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=撃たれるはずのない脚部=


私はこんな気持ちになるために、こんな思い出のために、あの星を出た訳じゃない。

この星はまだわからないことだらけだ。

いつかの私とはもう違うんだ。


……


「うわぁぁあ、私やっぱりこの感触苦手かもぉ……」

地面だったものに足を踏み入れた直後の一言だった。

調子に任せて言ってみたのは良いものの、足の裏から伝うこの非日常な感触はなかなかのものだ。

好きになれそうもない。

新感覚でありつつ二度と経験したくない。

✔︎チープな地獄。

✔︎ディストピア名物不快のド沼地。

✔︎これでもかつて道だった。

✔︎ラスボスの吐瀉物。

✔︎ヘドロ虫。

脳内では果てしなく悪口な感想が滲み、噴出する。


「わかる。何か粘っこくて、ぬるぬるしてて気持ちが悪いよね、いつか元に戻るのかなぁ……」

おんなじ意志の持ち主がどうやら隣にもいたようだ。うれしい。

いや、うれしくないよ。全然。


場違いな話をしながらも巨大で奇妙な造形物へと近づいていく……、重たくなっていく足がべったべったと嫌な音を嫌な程立てて。


あんな楽しみだった地球にウキウキで来てこんな羽目に……。誰が想像できたんだろ?あの朝の私には絶対無理だろう。


迫り来るような圧倒的存在感を前に空気が変わる。

大きすぎる……なんだか目が光ってるし、腕もいくつか生えているし、話が通じる相手ではなさそうだねぇ……


んーと、本当に対峙するの?

今からでも引き返せない?

そこまで思えるほどだ。


……あ。あーぁ。

べちゃべちゃしてたらいつの間にか真下に来ていたようだ。

のっそりと動いているのを見上げる。破滅という言葉はこのためにあるのかもしれない。

これからどうなっちゃうんだろ。


……き、気にしないよっ。私ならそう言うでしょ?

ん?私ならって今のは私じゃないってこと?

いや、私は私、でもさ──


まるで役に立たない脳内混線を片付けようとしていることから察するに、私はどうにもならない現実を受け止めきれないらしい。

はぁ。やれやれだな。


何かを振り絞り、そっと指先ででっけぇ足に触れる。

大丈……夫?

ん。例えづらい感触でひんやりしている。

焼かれなかくて良かった。技が出なくて良かった。硬そうで重そう。


二人で地球に突き刺さった巨体の足を押してみるも……一ミリすら動かず。反応はない。うんともすんとも。黒くて大きなままだ。はは。なんだ。知っていた。

一体なんなんだよこれは、この造りは。

「でっっっかぁ……、それにしても酷い有様だなぁ、家なんかがこんな風に……これを現実と呼ぶのは無茶があるよ。」

確かに無茶苦茶だ。夢だったら今すぐにでも覚めて欲しい。もし人工現実だとしたら悪質にも程がある。



彼を横から静かに見守りながら、

「こんなにめちゃくちゃにされちゃあ元通りにはならないだろうねぇ」

話し続けて気を紛らわしたい私の本音が転がり落ちる。

戻ってほしいんだけれどな……

このどろどろの景色を見ていたらそうは思えなくなっていくんだ。


……まともじゃないな。


暫く彼は横で静かに深呼吸をする。

音が止み、心を研ぎ澄ましている。


どう、かな?


そして手を伸ばす──と、

そこからじわじわと触れた周りから溶けていく……

「お、おおぉ!?」

やっぱりあの時と同じだ!


「いけそう、上手くいけそう!」

両腕が一気に埋まり、ぽっかりと穴が開いた!

「よぉし!いけるか!」

「やった!いいよいいよ!倒れそうだよ!」

一目散に退避するとともに後ろから「ぐぐぐ」と耐えきれず倒れていく音が、

振り返ると激しく宙を舞った泥が横切った。危ない、危ない。

「止まったのか……まずは一機。これを一体何回繰り返せばいいんだ?」

とりあえず成果は充分だよ……よくもまあこんな見事に。


それは動きを止め、目から光が消えていく。

「とりあえずここは倒れたこれをしっかり観察して何か手掛かりを探してみようよ?今は情報が少なすぎるよ。」

「そうだね、こいつに関して全くわからないし、素人目線だとしても何かしら分析をしないとだな、この凄まじい技術をどのくらい理解できるかはわからないけど」

開いた穴から脚が一本折れバランスを崩し、埋まるように倒れていた。もう起き上がらないだろう。


さて。この迫力の亡骸を探索してみようかな?

動かないとわかると横たわる足の先から掴んでよじ登り、湾曲を伝って向こうの胴体の方へと突き進む。

いつ振りに好奇心が蘇っている。

わっせ。わっせ。ほっほっ。

……本当に止まってるよね?


「何か変なところあった?」

割と下の方から彼の声。

「いや。まだ何も……」


んん?


「!、ちょっとこっち来て。」

「どうした、なんだなんだ?」


倒したマシンをよじ登ってくる彼。

「はぁはぁ、怖ぇ……」

声を震わせぎこちなく、苦闘しながらそう言っている。

キミが倒したんだよ?これ。


……


彼がようやっとたどり着いた所で、丁度入口っぽい閉ざされた枠を見せる。

「ほらほら、これ扉っぽいし、ここから中に入れるんじゃない?」

「あ、ほんとだ」

「——ゴンゴンッ」

ノックすると重たく、見た目通りの分厚そうな音が跳ね返ってくる。


何度押しても、叩いても、撫でても、話しかけても、開く気配はない。

「ダメ、こんなんじゃ開かない」

「……じゃあ、これも溶かすしかないか。」

「お願い、やってみて」


その頑強なプレートに手を翳してから10分位が経過しただろうか。

今度は随分と時間がかかるらしい。性質が違うのだろうか。


……


辛うじて空いた小さな穴の中から様子を伺う。

うーん。誰か中に居るのだろうか?


「何か見えるか?」

片方の目を穴にぴったりつけ見てみるが……暗くてその先よくわからなかった。

「暗くて何にも見えない……」

「じゃあ、まだまだかかるなぁ。」

「お願いします……」


彼はまた手を翳しそれを人が入れるサイズにまで広げてくれた。


「これでどう?入れる?」

謎に包まれたそれの中へ。

「よいしょっと。」

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