけっこを楽しんでたんだけれども。
走ってる内に当初の目的を忘れたみたいで、めっさ笑顔なんだけれども。
キャッキャ、キャッキャ言ってるんだけれども。
二人ともテイクアウトできませんかね、これ。
― 壷の中身は何じゃらほい ―
《嚔と共に出てきたのは大魔王ではなく、パンダの王様でした》
最後は本編主人公目線でしめです。
実はこの時点で、ぷにぷに王国のぷに達とニコとはまだ会ってはいません。
王様達、「あの黒猫ぷには何処!?」と探しております。ニコも同様。
因みに、今回のお話のレッサーパンダですが、王様のお菓子(親父の拳骨)を食べてしまった事を反省した後、壷に入ってお菓子作りの修行に出かけます。親父の拳骨を作ったちょい悪親父に弟子入りです。
その際、出てきた場所はちょい悪親父の息子の元だったりします。
息子はシャワーを浴びていました。そう、ここで\キャーノビタサンノエッチー/のネタが繰り出されます。
実を言うとレッサーパンダは女の子だったり……。
パンダの王様は知りません。レッサーパンダ自身も特別その事を気にした事はありません。寧ろ、性別?何それ美味しいの?な状態です。つまり無頓着。
ぷにな世界ではまかり通りましたが、人間界に来てそれをもろに目の当たり(息子の裸)にしてしまったレッサーパンダは性別を意識し始める……なーんて所まで空想しちゃいました。
では、また機会があればこのぷにな世界でお会い致しましょう。
ぷにぷに!