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その少女・異世界でも非常識  作者: フラック
2章 脱・勇者
36/50

12話 拝謁

 



 大神殿

本来そこは聖域であり静寂が似合う場所であるはずであった。


 その静寂を塗りつぶす声が響く・・・


「大体なんで、私が皇帝?っていうの

 そんな人に会わないといけないの!

 ホントだったら

 ヨード卵のおっちゃんの所に行って

 かわいい赤ちゃんに逢えるはずだったのに

 どうでもいい、おっさん?に

 会わないといけないなんて最悪!

 大体、私、勇者?でないからね!

 皆みたいに加護なんて貰ってない

 かわいい小学生なんだから!

 戦うなんてしちゃいけないし・・って

 ねぇ聴いてる?

 オデンおじいちゃん!」


 と・・・この世界の人間が聞き取れない日本語で

鈴の前を歩き、鈴が逃げ出さないように鈴の手を握る

第4の塔、塔神官長のオーデンに捲し立てる!


 オーデンが鈴の手を引っ張るのには理由があった

鈴は大神殿に来るまでに1度逃げ出していたからだ。


 早めに塔を出たはずが

鈴が逃げ出した事で時間を取られ

7人の勇者達の中で

大神殿に付くのが最後となった事は

応接室までの案内をしてくれた神官が

オーデンに告げた事であったが

今までのオーデンなら

塔神官長の中で、また立場が悪く・・・と考える所だが

今のオーデンにしたら

その立場より

鈴が何かやらかさないかと心配であり

最悪、皇帝様に対し何か無礼な事でもしたなら・・・と

先ほど逃げたとき

捕まえなければ良かったと

小さな後悔を抱え・・・

どうせなら

第2の塔の悪魔 (ドラゴニーズ)や

第3の塔の女巨人 (クラリス)が

鈴より先に、騒ぎを起こすことを願うのだった。



 日本語で1人しゃべりまくる鈴の声が

応接室で待機していた勇者達の耳に聞こえてくる

唯一日本語が理解できたマフは

(あんな事言ってるよ・・・

 僕もめんどくさいから皇帝って人に会いたく無いんだけど

 たぶんコレって、強制イベントだし

 回避むりだろうなぁ・・・

 スキップできないかなぁぁ・・・。)と

すでに諦めていたマフは

ドアの向こうにいる鈴の到着をまつのだった。


 応接室のドアが開かれる

鈴の見たものは


入口近くで床に胡座をかいた

この日の為に用意された、2ピースのドレスに近い

黄緑色のドレスを着る、クラリス


中央にあるテーブルに備わった

豪華なソファーに体を預けて座る、ドラゴニーズ


テーブルの反対側に、ちょこんと座る

中世貴族の正装で身を包んだ、マフ


大きな窓の横に絵画のように綺麗なドレスで佇む、D


マフの背中側の壁で静かに腕を組む

まるで聖騎士の純白の正装とも言える、キュロス


そして、まだ名前すら聞いていない

第6の塔の勇者だろう存在が

広い部屋の机もない、少し開けた場所の真ん中で

1人立っていた。


 その男は、背を伸ばせば、2メートルはあろう身長ではあったが

背中が曲がり、だらしないと思わせる立ち姿で

力のない両腕は猫背で前に投げ出された上半身から

無沿いうさに垂れ下がる

その目には光がなく、まるで死体

生きるゾンビとも言えた・・・。


そんな存在に、Dは視線を向けようともせず

クラリスは無関心

ドラゴニーズは小物には興味はなく

キュロスは、朝の事でその意識はマフへと向いていた

マフと言えば

この部屋に入り一番初めに声を掛けたキュロスに冷たくあしらわれ

なにか悪いことをしただろうと悩んでいた。


 だが鈴は、その男を見た瞬間

新しいオモチャ・・・いや

人を不快に思わすソノ立ち姿に

兄の姿を重ね嬉しそうに走り出そうとしたのだが

オーデンに手を引っ張られ

名も知らぬ勇者に突撃する事は叶わなかったのだった。


 この場にいた神官の1人が

小さく頭を下げると口を開く


「第4の塔、塔神官長【オーデン】様

 第4の塔、勇者【リーン】様のご到着により

 全員揃いましたので

 謁見の間に、ご案内させていただきます。」


 これから人族を統べる【皇帝】と会う

その事に、笑う者、企む者、敵意を向ける者と・・・

張り詰めるように緊張がはしる!


