大人編 8話 ~彩夏との思い出巡り~
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俺が既視感を感じつつ後ろを振り向くと彩夏が立っていた。
「ビックリした?」
「あぁ彩夏か。後ろから声を掛けられた時、高校の入学当時を思い出したよ」
確かあの時もこうやって彩夏から声を掛けてきたっけ。
彩夏もよく覚えていたな。
「本当に懐かしいわね。昔はこうやってよく歩いてたっけ」
「そうだな。この間の事の様に思い出すよ」
俺は感慨深げに周りを見渡しながら歩く。
しばらく歩いていると高校の校舎が見えてきた。
「うわ~、変わって無いわね。本当にあの頃に戻ってきたみたい」
俺達が通っていた当時から、既に10年が経過しているとは思えない。
今日は授業が半日なのだろうか、校舎から学生が続々と出てくる。
俺達は生徒の帰宅を邪魔しない様に隅っこで校舎内を眺めていると、校舎内に大きな垂れ幕を見つけた。
そこには【竹内選手、ボクシング世界チャンピオンおめでとう! 在校生・卒業生一同】と大きく書かれていた。
「ねぇ龍之介、あれ見てよ。あなたの名前が書かれているわよ」
「本当だな。だがこんな垂れ幕が出るなんて聞いていないぞ」
こういうものは一応本人に確認を取るものでは無いのだろうか。全く話を聞いていないもどうかと思うな。
彩夏は垂れ幕を見てとても楽しそうにはしゃいでいる。それが下校中の学生の目に留まったのか、こちらへ一斉に目線が移動する。
その中で4人組の女子高生がわちゃわちゃしたと思ったら、ゆっくりとこちらへ向かって歩いてきた。
「あの~、もしかして竹内選手ですか?」
「あぁそうだが」
「やっぱり!」
女子高生の1人が俺に握手を求めてくる。
俺が握手をしていると、他の高校生が俺の存在に気が付いたか周りに人だかりができてきた。
そんな有名人になったつもりは無いんだが、こうやって実際に経験すると嫌でも実感する。
そうこうしている間に校門から先生と思わしき2人組がこちらへ向かって歩いてくる。
校門から出てすぐに人だかりができているのだ。先生たちが見に来るのは当然のことだろう。
俺はマズイことになったと感じたものの、人だかりがすぐに解消出来る訳も無く、人波をかき分けながらこちらに向かってくる2人から声が掛かるのを待った。
「もしかして竹内か?」
「え?」
「それに風祭もいるじゃないか。お前達いつの間にそんな関係になったんだ?」
もしかして俺達の知り合いか?
やけに馴れ馴れしい態度で話しかけてくる2人組を見て俺は記憶を手繰るが思い出せない。
「もしかして高坂部長ですか?」
彩夏がそう答える。確かに少し老けたが高坂部長に間違いない。
「なんだ、ようやく思い出したのか?忘れられたかと思ったよ」
「お久しぶりです高坂部長!まさか教師になっていたなんてビックリです」
「とにかくこの人だかりは危険だから一旦校舎に入ってくれ」
高坂部長に誘導されて俺達は校舎へ移動する。
移動中、高坂部長に在校生から「先生は本当に竹内選手と知り合いだったんですね!嘘だと思ってました」と声が掛かる。
「だから言っただろう?しかも同じ部活だったんだぞ」
「え?だって先生って剣道部だったんじゃないの?」
「竹内は元剣道部だぞ。まあ1年もいなかったんだがな」
高坂部長は誇らしげに笑って答える。
俺が高校時代、剣道部に入っていたのは本当に限られた人しか知らない。
まさかの特ダネに在校生が一斉に歓声を上げる。
俺と彩夏は高坂部長に誘導されて職員室の応接室へと案内された。
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