第19話:ルーナはやっぱり優しい~エヴァン視点~
早速家に帰ると、父上がやって来た。
「エヴァン、今日は嬉しそうだね。もしかして、侯爵が折れたのかい?」
「はい、それからルーナの護衛の許可が下りました。早速明日から、護衛を付けましょう」
「そうか、それは良かった。エヴァン、陰の護衛を君に5人与えよう。この護衛たちは、エヴァンの好きなように使っていい。スパイ活動にも優れた人物だから、きっとエヴァンの役に立つだろう」
「ありがとうございます」
どうやら僕の為に、5人もの影の護衛騎士を与えてくれる様だ。さすが父上、太っ腹だな。
「エヴァン、ルーナ嬢を取り戻せるといいな」
そう言ってほほ笑んでくれた父上。
「はい、ありがとうございます」
翌日、早速影の護衛騎士をルーナに付けた。ルーナの行動を毎日報告する様にとも伝えてある。婚約していた時は、こんなことしなかったのに。まさか婚約を破棄してから、ルーナを監視する事になるなんて…ただ、これもルーナを守るためだ。
そして僕は、与えられた影の護衛騎士たちに、ナタリー嬢も監視する様に伝えた。あの女の事だ。何をしでかすか分からないからな。
そして今日は、やっとルーナに謝罪が出来る日だ。もしかしたら僕が話しかけても、口もきいてくれないかもしれない。酷い言葉を投げかけられるかもしれない。それでも僕は、ルーナに話しかけられるだけで、幸せでたまらないのだ。
相変わらず令息たちに囲まれているルーナ。非常に腹ただしい。でも、陰でルーナを守っているのは僕だ。そう思ったら、少しだけ優越感に浸れた。
そして放課後、僕はルーナの馬車の前で彼女が来るのを待つ。楽しそうにエマ嬢と話しをしながらやって来たルーナ。でも、僕の顔を見るなり固まってしまった。それでも優しいルーナは、僕の話を聞いてくれた。予想通り、僕の事はもう信用できない、もう放っておいてくれと言われた。
それでも必死に謝り、なんとか友達としてなら今まで通り接してもいいと言う返事がもらえた。本当にルーナは優しい。つい嬉しくてルーナの手を取って、校門まで向かう。柔らかくて小さくて温かい手。
でも、少し調子に乗りすぎた様で、手を振り払われてしまった。それでも、僕がルーナの馬車を見送る為、手を振り続けたら、ルーナも馬車の中から手を振ってくれた。それが嬉しくてたまらない。
やっぱりルーナは、優しい。あんなにも優しい女性を僕は傷つけ泣かせてしまったんだ。そう思ったら、今まで以上に後悔と罪悪感で押しつぶされそうになった。
そして改めて僕は、自分の愚かさを反省した。その日の夜は、自分の何がいけなかったのか、この1年の行いを紙に書きだした。
こうやって紙に書き出してみると、つくづく自分の愚かさに気が付く。僕は思い込みが激しく、一度思い込むと、突っ走ってしまう事がある。それがいけないんだ。
これからは色々な角度から物事を考え、慎重に分析して行かないと。それにしてもナタリー嬢め、本当に嫌な女だな!自分が気に入らないと言うだけで、僕を騙すなんて…
思い出しただけで腹が立つ。それに今後の事を考えても、ナタリー嬢は危険な存在だ。あの女を、なんとかしないと。それもこれからの課題だ。
とにかく今僕が出来る事は、ルーナの信頼をもう一度取り戻すことだ。そうだ!とにかくルーナの傍にいる男どもを蹴散らさないと!
翌日、僕は朝早く学院に向かい、ルーナを待った。しばらく待っていると、エマ嬢が現れたのだ。
「エヴァン様、おはようございます。まさかルーナを待ち伏せしていたりしませんよね」
虫けらでも見る様な目で、僕を見つめるエマ嬢。彼女はずっとルーナの傍に寄り添い、支えてきた人物だ。僕を疎ましく思うのも理解できる。そういえば彼女、婚約者がまだいなかったな。
「ねえ、エマ嬢。君、まだ婚約者がいなかったよね。どうして作らないんだい?」
つい気になって、そんな事を聞いてしまった。
「あなたには関係ないでしょう?放っといてちょうだい」
そう言うと、頬を膨らませ、プイっとあちらの方向を向いてしまった。どうやら聞いてはいけない事を聞いてしまった様だ。何とも言えない空気が流れる。
その時だった。ルーナの乗った馬車がこちらに向かってやって来たのだ。他の令息たちもわらわらと集まって来た。そしてゆっくり馬車から降りるルーナ。
すぐに近づこうとしたのだが、ルーナはそれはそれは美しい顔で会釈をすると、にっこり微笑んだのだ。その姿はまるで、女神の様だ。あまりの美しさに、つい見とれてしまった。
でも次の瞬間、ルーナとエマ嬢がものすごい勢いで走り出した。
「クソ、また逃げられた!ルーナ嬢の美しい微笑を見ると、つい固まってしまうんだよな」
近くにいた令息が悔しがっている。なるほど、自分の美しさを武器に、ルーナはああやって令息たちを撒いているのだな。さすがだ。
でも僕は、ルーナをずっと見てきたんだ。今日はつい見とれてしまったが、そう何度も同じ手に引っかかる訳にはいかない。
たとえどんなにエマ嬢が僕の邪魔をしようと、こっちは侯爵から許可を得ているのだ。何が何でもルーナを振り向かせて見せる!絶対に。
エヴァン視点、随分長くなってしまいました汗
次回からルーナ視点に戻ります。
よろしくお願いいたしますm(__)m