 塔神官長達は、それぞれの塔の勇者に近づき

勇者を先導する・・。


 大神殿の聖堂横の通路

豪華な装飾が施されており

人族の最高の技術が集まる大神殿だからこその贅沢な作り

たかが通路ではあったが

それは、神殿奥にある

皇帝が座する謁見の間に続く通路

巨人族のクラリスすら悠々と歩ける広さであった。


 進む勇者と神官達の緊張を和らげるのは

緊張など欠片もない一人の少女

逃げ出したり、他の勇者に突撃しないように

しっかりと、オーデンに握られた左手

そして右手は、唯一鈴を操作できるマフに繋がれ

少女の歩みと同じ速度で気持ちよく前後に降る

緊張とは掛け離れた

陽気な鈴は

横に居る、マフに

可愛らしい声で


「ねぇねぇ、マフ君、マフ君!

 あの人って、前に言ってた人?」


マ「そうだと思うよ

 僕も会うのは初めてだから

 話したことはないけど

 第6の塔の勇者だと思うよ。」


 鈴は首を後ろに向け

最後尾でついてくる存在に視線をむけると


「なんか、やる気の無い時のお兄ちゃんに似てる。」


「え?」


勢いよく後ろを振り向くマフがそこにいた。



 騒がしい2人をよそに

勇者達は、謁見の間の、豪華な扉の前に付いた。


 謁見の間

その名の通り、各国の王や要人が皇帝に会える数少ない場所であり

公的な面会の場所であった。


 オーデンは、鈴から手を離し

そっと鈴に近寄ると、両手でその口を塞いだ・・・


オーデンからマフにお願いして「静かに」と伝えても

話すことをやめなかった鈴に対する最終手段でもあった。


オーデンの手に伝わる

「ブゥゥゥゥゥーーーー」と言う振動は無視し

大扉の横にある、謁見の間の中と通じる小窓から

中と外と連絡しあう神官に合図を送る。


 すでに、勇者達が来たことは告げられており

謁見の間の中の準備が整うまで

しばし大扉の前で待たされ

中の準備が整ったのか、大扉が静かにひらかれていった。



 しめし合わせたかのように

各塔の塔神官長が動き出し

第1の塔の2人が、動き出した。


 第1の塔、塔神官長【カスティーラ】のエスコートで

第1の塔、の勇者である、エルフの【D】が綺麗なドレスで

謁見の間に足を踏み入れていく。


 謁見の間の中で、大きな声が上がる


「第1の塔、勇者であらせられる【D】様

 塔神官長【カスティーラ】様

 入られます。」


 謁見の間の中で、ザワザワと・・・小さな話し声が聞こえ


大扉そばの神官の指示で

今度は【フールッバツト】と

この茶番とも言える進行に機嫌の悪い【ドラゴニーズ】が入っていった。


 そして、鈴の順番となった

オーデンは、鈴を睨みつけるように

その手を鈴の口から引き

その左手を鈴の前に差し出した。


 鈴は、ぷんぷん! と

少しほっぺたを膨らまし


(そんなに睨まなくても

 騒がないよーーーだ!!

 こうみえても、それくらいの礼節はわかってますよーーーだ!!)


