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高崎LOVERS  作者: リリィ
28/28

高崎LOVERS 28 高崎高島屋

観音山の新緑が輝く5月のある休日




高崎駅新幹線ホームに




周囲より頭一つ大きな青年が降り立った




田中の長男




奏助だ




すこし暑くなったな




とつぶやきながら奏助はエスカレーターを降り改札へと向かった




お兄ちゃん~こっちこっち!!




改札の向こうから明るい声が聞こえた




手を振っているのは妹の奏だ




つい奏助の顔がほころぶ




年の離れた妹を奏助は幼い時から可愛がってきた




お~、待たせちゃったか?




ううん、私もさっき着いたところ




お兄ちゃんお休みの日に呼び出してごめんね




いや、実家に帰るようなもんだから大丈夫だよ




お父さんのさ、誕生日プレゼント




お兄ちゃんと一緒に選びたくて




父さんの?いつだっけ誕生日?




10日だよ~。でも今日しか時間が無かったから一緒に選んで渡しに行こうと思ったの




今どきネットで買えばいいじゃん




そういうもんでもないでしょ




お兄ちゃんと私で選んだら絶対喜ぶんだから




さすが末っ子だよな~奏は




気が利くって言ってよね




んでどこに行くの?




そりゃ高崎でプレゼント探すなら高島屋でしょ




何そのこだわりは?




特別なモノは高島屋で買ってたじゃない、お父さんもお母さんも




そうだったっけなぁ




お兄ちゃんは家族に興味なさすぎなのよ




いや~鈍いだけなのかも




背の高い奏助と小柄な奏が肩を並べて高崎駅西口方面へ歩いていく




ペデストリアンデッキに出ると




この辺はあまり変わらないよなぁ




お兄ちゃんが高崎出てからは変わってないかもね




ちょっとマックでもよって行かない?腹減っちゃったよオレ




昔お母さんがいない時にたまにお父さんが連れてきてくれたよね




母さんにはナイショでな




駅ビルのマクドナルドで小腹を満たした二人は高島屋へとブラブラ歩き出した




お父さんのプレゼント何がいいかなぁ




1人で酒飲んでアル中にでもなられても困るから酒はやめておこうな




洋服って言っても難しいよね




ま、とりあえず見て考えようか




高島屋の店内に入りエスカレーターを昇りながら二人で物色していく




お父さんって趣味が無いんだよね




まぁ若い時は仕事が趣味だったようなもんだしな




お酒くらいかぁ




ダメなオヤジみたいだな




グルメだけどね




でも料理とか一人でやってんのかね?




ちょっとしたものは作っているみたいだよ




私たまに家に行くもん




んじゃ料理道具とか?




そこまでじゃないでしょ~。お母さん帰ってきたらビックリしちゃうよ




そりゃそうか




ゴルフとかすればいいのにね




今さらだろ。ジョギングはまだしてるのかなぁ




昔から朝走ってたよね




ランニングシューズとかは?




良いけどサイズ分からないなぁ




奏も結構いいかげんだな




お兄ちゃんに言われたくないんですけど




何か集めているものあったけ?




ん~、あれは?




思いついた二人はエスカレーターを再び昇って行った




・・・・・・・・・・・・・・・・




夕暮れが近くなり、そろそろ洗濯物でも取り込むかと田中が立ち上がると




玄関のチャイムが鳴った




モニターに映っているのは奏と奏助だ




驚いた田中が玄関を開けると




ただいま~




お父さんびっくりした?と奏




おお、そりゃビックリするさ。なんの連絡もなかったから




どうしたの?




まぁまぁ、まずは家に入りましょ




奏に背中を押されてリビングへ戻る




奏助はのんびりと後をついてきた




お父さん、忘れていませんよ私たちは




なにが?




とぼけてもダメですよ~。今月はお父さんの誕生日でしょ




それで二人で来てくれたのか?




お母さんもいないし、私たちがお祝いしないわけには行きませんからね~




すでに涙ぐんできた田中




お兄ちゃんと一緒にプレゼント選んできました!!




奏が高島屋の包装紙に包まれたプレゼントを取り出した




奏助も一緒に?忙しいのに悪かったなぁ




奏に言われちゃ付き合いますよオレも




ありがとう二人とも




お父さん開けてみて




おお、何だろうなぁ




田中が高島屋の包装紙をはがすと




中からは桐の箱が出てきた




これってもしかして?




桐の箱を開けると




中から出てきたのは江戸切子のロックグラスだった




紫色の切子グラスが輝いている




オレが集めてたの覚えていてくれたのか?




お父さん趣味が無いから大変だったんだよ。二人でなんとか頭をひねって選びました~




好きなんだよなぁ。この色持っていなくてさ




これで飲みすぎちゃうなぁ




あ、それはダメだからね。飲みすぎだけは注意してください




オレもまだ父さんの介護してる暇ないから気をつけてよ




分かってますよ




でも今日はこれで飲ませてくれよ



田中は切子グラスを大事そうにかかげた




よし、それじゃお礼に父さんが何か作ろうかな




あ、じゃ私も手伝う~




オレは風呂でも入ってこようかな




思いがけず訪れた幸せな夕方




田中は大きくなった二人の子供の背中に目を細めた




開け放した窓から初夏の心地よい風が入ってきた






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