 右手を差し出されたオーデンの手に乗せ

鈴の為に作られた

かわいらしい水色のドレスのスカートの裾を左手で掴み少し持ち上げ

視線を前に移すと

一瞬にして、その雰囲気は変わり

まるで、礼儀作法を知り尽くした

貴族の令嬢か、一国の姫の様に

背筋は伸び洗礼された足運びで進みだした。


 それに驚いたのは

エスコートをした、オーデン

一瞬戸惑いはしたが、鈴に恥をかかさぬよう

鈴を謁見の間にエスコートしていく。


そして、響き渡る神官の声


「第4の塔、勇者であらせられる【リーン】様

 塔神官長【オーデン】様

 入られます。」


 オーデンのエスコートで

謁見の間に入ってきた鈴は

視線だけを動かしその空間を把握していく

そして、一番高い位置にある、豪華な椅子

それは、確実に皇帝の席だと思われる場所に

誰も座っていない事で

まだ、皇帝は居ないと判断すると

最敬礼をしなくてもいいな、と判断し。


鈴は、歩みを止め

オーデンに視線を送り

まるで

「エスコートありがとう」と

かわいらしい笑顔を送り

オーデンから手を離すと

正面に向き直り

スカートの裾を摘み、少し持ち上げ

片足を少し後ろに引き、軽く膝を曲げ

背筋を伸ばしたまま態勢を少しだけ下げ

小さく頭を下げるのだった。


 その【カテーシー】と呼ばれる

女性が行う伝統的な挨拶は、この世界でもほぼ同じであり

謁見の間にいた、人間は

鈴の可愛らしさに心を奪われ

優雅さを兼ね備えた上品な挨拶に

驚きを隠せず

ざわめいていく・・・。


 鈴は姿勢を戻すと

小さく右手をオーデンに差し出す

驚いた、オーデンは鈴の手を左手に載せ

自分達の立ち位置である場所に鈴をエスコートしていった。


 鈴は、心で笑う


(どうだ、このやろう!

 その気になれば、これくらい私だってできるもん!! 

 どれだけ

 お兄ちゃんに角度が悪いとか

 足の送りが悪いとか

 もう3ミリ姿勢を落とせとか

 いやって言うほど

 叩き込まれた事か・・・

 あの時は、こんな挨拶一生する事はないと思ってたけど

 人生なにが有るか分からないもんだなぁ・・・

 ちょっとだけ

 お兄ちゃんに感謝!

 ぷぷ、今、お兄ちゃんが絶対クシャミした気がする)


 心で、変顔でクシャミする兄を想像し爆笑する鈴だが

兄に鍛えられた洗礼された綺麗な立ち姿で

少しだけ年相応の可愛らしい顔を見せるも

いっさいの感情を外にはださないのだった。


 そして、次々と入場していく勇者と塔神官長

7人の勇者の中で

この場に相応しい挨拶を行ったのは

鈴のみであった。






 鈴は、姿勢を正したまま視線だけで

この部屋?だろう謁見の間を確認していく。


それは、ファンタジーに良くある

訪問者を向かい入れる、謁見の間と言われる来客室でも


王宮にある【王座の間】と言われる

長い回廊の様な長方形で

左右には王様直属の騎士が並び

最奥に床がせり上がった少しの階段があり

王様が座る、豪華な椅子が存在する・・


そんな場所ではなかった。


 鈴が思いついた

この場所に似合う言葉

それは【裁判所】だった。


**********


 謁見の間


その形は、円に近い形である

鈴達がいる場所は、円の南に当たる場所で

中央から、北東西に向かって高くなっていく段差があり

すり鉢状に高くなっている為

部屋の中心から南側に掛けてが一番低くい場所であり

扉も近い場所に存在した。

 

 北側には何段かの段差が存在し

奥に行くほど高くなっていた

そして、その一番高い場所の中央に

とても豪華で大きな椅子が存在する

それは、皇帝の座する椅子で有る

そして、その椅子の左右に、豪華ではあるが多少小さい椅子が1つづつ並ぶ

それは皇后と、皇女の席である。


その1段下に、13の席がある

これは皇帝や皇后に次ぐ権力を持つ

13人いる総大神官と呼ばれる者の席。


その1段下に

この人族の世界の法を担う

21人の大神官の席が存在する。


そして、東側と西側の壁側には

せり上がる様に40を超える席が存在した

高さで言えば一番高い場所でも

21人の大神官が居る高さまでである

ここには、上位貴族や、役職を持つ大神官達の席が存在し

この席の中には、塔神官長達の席も存在する。


そして、東西の神官達の席の前に

聖騎士団が並ぶ場所すら用意してある。


そう、この場所は【皇帝】に謁見する場でもあったが

皇帝によって、大犯罪人を裁く場所でもあった。



*******



 7人の勇者が、皇帝に謁見する

それは、2日前から通達されていた事であり

勇者7人が全員揃い

人前に姿を現す公的行事の最初であった事で

全員参加とも言えた


それは、まだ姿を見せない皇帝・皇后・皇女の3人の席と

勇者と共に立つ、7人の塔神官長の席を抜けば

全ての席は埋まっていた事で

誰しもが分かっていた事であった。


そして、多くの存在が

勇者の話を耳にはしていたが

その顔を姿を見る事が初めてである為


この謁見の間に入るさい

名前の紹介と共に入場することとなったのだ。


 その中で、一番姿が知られていたのが

大神殿によく足を運び

その敷地内を動き回っていた【キュロス】であった。



 ただ、勇者の紹介だけで済めばいいのだが

ここは、皇帝に次ぐ権力者が集まる場所である


その思想は人族の未来では無い


特に13人の総大神官の考える事は


自身の権力と


金と宝石と女・・と


欲望のみである。



 勇者達が謁見の間に順次入ってくる・・・

 


 第1の勇者である、純血種のエルフ【D】の美しさに

その欲望は爆発する

神天使に勝る至宝たる美女の肉体を欲する欲求は

抑えられる物ではなかった。

どの大神官達も思う【あの肉体をこの手に】・・・と視線を送る


だが、Dはエルフ

勇者で有ろうと、妻に妾に迎え入れる事は出来ない

だが、勇者だからこそ

この大神殿が存在する、上層に出入りできる

ならば、この戦いが終わりしだい性奴隷に・・・と・・・。



 続いて入ってきたのは、ドラゴニーズであった

誰しもが、目をそらす・・・

前・塔神官長の【サルサ】を殺した第2の塔の悪魔

すでに【刺激しない様に】と、箝口令が引かれていた。



 巨人族の女性【クラリス】

大急ぎで縫われた、ドレスに近い服であったが

筋肉で出来上がった体には不釣り合いでしかなかった

そして、またクラリスに対しても箝口令は引かれていた。



 次に姿を現したのは

オーデンが手を引く、お人形の様に可愛らしい少女

その笑顔に心を奪われるも

その少女は完璧な挨拶をこなす

その歩く姿、立つ姿は

まるで一国の姫の様に優雅で上品であった。


 権力者達は、唾を飲み込む

【アレが欲しい】と・・・。


 大神官達にも、鈴の情報は流れていた

回復魔法は多少使えるが

人族と変わりない【魔力】で

勇者で有りながら、戦うことが出来ない少女。


 そう、人族の大人なら

力ずくで、言う事を聞かせられる

取るに足らない、か弱い幼女

それが、勇者【リーン】


今回の聖戦で使い物に成らないなら

居なくても良い・・・

ならば・・・

今すぐにでも・・・

【手に入れたい】と・・・。



 そして、キュロスの登場

この、勇者の中の勇者と讃えられるキュロスには

大きな歓声と拍手が送られることとなった。


 また、キュロスもそれが当然と

鞘に入ったままだが

【聖剣クレイヴ・ソリッシュ】を高々と掲げるのだった。



 そして、キュロスを称える歓声は

次に部屋に入ってきた存在によって消え去った。


「第6の塔、勇者様、名前は不明」と紹介された男性


キュロスの光り輝く存在とは真反対

立ち姿は、泥にまみれた枯れ木

歩く姿は、ゾンビ

見る者を不快に落とす男

洋服の様な綺麗な服を纏ったが、それがため

その異質な仕草が際立つ

悪臭など有りはしないが

この場にいる、女性の神官や貴族は

その手に布を持ち、口と鼻を塞ぐ・・・。



 最後の勇者が紹介された

貴族の様な服装でマフが入ってくる

第6の勇者の後なのか、静かであった

多少回復し、その体に肉も付いてきたと言っても

見た目は、体の線は細く、髪も白く、肌も白く

未だに病人と言っても通用するマフの姿に

何の期待も

何の興味も

何の思いも

そこには

存在しなかった。




 各塔の塔神官長の先導によって

勇者と塔神官長13人は

横に並ぶように整列し

13人の後ろに、クラリスがドスンと腰を下ろした。



神官の1人が「しばし、お静かに」と・・・

言葉を残し、30秒ほど経った頃


 皇帝の席がある、最上段

3つの席から少し離れた所にある壁掛けの布が揺らぎ

1人の男が姿を現した

姿やその服装から、皇帝で無いことは分かる

その男は自分が入ってきた布をカーテンの様に横にずらしていき

その後ろにある扉を見えるようにすると。


高々と声を上げた


「我らが唯一神であらせられる【アフラ・マズダー】様の加護を持ち

 我らが人族を統べ、その全てに繁栄を齎した

 もっとも神に近し、至高なる存在

 皇帝【ザラスシュトラ・ゾロアスター】様

 入られます。」


 神官達は席を立ち

その場に片膝を付くと両手を組み頭上に掲げ

祈りの態勢を行う。


 貴族達も同じく祈りの姿勢となり。


 聖騎士達は姿勢を正し

左手で剣の鞘を抑え

右手を固く握り左胸の前に置く

剣と命を捧げる意を皇帝に示し

敬礼とするのだった。


 ただ、7人の勇者は

祈りも、敬礼も、何もしない。



 

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